第63話 拾って良かった

 そして新谷さんと共に私は餃子パーティーに具材を買い物かごへと次々に入れて行く。


 新谷さんには内緒なのだが、餃子パーティー自体家族と一緒に二回ほどしか経験が無く、家族以外だと当然のごとく経験など無く新谷さんとする餃子パーティーが家族以外では初めてという事もあり私のテンションは鰻登りに上がって行く。


 しかもその相手が友達ではなく好きな異性と二人っきりという事で、想像するだけで悶えそうなのを堪えなければならない程である。


「とりあえず、餃子のタネにできそうな物は大体かごに入れましたし、後は少なくなっている物でも買いましょうか」

「それもそうですね。 あ、そういえば卵が切れかけているので買っておきたいです」

「了解」


 そんなこんなで新谷さんと一緒に『私たちは新婚夫婦』という妄想をしつつスーパーでの買い物をささっと終わらせる。


 時間にして約二十分もかかってないのではなかろうか?


 それでも新谷さんは帰りの道中にて「コンビニから大型スーパーへとレベルが上がった」と嬉しそうにしていたので、たった二十分の滞在であろうとも、新谷さんにとっては大きな一歩だったのが窺えてきて私もその事が自分の事のように嬉しく思えて来る。


 その帰り道は行きとは違って新谷さんはどこか少しだけ誇らしそうに見えた。


「やっと帰れたっ!」

「はい、お帰りなさい。 何だかんだで問題も無く無事帰って来れましたね」

「ごめん、ちょっと疲れたから少し横になります。 体力が回復したら一緒に餃子を作りましょう」

「分かりました。 無理はしないでくださいね」


 そして、やはり新谷さんはかなり無理をしていたようでアパートへ帰るなりソファーで横になると眠り始める。


 その勲章は一旦片づけれる物は片づけて行き、餃子を作る準備をしていく。


 とは言ってもホットプレートの準備くらいなのだが。


 そしてホットプレートを電源をコンセントに差していない状態でテーブルの上に構え終わると、私はすぐさまソファーで眠る新谷さんの所へ行き、寝顔をスマホで数枚撮る。


 餃子が新谷さんの勲章ならば新谷さんの寝顔が私の勲章だろう。


 新谷さんの顔は寝ている時にしかまじまじと見れない為、写メを取り終えた後は膝枕をしつつ観賞へと移る。


 正にこれぞ至福の時。


 言葉は悪いかもしれないが、あの時新谷さんを拾って良かったと思う。


 でかした、当時の私っ!!


 そして新谷さんの寝顔を眺めていると、予め新谷さんがセットしていたであろうアラームが鳴ってしまう。

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