第64話 我ながらナイスな嘘

 そしてスマホから流れるアラーム音により起きてしまった新谷さんとばっちり目線が合う。


 一瞬恥ずかしさやら照れくさいやらで膝枕の言い訳をしようかと思たのだが、前回の公園でも膝枕はしている訳で、むしろここで変に言い訳をする方が怪しまれかねないと思った私は逆に『え? 膝枕なんて普通ですよね?』という風を装いつつ新谷さんへ話しかける。


「か、かなり疲れてたみたいですね。 ぐっすり眠ってましたよ」

「そうみたいですね。 膝枕されても気付けない程には深く眠っていたみたいですね。 わざわざすみません。 逆に朝霧さんが疲れてしまったでしょう?」

「いえいえ全然これっぽっちもっ!! なんなら逆に興奮、ではなくて元気を分けてもらったくらいな感覚ですっ!!」


 なんならもう二時間ほど新谷さんを膝枕しながら寝顔を見ていたかったという言葉はぐっと堪える。


「とりあえず、餃子でも作りましょうか」

「そ、そうですねっととっ」

「おっと、大丈夫ですか?」

「だ、大丈夫ですっ! なのでちゃっちゃと餃子、作っちゃいましょうっ」


 早速餃子作りに取り掛かろうと新谷さんが起き上がり、キッチンへと向かおうとした為、私もそれに続こうと立ち上がった瞬間、今まで膝枕をしていたせいか足がしびれてしまっていたみたいでバランスを崩してしまうのだが、新谷さんが咄嗟に私の肩を抱きかかえるように支えてくれたお陰でこける事無く立ち直る事ができた。


 ぜ、絶対今私の顔、真っ赤だっ!!


 そして、何だかんだで私からすればラッキー展開になったせいで無駄にトキめいてしまい顔が真っ赤になってしまっているのが鏡を見なくても分かるのだが、その真っ赤になった顔を新谷さんに見られないようにそそくさとキッチンへと向かう。


 い、いきなりの事でダイレクトで喰らってしまった……新谷さん、やっぱり男性なだけあって女性と比べてごつかったというか芯があったというか、筋肉質なのが伝わって来た……。


「具合が悪いなら餃子は後日に回しても──」

「ほ、本当に大丈夫ですっ。 足を引っかけて躓いてしまった事を照れてるだけですので……その、あまり照れている顔を見ないでください……。 少し経てば収まりますので」

「あ、ごめんなさい。 そういうことなら分かりました。 では餃子作りを始めましょうか」

「あ、ありがとうございます」


 流石に顔が真っ赤になっている事は隠し通せず新谷さんに心配されてしまったので咄嗟に嘘を吐く。


 本当は新谷さんにトキめいてしまって顔が真っ赤になったとは言える訳が無いので我ながらナイスな嘘である。

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