第十六話 ウマっ!
ハマトラ一行は大八車から、レンガ二つと銅製の鍋を取り出すと、大八車に積んである木製の樽に入った水を鍋に注いだ。
レンガは鍋が載る位に離して置き、その間に薪を並べると、ローエイがやさしく“ファイヤーボール”を詠唱する。
すると事故なく無事、薪に着火した。
ハマトラは丸太を縦に割ったような木の上に、“一つ目ウサギ”を乗せると、“魔法の袋”から包丁を取り出し、慣れた手つきで捌いてゆく。
皮を剥がし、臓物を分け、各部位ごとに切り分ける。
「お前ら! オイーモ、キャーロット、オニオーンの皮をむいて、適当な大きさに切ってくれ」
ハマトラは少女たちに声をかける。
「わかりましたです!」
「了解ぴよ」
「おう!」
少女たちは各々答えた。
「まずは全ての皮むきだな! ドレッはオニオーン、ローエイはキャーロットを頼む!」
「ルカは何をむくのですかです?」
「ハァ!? 俺はオイーモだ! 一番量があるからドレッに任せられるわけねーだろ!」
「たしかにですです! 私が一番大変な仕事を命じられたかと、思いましたです!」
「あはははは! ドレッにオイーモを任せたら日が暮れても終わらないぴよん!」
言葉遣いや、礼儀に関していえばドレッが一番だが、こと料理に関していえば、畏怖を覚えるほどの料理おんちであった。
言葉遣いで判断して大変申し訳無いが、ルカは男勝りな性格で男口調だが、三人の中では一番女子力があり、趣味も手芸だったりする。
「こっちは肉、捌き終わったぞ! 鍋も沸いてるし具材全投入の構えだ!」
ハマトラが少女たちに号令をかける。
「「「了解! わかりましたです! オーケーぴよ!」」」
少女たちが下処理した野菜は、沸き立つ鍋に豪快に投入された。
ハマトラは木べらで鍋をのの字にかき混ぜながらじっくり煮込んでゆく。
その間に少女たちは、大八車から食器類と“硬いパン”を取り出し、料理の完成を今か今かと腹の虫を鳴らし溢れ出る涎を、大型犬のようにだらだらと垂らしながら待機する。
「いい感じに煮詰まって来たから仕上げるぞ!」ハマトラは言いながら五センチ角の固形調味料を数個、鍋に投入し、さらに一煮立ちさせる。
ハマトラはグツグツと煮える、粘度ある褐色の液体を味見する。
「こんなもんだろ」と呟き、
「お前らできたぞー!」と声を上げる。
少女たちは待ってました! と用意していた皿をハマトラに差し出す。
差し出された皿にハマトラは、褐色のスパイス香る液体をよそった。
少女たちはそれを口に運ぶや否や、
「うめーー!」
「超ウマぴよよん丸!」
「とても美味しいですです!」
三人によそい終わりハマトラは自分の分をよそおうとした時、
「おかわり!」と、始めに料理をよそったルカが速攻で皿を差し出してくる。
「はやっ! 沢山あるからゆっくり食えよな!」
ハマトラがルカの皿によそい終わり自分の分をよそおうとした時、
「おかわりぴよん!」
「おかわりですです!」
「おう! ってかルカにも言ったが沢山あるからゆっくり食え! 食べることもまた修行だ!」
ルカに続きローエイとドレッも即座に皿をもってくる。若さってたくましいな。とハマトラが思いながら自分の皿によそおうとした時。
「おかわり!」
「えっ!? だからゆっくり食えよ!」ハマトラは頭をかきながらルカに言っていると、
「おかわりぴよん!」
「おかわりですです!」
「……おぉう!」
そんなやり取りを数回続けるハマトラであった。
「イヤぁ―! 食った食った! マジでウマかったな!」
「お腹いっぱいですです! 本当に美味しかったですです!」
「てかハマぴよは冒険者引退しても料理人でやっていけると思うぴよん!」
ルカ、ドレッ、ローエイの順で好き勝手に感想を述べる。
そんな中ハマトラは、自ら作った料理にあり付けず、空になった鍋にこびりついた残りカスを、“硬いパン”でこそぎ取りながら食していた。
本来ならば怒り心頭であるが、少女たちが満面の笑みで“ウマい”と言う姿を見てしまったがために、文句も言えないのであった。
それどころか、こんなみじめな姿にも関わらず、
「あいつ等、本当にウマそうに食いやがる! 作りがいがあるぜ!」と呟きながら食事をするのであった。
☆☆☆☆☆
次回
まだ未定です。
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