ハロー地球の皆さん、こちら異世界から

柚木鹿の子

第1話 夜中にふと目が覚めることってあるよね



寝室のベッドに潜り込んで、目蓋を閉じた時。

自分がいる場所がどこなのかわからなくなる。



ふわふわの布団の温もりだけを感じていると、ここは慣れ親しんだ場所なんだと錯覚する。




けれど、目を開けた時。

ああ、やっぱりここは違うんだと思い知らされる。




実家の寝室では考えられない、天井の中心にある天窓から覗く夜空。

その先に浮かぶ、3つの月。


青、赤、黄色にぼんやり光る月たちが、ここは地球ではないのだと語っている。




微かに耳に入ってくる歌声が、半覚醒した意識を誘う。



(セイレーンたち。今日は機嫌が良さそうだ)



またゆらゆらと眠りの波に落ちながら聴く歌声に、口元が緩んだ。




(やばい、寝過ごしたっ)


勢いよく布団から飛び起きて、次の瞬間に脱力した。



「まだ、夜じゃん」



ガックリと肩を落としたまま、重力に向かって落ちた髪を掻き上げる。

既にセイレーンの歌声は聞こえない。


(移動したのか、海の底に帰ったのか)


わからないけれど、まだ眠っていられたのだと日の光がない夜空が告げている。



「あ〜あ…」



まだ慣れない、この世界の時間に。

まだ覚えている、自分の世界の時間を。


(私はまだ…覚えてるんだ)


私が生まれ育った、世界のこと。

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ハロー地球の皆さん、こちら異世界から 柚木鹿の子 @yuzukikanoko

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