第100話印籠

「話の内容を擦り替えないでちょうだい。 私は今、貴方と模擬戦の話をしているのです」

「いや、だからしたくないって。 それに知ってるとは思うけど、俺公爵家なんだが、そんな態度をとっても良いとでも思っているのか」


 なんかもう、面倒くさいのであまり使いたくはなかったが伝家の宝刀である『俺ん家、公爵家だけど?』を抜き放つ。


 これはまさに水〇黄門でいうところの印籠レベルで効果が絶大であるのは既に過去にて実証済みである。


 そして、過去の俺が如何に最低な人間であるかを再確認すると共に良心の呵責に襲われる。


「そういうわけなんで。 帰らせてもらう──」

「学園内では家格の違いによる優劣は無く、皆平等である。 それがこの学園の校則の一つとしてある限り、家格が私よりも上だからという脅しは、この学園内、また学園の生徒同士では何の意味もないわ」


 あぁ、面倒くさい。


 そもそも、なんで今まで俺が公爵家だからという理由で皆平等という校則があるにも関わらず俺は傍若無人な態度でいられたのか。


 皆気付いていたのだ。


 学園外では校則の範囲外であるという事に。


 少し考えれば俺が親を使ってそいつの家に嫌がらせだってできるわけだ。


 そいつはその事すら分からない程地頭が悪いのか、それとも今までやりたい放題であったクヴィスト家が四面楚歌状態であり、更には両親は今現在殺人により投獄され、処刑される身であるような家など恐れる存在では無いと思っているのかのどちらであろう。


 そして、カレンドールさんの表情を見る限り、間違いなく後者であろう事が窺える。


 自分の要求を吞まない限り引かないという事も。

 

 俺が言えた義理ではないのだが、カレンドールさんにとって他人の事など二の次なのだろう。


 そして少し前までの俺がそれに近い性格であった為良くわかる。


 カレンドールさんとの模擬戦から逃げる事などできないという事を。


 なので、恐らく真剣勝負を希望しているであろうカレンドールさんには申し訳ないのだが、これに関してはお互い様だという事で、ここは一つ策を講ずる事にする。


「はぁ、分かった。 だが、そちら側の一方的な要求を受け入れる代わりに俺の要望も聞いて欲しいのだが?」

「……それもそうですね。 一度聞いて問題が無いようであるのならば受け入れましょう」


 その言葉を聞いて俺はニヤけてしまうのが表情に出ないように必死に堪える。


「模擬戦と言えどやるからには真剣に勝負をしたい。 武器は木刀のままで構わないのだが、その他身体強化など使えるものは使っても良い・・・・・・・・・・・・か?」


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 祝(∩´∀`)∩100話!!

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