第三章 王立図書館3
「ふぁああ、読んだ、読んだ。」
私は本から顔を上げてつぶやいた。
天窓を見るとお空はもう真っ暗。
月明りが眩しい。気温も若干、下がってる。
そろそろ呼びに行かなきゃだよね。
私は本を閉じると奥の書庫で本を探しているナツを呼びに行こうと席を立った。
書庫は広いとっても広い。
右も左の後ろも前も、本の山、山、山。
天井から床までずらっと本で埋め尽くされ、可動式のはしごがあちこちにある。
少し歩くと、ナツがいた。
「ああ、悪い、もうこんな時間か。レイアに怒られるな。」
ナツは手に持っていた本を棚にもどすと乗っていたはしごを飛び降りた。
「ちょっ、ダメでしょ。図書館で大きな音たてちゃ。」
「だれもいなし、大丈夫だろっ。」
☆☆☆
「もう、何時だと思ってるんですかっ。わたし、鍵かけなきゃなのに…。もうナツ様は…。
お姉さまに言いつけちゃいますからねっ。」
扉を開けると私たちを待っていたのは怒れるレイアちゃん。
「あの、そこまで大声で起こらなくても…。」
「ダメですっ。このぐらい言わないとナツ様は人のいうことなんて聞きもしないんですからっ。」
「耳が痛いな。」
「耳が痛いなじゃありません、耳はいたくありませんっ。」
なんだか話がぐちゃぐちゃ。
何かレイアちゃんの怒りが静まりそうなものは…。
自然とポケットへと向かう私の手。丸いものへとその手がふれた。
「これ食べない?」
私はポップな包み紙にくるまれたそれを渡す。
恐る恐る、レイアちゃんは包み紙をはがし、中の丸い本体を取り出す
ぱくっそして口に運んだ。
「もう、いくら、わたしでも、こんな子供だましにはダマされませんからね。」
といいながら、目を泳がし、手を伸ばすレイアちゃん。
そしてぱくっと口の中へ。
「って、何ですか、このとろけるような、舌触りに、甘酸っぱい果実の芳醇な香り、大陸一のスイーツ専門店でもこんなの食べたことありませんっ。」
「…って、あやうく、ひっかかっちゃうところでした。今日はもう帰ってください。」
「それと、おいしいものは大歓迎ですから…」
最初に入ったドアをくぐりぬけると、外はもう真っ暗。
図書館の明かりだけが夜の闇にくっきりと浮かび上がる。
パカッパカッパカッ。
遠くから近づいてくる蹄の音。
こんな時間に?
しばらくすると生け垣を飛び越えて馬に乗った人がきれいに地面へと着地した。
「殿下、探しましたよ。」
甲冑姿の騎士は心なしか額に汗を浮かべていた。
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