第3話  アルン、入学する

丘の上の校舎は三階建てで赤レンガ造りの広い建物だった。

校舎の中に入ってすぐの事務室で入学の手続きを終えたアルン。

続いて職員室に入る、そこはどれも怪しげな物で満載な机が並んでローブ姿の女性教師や筋トレをしている体育教師やら書類仕事に追われているスーツ姿の男性教師など

個性豊かな教師達のたまり場だった。


「初めまして、アルン・ソルハートです宜しくお願いします」

 そんな中、アルンは魔窟の中でも綺麗な机に座る白いドレスの上に銀のプレートメイルを着た剣士風の金髪ポニーテールの女性教師に挨拶をした。

 「初めまして、君の担任のガラティーナ・ソードマンだ宜しく♪ 早速だけど、君のステータスを見せてもらうよ」

 ガラティーナ先生の目が光った、ステータスと言う相手の能力や素性などを文字や数字で本を読むように目視で読み取れる基本魔法だ。

 「ほう、魔拳士で拳の勇者の称号と神器アーティファクト持ちか鍛えがいがありそうだな♪」

 ガラティーナ先生が笑う。

 「え~っと、その時はお手柔らかに」

 アルンは軽く流した、アルンも先生のステータスを見たが兄貴分のパッチより嫌悪腕が上だとわかった。


 ガラティーナ先生に案内されたアルンは基礎科一年と書かれた教室にやって来た。

 「おはよう諸君、今日から新しい仲間が加わるぞ入り給え♪」

 先に入った先生の言葉に従い教室に入ると、同じ制服を着た同年代の男女が二十人ほどいた。

 「えっと、アルン・ソルハートです冒険者やってましたクラスは魔拳士で神器持ちです宜しくお願いします」

 皆の前で勇者の籠手を装備して見せる、クラスメート全員が目を光らせてアルンのステータスを確認した。


 「はい、ステータスを見たら後は個別で交流するようにそれでは後ろの神器持ち藩の席に座り給え」

 アルンは指示された真ん中の列の一番後ろの席に座ると、隣の席の眼鏡を掛けた幼い感じの茶髪の美少年が声をかけて来た。

 「初めまして、僕は魔術師で眼鏡が神器のハックル・パーカーだよ宜しく♪」

 ハックルの次は斜め前の青い髪の美少女もアルンに声をかけて来た。

 「私は、槍兵のライリー・ホッケー宜しく。」

 ライリーの次は前の席の茶髪の三つ編みでメカクレな美少女が声をかけて来た。

 「ヒーラーのグエンです、宜しくお願いします」

 グエンの髪の隙間から、ちらりと見えた緑の瞳は綺麗だった。

 そんな具合でアルンは、自分の班の面子と知り合ったのだった。

 

 「やべえ、体育と実技以外の授業について行けてねえ」

 学校に通い始めて、さっそくアルンは授業について行けなくなっていた。

 教室の自分の机の上で教科書類とノートを机の上に広げつつ唸るアルン。

 「えっと、魔法とかは使えるんだよね?」

 ハックルがアルンに確認する。

 「俺のステータス見てるだろ? 使えるよ、バーン」

 アルンが掌から小さな火を出してみる。


 「うん、使えてるから実技は問題ないんだよね」

 ハックルが首をかしげる。

 「勇者の称号や神器持ってるのに、勉強は駄目なのね」

 ライリーが呆れた顔をした。

 「いや、神殿学校出てからはずっと冒険者だったから」

 アルンが言い訳をする。

 「神殿学校って、十二歳までの子供が行く田舎の学校ですよね?」

 「田舎って言われた、ショックだ」

 アルンがグエンの言葉に悲しむ。

 「要するに、中等教育が抜けてるのねそこからフォローしましょ?」

 ライリーが提案する。

 「そうだね、一人が赤点とると班全員が落第になるし」

 ハックルが同意する。

 「み、皆で頑張りましょう!」

 グエンの言葉に頷く仲間達。

 他のクラスメート達は、遠巻きに見ながら。

 「アルンって、残念な奴何だな」

 と、どこか安堵しつつ同情していた。


 こうして、仲間達によるアルン引き上げ作戦が行なわれた。

 「良い? 数学は公式を覚えれば計算して答えが出せるから」

 ライリーが中等の数学から理系科目を基礎から教えて行く。

 「……す、数字が頭の中で襲いかかって来てるよ~!」

 数学の問題はアルンにとって恐ろしい敵だった。


 「え~っと、この話の勇者は王を殴ったって駄目じゃないこの勇者?」

 「……アルンさん、それはあなたのご先祖様のお話ですよ?」

 古典や歴史などの文系科目はグエンが図書館で担当する。

 読み書き等の共通語はアルンもできたので除外して教えて行く。

 「この物語は貴公子達の禁断の恋が熱いんです♪」

 書架から別の物語を取り出して来たグエンが語る。

 「ごめん、グエンのロマンのポイントがわからない」

 本より依頼書や店のメニューしか字を読んでいないアルンに文学は難しかった。

 

 「アルン、この問題を解けたら明日は休みだから頑張ろう?」

 学生寮の部屋でアルンと同室のハックルが先生役となって勉強を見ていた。

 「休みか、近くの町に遊びに行けるのか?」

 アルンがハックルに尋ねる。

 「そうだよ、僕もそんなにお金はないから学生通りでお茶とかだけど遊べるよ♪」

 ハックルが飴を良いしてアルンのやる気を出させる。

 「わかった、俺も金はそんなにないけど遊ぶためにも頑張る」

 ハックルが出した飴に食いついたアルンは頑張って勉強に励んだ。

 そうして、仲間達の助力のお陰でアルンは何とか学生として初の休日を迎える事が出来たのであった

 

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