第77話 トドメ

 そして、ようやっと俺を目の前にして言いたいことを反論される事もなく言えて、恐らく気持ち良くなっていただろうところを弁護士さんに遮られてしまい、一瞬だけムッと怒りを露わにするも、相手が弁護士さんである事を思い出したのか口から出そうになった言葉を寸前のところで飲み込み、その怒りを『ドカッ』と座る事によって表す。


 その姿はまさに学校の先生を前にする子供のようであり、実際に子供の価値観や常識のまま大人になったのであろう。


「で、弁護士さん。 今回の慰謝料はどれくらいになるんですかね?」


 しかし、この義理父は先ほどから慰謝料慰謝料と金の話ばかりで、今回集まった根本的な原因について話し合おうとすらしないのには流石に頭がどうかしているのでは? と思ってしまう。


「そうですね、ここにる新谷さんと話し合った結果、奥さんには慰謝料五百万、奥さんのご両親には誹謗中傷による慰謝料で三十万、間男さんには慰謝料五百万に、新谷さんのお金を許可なく使い込んだ代金を上乗せして合計二千三百万の請求をさせていただきます」

「おお、そんなになるのかっ!! それで、慰謝料とやらはいつもらえるのだっ!?」

「何を言っているんですか? あなた方が、新谷さんへ、支払う慰謝料の話をしているんですよっ」


 そして、まだなお慰謝料を貰えると思っている義理父に、弁護士さんも苛立ってきているのが、徐々に語尾が強くなっっていく口調から窺えてくる。


「な、なななっ、何を馬鹿な事を言っているんだお前はっ!? 普通に考えたら慰謝料を貰えるのは我々の方だろうがっ!! 貴様っ! 弁護士というのも偽物だなっ!?」

「偽物と思うのは構いませんが、これ以上は流石に私も侮辱されたとみなして出るとこ出ますよ? いいですか? 今回の原因は奥さんと間男の不倫なんですよ? にも関わらずあなた方は新谷さんへ暴言の電話とメール、そして殺害予告までされていては、流石に私も庇いようがありません」

「ふざけるなっ! 娘が不倫したのはこのバカに男としての甲斐性がなかったのが原因ではないかっ!! ならば原因はこの男で、娘ではないっ!!」

「甲斐性があろうとなかろうと、不倫下側が悪いです。 甲斐性はまったく関係ありません」


 そして、こんな感じで弁護士さんがズバズバと容赦なく、そしてバカでも分かりやすいよに噛み砕いて説明していくにつれ、義理父なりに徐々に理解しているのか、顔が少しずつ青ざめていき、脂汗もかきはじめ、トドメは義理父の「男なら浮気の一つや二つ許すものだっ!!」という言葉に対して「そうですか、では義理母の浮気も許してくださいね」と差し出したう、義理母の浮気写真であった。


 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る