第58話俺は悪くない
そして俺はすこし考えた後、結局スフィアを助ける事にする。
そしてやっぱりクロード殿下は知らない。
自分のケツくらい自分で拭いてもらおう。
俺みたいに。
「分かった。 俺が何とかしよう」
「あ、ありがとうございますっ!!」
◆
それで、今回の犯人であるのだが間違いなくウィリアム・ホーエンハイムである事はゲームの知識で分かっている、というかこの城下町で人さらいをするような怖いもの知らずの頭のネジがぶっ飛んでいそうな奴はウィリアムしかいない。
しかしながら犯人が分かった所で証拠が無ければしらばっくれたら終わりである。
そして俺は残念ながら彼らが行っている人体実験の部屋や、監禁部屋がどこにあるのかまでは知らない。
マップ機能は青(仲間)、赤(敵)、黄(それら以外)色でしか表示されず名前は分からない為地味に不便だ。
さてどうしたものか。
「ほ、本当にあのウィリアムが犯人なのですか。 ご主人様を疑う訳ではないのですが、普段から見て取れる彼は品行方正で弱い者に手を差し伸べる様な男性なのですが……」
「ブリジットよ」
「は、はいっ!!」
「自分の欲望を制御しきれない者は三流、自分を偽れない者は二流、自分を偽り欲望を飼いならす者は一流だ。 覚えておけ」
犯人を特定した経緯を聞かれると面倒くさいので話をそれっぽい事を言って話を逸らす。
「さ…………っ」
「さ?」
「さすがご主人様!! 私はご主人様のその智謀に日々感服しておりますっ!!」
ブリジットはもう救えないのかもしれない。
ブリジットの恍惚とした表情を見ながら、彼女は既に末期であると判断する。
今なら『ここに椅子を置くだろ? するとこの場所で座る事が出来る』と言っても褒め讃えるような気がして来た。
そして一度思うと試さずにはいられないのが人間というものだ。
先程の俺の言葉で言うと、俺は欲望を制御できない三流といったところだな。
「なぁ、ブリジット。 ここに椅子を置くだろ? すると、ここに座る事が出来る」
「……………………暗号か何かですか?」
「……………………そんなところだ」
「なるほど、私にはさっぱり分かりませんがご主人様の凄さは分かりますっ!!」
「では、行こうか」
「は、はいっ!!」
俺は悪くない。
俺をその気にさせたブリジットが悪いのであって、俺は悪くない。
「ブリジット、空を飛べるか?」
「? ……いえ、飛べないです。そもそも空を飛べる者などっ、きゃぁっ!!」
「舌を噛むなよ」
とりあえず、夜中とはいえ尾行などされていては話にならない為ブリジットをお姫様抱っこの要領で抱えると、ブリジットの実家であるモーデル家の裏窓から魔法で空中に足場を作り、空を飛ぶ為に外へ出ようとする。
まさか、ウィリアムも空を飛んで偵察に来るなど考えてすらいないだろう。
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