第78話 最早あっぱれ

「き、貴様っ!! この俺を良くも裏切ってくれたなっ!!」

「違うのっ!! これは何かの間違いよっ!! そもそも盗撮は犯罪よっ!!」

「そんな言い訳が通用するとでも思っているのかっ!! 離婚だっ!! 当然お前と相手にはそれ相応の制裁をしてやるから覚悟しておけっ!!」

「違うのっ!! 寂しかったのっ!! 愛しているのは貴方だけよっ!!」


 そして、俺を無視して二人で話し合い始める。


 これではこちらの話が進まないので弁護士さんになんとか諫めてもらい、俺は義理父へと話しかける。


「なぁ?」

「あ? 今は貴様と話している場合じゃ──」

「さっきアンタは『不倫したのはこのバカに男としての甲斐性がなかったのが原因ではないか』『男なら浮気の一つや二つ許すものだ』という言葉、流石に数分前に自分で言った言葉くらいは覚えていますよね? 男ならだの甲斐性だのと言うのであれば、自分の吐いた言葉は守っていただかないと、男らしくないですよ。 男ならば浮気の一つや二つくらい許すのがアンタの言う『男としての甲斐性』なのでしょう? なら今回の奥さんの不倫は許してあげて、少し黙ってて下さい」

「ぐぐぬぬぅぅ……」


 まさか俺に吐いた言葉がそっくりそのまま自分に帰って来た形になった義理父は顔を真っ赤にしながらも流石に自分から偉そうに上から目線で言ってしまっていた手前返す言葉も無いようで、何か言いたそうに口をパクパクするものの言い返しては来ない。


 そして、俺の先程の言葉を聞いた元嫁と間男の顔が苔のような緑色から少しばかり血色が良くなって来たのか顔色が少しマシになる。


「あ、ありがとう……っ。 博文……っ! わたし、自分の過ちに気付いたのっ! そしてやっぱり私の心は博文の事が好きなんだって、気付けたっ! これからは良い奥さんでいられるように、少しは家事もするようにするし、博文のお小遣いも一万なら増やしてあげるわっ!」

「は? 何言ってんだお前?」


 そして、何を勘違いしたのか先程の俺の言葉で何故か許されたと思った元嫁がすり寄って来てこれからの生活を改めるとしおらしく言うのだが、その内容から全くもって反省していな事が窺えて来る。


 ここまでくると最早あっぱれと言ってやりたい。


「え? だってさっき男なら浮気の一回や二回は許すものだって、だからお父さんに向かってお母さんを許してほしいって言ったじゃないっ!」

「それはお前のお父さんが自ら俺に言った言葉だから、自分は守るよね、と返しただけであり、俺は絶対に何があろとも許さないよ。 器が小さい? 甲斐性が無い? 知らないね。 やられたら法律に則りやり返すだけだ」

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