第4話 アルン、お姫様を助ける
休みの日、アルンはハックルやライリーグエンらと学園近くの町である学生通り
に遊びに来ていた。
「ここは、学生向けの食堂や道具やが揃っている通りなんだ♪」
ハックルが通りの店を指さして行く。
「私のお気に入りの本屋さんもあるんですよ♪」
グエンも古めかしい感じの本屋を指さす。
「アルンは、迷子にならないでよ?」
ライリーはため息をつきながらアルンを睨む。
「いや、ならないって! あれ、籠手が勝手に装備されて引きずられるっ!」
アルンは突然左腕に装着された勇者の籠手に操られるように何処かへと飛んで行ってしまった。
「さ、さっそく迷子になった~~っ!」
ライリーが叫ぶ。
「ものすごい速さで飛んで行ったね」
「あれは追いかけられないです」
ハックルとグエンは諦めた。
「そうね、アルンなら多分死なないでしょ」
ライリーも諦めて三人は近くのカフェに行く事にした。
一方、籠手に引っ張られて飛んで行ったアルンは黒ずくめの一団に路地裏へ引きずり込まれた同じ学園の女子生徒を見かけた。
「あいつらか、止めろ~~っ! サンライトラッシュッ!」
黒ずくめの一団に向けて、籠手から光の球を連続で撃ち出して攻撃する。
「ぐわっ、目が!」
「な、何者だ!」
「ターゲットを逃がすな!」
「させるかよ!」
敵が混乱している間に、アルンは女子生徒を抱き上げてかっさらう。
学園の中まで飛んで戻って来たアルンは、女子生徒を見る。
長くウェーブのかかった金髪に白い肌、整った目鼻立ちに豊満な胸。
助けた女子生徒はアルンの好みのタイプであった。
「おい、起きてくれ!」
アルンが声をかけて女子生徒を起こそうとする。
「……え、ここは何処? あなたは、もしかしてアルン君?」
目覚めた女子生徒の目は美しい青色であった。
「おっと、悪い立たせるな! ……て、あんた俺の事知ってるのか?」
アルンには女子生徒に見覚えがなかった。
「え、もしかして私の事を忘れてるのですか! それならば仕方ないですわね」
女子生徒は独り言をつぶやく。
「えっと、あんたどうしたんだ?」
アルンは気づかない。
「……鈍感ですわね、まあ助けていただきありがとうございました♪ 私は二年生のアメリアです、これでもあなたの先輩ですよ?」
先輩だと名乗る女子生徒アメリア、アルンはその言葉に固まる。
「失礼しました先輩、アルン・ソルハートです」
礼をして名乗るアルン。
「宜しい、私は部屋に戻らせていただきます案内しますからエスコートなさい♪」
アメリアに礼をして彼女について行くアルン、辿り着いた場所は一軒の小さな白壁の邸宅であった。
「えっと、ここで良いんですね先輩?」
この人は何者だろうと気になるアルン。
「ええ、お礼は後日させていただきますね♪」
そう言ってアメリアは邸宅の中へと入って行った。
アルンはその後、帰ってきた仲間達に説教された。
翌日、アルンは一人何故かは知らないが理事長室へと呼び出された。
ノックをしてから女性の声で許可を得て入る。
「……え? 何でアメリア先輩が、理事長?」
豪奢な執務机に座っていたのは先日助けたアメリアであった。
「はい、理事長で先輩でこの国の王女でもあるアメリアです♪」
優しい笑顔で微笑むアメリア。
「し、失礼いたしました~っ!」
アルンは、高級な赤いカーペットの上に土下座をした。
「まあ♪ 立って、お顔を見せて下さいなアルン君♪」
アメリアの言葉にアルンは素早く直立した。
「先日はありがとうございました♪ お礼ついでにアルン君にお願いがあるのですが宜しいですか♪」
「お、俺にできる事なら何なりと!」
アメリアの言葉にアルンは頷いた、お姫様には立場だけでなく何故か逆らえなかった。
「では、私の護衛係になって下さいませ♪ 私を狙う者が、この学園にいる可能性が高いのです」
アメリアを狙う者がいるという言葉に、アルンは真面目な顔になった。
「わかりました、俺があなたを守ります!」
国の一大事への使命だけでなく、アルンは何故かこの人を守りたいと思った。
「ありがとうございます、では今後は私と寝食をともにしていただきますね♪」
アルンが頷いたら、アメリアはとんでもない事を言った。
「え? ちょっとそれはマジですか?」
アルンは頬を染めた。
「護衛が離れてはいけませんよね? 手続きなどは問題なく、学園だけでなく国家公認で私とアルン君は一緒に暮らせますよ♪」
アメリアも頬を染めた、アルンは段々と外堀が埋まって行く感じに襲われた。
何としても刺客を倒して、この気の休まらない状態から自由にならねばとアルンは決心した。
アメリアの邸宅にやって来たアルン、中は簡素だがリビングに浴室にキッチンに寝室にトイレにと生活に不便はなさそうだった。
「ソファもありますし、寛いでくださいねアルン君♪」
アメリア自らキッチンに立ち、サラダとスープとパンと肉料理をアルンに振舞う。
「アルン君、私達は子供の頃であって結婚お約束を交わしたのですが思い出せませんか?」
「お、俺はそんな大それた事を!」
アメリアの言葉に、アルンは愕然とした。
「……約束と私の事、必ず守っていただきますからね♪」
アメリアの言葉に、アルンはその日は眠れなかった。
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