第74話催眠術アプリの事
一体どうすれば良い? 逃げ出した所でどうにかなるのか? 証拠聞かれた所で提示できる物など何も無い。
高木さんに拉致監禁されましたとでも警察に言えば良いのか?
言った所で誰がそんな話を信用するというのだ。
しかも相手は女性で未成年である。
俺が高木さんを拉致監禁したのならばまだしも、俺が高木さんに監禁されているのだから笑えない。
恐らく信じてくれたのだとしても、高木さんの好意が暴走しただけという事で今回は許してあげななさいと言われるのが関の山であろう。
警察側も学校側も大事にはしたく無いだろうし事件にはまずしないであろうし、引っ越しをさせるなどもできなだろう。
弁護士を雇った所で所詮は未成年同士のイザコザである。
長年に渡っていじめられているとかでもない。
未成年の小柄でいつもは大人しいの文学少女に拉致監禁されたと言われても、俺だって初見でそれを言われた場合は「だから?」で済ましてしまうだろう。
ならばあの、俺の写真だらけの部屋を見せればいいと思った所で、俺が逃げ出した瞬間には間違いなく何事も無かったかのように綺麗に写真の痕跡は消されているに違いない。
今の時代写真を捨てた所でデータにさえ残っていればいくらでも現像し直す事ができてしまうので高木さんは痛くも痒くもない。
そこまで考えた時、俺はある種の天才的な閃きを思いついてしまう。
目には目を、歯には歯を、女性には女性を、である。
氷室麗華と天上彩音。
あの二人ならば俺の話を全面的に信用してくれて、そして俺を守ってくれるに違いない。
惚れた弱みに漬け込むみたいであるし、逆に弱みを握られてしまうのかもしれないのだが選り好みができる状況でも無いので腹を括るしか無い。
死ぬ恐怖に怯えるくらいならば彼女達二人に怯えて暮らす方がまだマシだ。
流石に命には変えられない。
「あ、そうだ。 高城君」
そこまで考えたその時、高木さんがとても嬉しそうな、しかし目は全く笑っていない表情で話しかけてくる。
俺はその高木さんの表女を見て背筋が凍るほど恐怖した。
「な、何かな?」
そんな恐怖と、今まで考えていた内容を悟られまいと俺は普段通りのような演技をしながら高木さんに返事をする。
「もし私が高城君を強引にここに連れてき事を氷室麗華や天上彩音にバラシでもしたら……」
「し、したら……」
「これ。 この催眠術アプリの事を二人に『実は効力など全くない出鱈目なアプリで、更にこのアプリの制作者が高城君だって事をばらすから」
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