第67話 墓穴を掘りかねない
「え、ええまぁっ!! そんな事よりも新谷さんは餃子のタレは何で食べます? 一応塩、醤油、ごま油、ラー油、ポン酢、お酢、辛子がありますけど?」
「そうですね、ここ最近塩とごま油で食べのにハマってるんで初めはそれで食べようかと思ってますね。 そのあとは酢醤油を作ってラー油と辛子て流れにしようかと」
「あー、塩とごま油も惜しいですよねっ!! 私も作ろうかな」
このままお酒の話題は墓穴を掘りかねないと思った私は強引に餃子のタレの話へと話題を変える事に成功して安堵する。
そして、そんな感じで新谷さんと会話をしていくと、グツグツと水が沸騰する音からパチパチと油が跳ねる音へと変わって来た。
あと数分この状態で放置して餃子に焼き目を入れれば完成なのでもう少しの辛抱である。
「もうそろそろ出来上がりそうなのでご飯をよそって来ますね。 朝霧さんはどれくらい食べますか?」
「あ、ありがとうございます、とりあえずお茶碗一杯分、いつも通りの普通盛りでお願いします」
「了解です。 ちなみに朝霧さんは餃子、両面焼きと片側焼きのどちらが好きですか?」
「両面焼きは食べた事ないですね。 今日試してみようかな」
「餃子の皮のカリカリ感が好きな人にはおすすめですよ。 揚げ餃子とは違った焼いた皮もまた美味しいですよね。 昔行きつけのラーメン屋は両面焼きで、その餃子食べに行っていたくらいです。 ちなみにモチモチ系が食べたい時の行きつけもあります」
そして新谷さんは実に楽しそうに餃子の皮について話始める。
こんなに嬉しそうな表情の新谷さんを見るのはこれが初めてで、今日は餃子にして本当に良かったと思うとともに、もしかしたら新谷さんは餃子マニアとまではいかないものの、それなりに餃子のことが好きなのだろう。
「家でこうして餃子を作って食べるなんて、いつぶりだろうか……。 ささ、出来上がったようですし、食べましょうかっ! 蓋、開けますねっ!」
そして新谷さんは少しだけ寂しそうな表情をするも直ぐに明るい表情へと切り替えてホットプレートの蓋を開けてくれる。
私はその一瞬だけ見せた寂しそうな新谷さんの表情が気になりつつも、気づかないふりをする。
直感的にこの部分は突っ込んではいけないと思ったし、だからこそ直ぐに新谷さんは表情を切り替えたのだろう。
それにわざわざ掘り返して楽しい時間を台無しにするような事はしたくはない。
「わぁっ!! 美味しそうですねっ!! 新谷さんはどれから食べますかっ!?」
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