第10話性的な欲望と母性本能
そして、問題集を解くために使っていたノートを見る限り恐らく新谷さんはそこそこ勉強が出来る人の様である。
しかしながらこうも無防備で眠っている姿を見てうずうずと悪戯心が芽生えて来るというのは仕方のない事であろう。
故に、誰が悪いと問われれば悪戯して下さいとばかりに無防備に眠っている人が悪いのだ。
私ではない。
「美咲………どうして」
一瞬起きたのかと思ったのだが単なる寝言の様である。
しかも涙まで流れてるし………。
きょ、今日のところは勘弁しといてあげましょうか。
でも、新谷さんから私ではない女性の名前を聞くと何でか知らないが胸の中にもやっとした感情が生まれてくる。
そして私は自分の気持ちには気付かないフリをして対面に座ると新谷と同じように突っ伏し、その寝顔を堪能する。
こうしてマジマジと見るとやっぱり新谷さんはイケメンだと思う。
綺麗な肌に長いまつ毛も相まって、若い頃はさぞかし美少年だった事だろう。
ほっぺ、触ってみたい。
自慢では無いが彼氏いない歴イコール年齢の私の前に無防備に寝ている男性という構図は、お腹が空いた肉食獣の前で生肉を置く様な行為であると言っても過言ではない。
「おーい、起きてますかー?」
「…………」
起きていたら聞こえる、そして眠っていれば起きない程度の声で話しかけても新谷さんは起きる気配を見せない。
「良いんですかー? 触りますよー………うわぁ、サラサラだぁ」
そして羞恥心よりも好奇心が勝った私は新谷さんが眠っている事を良いことにその頭を撫でる。
あぁ、この初めて異性の頭を撫でたという感動を例えるのならば、警戒心の強い野生動物に触っている様な感じであろうか?
その感動の他にも私は今異性の頭を撫でているという行為が、私の中の母性本能と性的な興奮がもう兎に角凄い事になっていた。
そんな感じで私の性的な欲望と母性本能に従って新谷の頭を小一時間程撫で続けたあと、後ろ髪引かれながらも夕食の準備をしようとしたその時、新谷は半目になりながらも目が覚めたらしい。
「やっと起きた。 もう少し眠っていても良かったのに」
あ、危なかった。
あのまま欲望に負けてもう少し長く撫で続けていたらと思うと冷や汗が止まらない。
「す、すみませんっ!! 何もしないまま部屋に居座らさせて頂くだけでなく食事まで頂いている身でありながら家事も半ばで眠ってしまうとはっ!!」
根はやはり真面目なのだろう。
その真面目さがこういう所にも滲み出ているのが分かる。
「大丈夫ですよ、そんな事いちいち気にしなくても。 家政夫として拾ったんじゃないんですから」
「せ、せめて洗濯だけでもさせて頂きますっ!!」
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