第66話 嘘は言っていない
「分かりましたっ! 並べて行きましょうか。 流石に俺もお腹がすきましたよ」
「ど、どれから焼きますかっ!? やはり初めはスタンダードなのをメインに置いて、エビとキムチから行きますかっ!?」
「それもそうですねっ。 あ、チーズも乗せましょうよ。 因みにチーズとソーセージの組み合わせや、チーズとキムチの組み合わせとかもありますよっ」
「て、天才ですかっ!?」
そして、空腹と餃子という組み合わせの前では先程の悩みなどどこかへ吹き飛んで行き、二人で温めておいたホットプレートに油を敷いて、思い思いに餃子を並べて行く。
因みに私は酢醤油が苦手なため、醤油、ごま油、ラー油で作った特製タレを作っていたりする。
そのタレから香る調味料の匂いと、ホットプレートに置かれて『ジューッ』と鳴る餃子が焼ける音でもう空腹はマックスに近い。
結局ホットプレートにはスタンダード、チーズ、エビ、キムチを乗せ、上から水をかけて蓋をし、蒸し焼きにしていく。
この蒸し焼きにされる音だけでご飯が進みそうだ。
そして、この段階で私はある違和感に気付く。
「あれ? いま気付いたんですけど新谷さんってビールとか飲まないんですか?」
「ええ、アルコールはあまり好きではないので……」
「そ、そうなんですね。 意外です」
「まぁ、お陰で忘年会とかは大変でしたよっ。 『俺の酒が飲めないのかっ!?』と毎年数人に言われてましたね」
「あー、何となく分かるような気がしますっ! 人それぞれです良いじゃないですかねぇっ! そういう場こそ楽しく過ごさせて欲しいものですよねっ!」
「おっ! 分かりますかっ! そういえば朝霧さんもお酒飲むところ見たことないですもんねっ!」
「そ、そそそそそっ、そうなんですよーぉっ! わ、私もお酒はあんまり飲めないって言いますかぁー、むしろ飲んじゃいけない体質って言いますかぁー……っ!」
嘘は言っていない。
飲めない事はない。 でも飲んではいけない事には間違いない。
ただ、体質とか好き嫌いとかではないく、単に未成年というだけであり、その未成年という部分を言っていないだけである。
でも何故だろう? 心が若干苦しいのは。
「へぇー、そうなんですね。 たまにアルコールを一滴も飲めない人がいるという話を聞きますが、まさに朝霧さんがそうだったんですねっ! しかしながら、アルコールが苦手というだけの俺がここまで苦労したくらいですから体質の関係で一滴も飲めないというのはさぞ今まで苦労して来た事でしょうっ?」
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