第40話俺は明日死ぬのかもしれない

「ち、ちなみに体育倉庫の清掃はどの先生からの指示なんだ?毎回どの先生にも掃除が終わった事を告げずに帰っているのだが……」

「ああ、それは大丈夫よ」

「え?」

「大丈夫です」

「あ、はい」

「毎回俺でなくても──」

「それも大丈夫です。 話は通してありますから」

「……は、はい」


 そして毎回毎回こうも体育倉庫の清掃と言い俺を呼び出すのだが、さすがにそろそろその理由で呼び出すのは、しかも俺ばかり呼び出すのは無理があるだろと思い指摘してみるのだが、まさかのパワープレイに俺は何も言い返す事が出来なかった。


 しかしながら、当然と言えば当然なのだがさすがに今日は俺達の後を付けてきている人が複数人おり、怨念の籠った視線が突き刺さるのを肌で感じる。


 これから俺達が行う事を考えれば、尾行されてはヤバいのでは?とは思うものの、その行為は催眠術アプリにより催眠術にかかっているという体である為俺がその事を指摘するのはおかしい為、尾行されている事を氷室麗華に告げる事も不自然だと思い俺は見て見ぬふりをする。


 そもそもあんなに怨念を飛ばしながら尾行していては、間違いなく氷室麗華も気づいているだろうにも関わらず何も言って来ないという事はそういう事なのだろう。


「さぁ、着いたわね。私たちの愛の巣(仮)へ」

「……愛の巣(仮)?」

「何でも無いわ。 さぁ、入りましょう」

「あ、あぁ」


 何か聞こえてはならない言葉が聞こえた気がしたのだが気のせいだったみたいだ。


 きっと聞き間違いに違いない。


 そして、尾行されているにも関わらずいつも通り体育倉庫へ入って行く氷室麗華を見て嫌な予感しかしないのだが、俺に選択など有るはずも無く腹をくくるしか無いだろう。


「では、始めましょうか」


 腹をくくり、一歩踏み出して体育倉庫へ入ると、先に入っていた氷室麗華がいつものように催眠術アプリのスクショを俺へ見せて来る。


 ただ、いつもと違うのは体育倉庫の扉に鍵を閉めておらず、その扉は少しだけ開いていた。


 その隙間から感じる複数の人の気配。


 間違いなく見られている。


 そう思った瞬間、氷室麗華がギュッと俺に抱きついてきた。


 当然そのたわわな胸は俺の胸板で押しつぶされ、柔らかさを見せつけるかの如く変形している。


 ガタタタッ!!


 それと同時に少し空いた扉から聞こえて来る音。


 あぁ、もしかしたら俺は明日死ぬのかもしれない。


「やっと二人きりになれたわね」


 その扉にいる奴らに見せつけるかのように氷室麗華は更に俺へ絡みつくように抱きつくと俺の首元で匂いを嗅ぎつつ頬ずりしながらそんな事を言う。

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