第十五話 食料調達
冒険者としてのイロハを学んだ少女たち。
ようやく初陣の借りを返すべく戦闘に臨む時が来た。
本日のターゲットは”一つ目ウサギ”。
呼称の通り顔面の中心にある、大きく赤い瞳が特徴的で、大きさは本家のウサギと同等。草食のおとなしいモンスターであり、新人冒険者、御用達の相手である。
そんなモンスターに挑む少女たち。
先ほどハマトラにみっちり、教示を受けた場所より、さらに奥へ歩を進める。
地に生える笹をむしゃむしゃと食す“一つ目ウサギ”の姿を視界にとらえるハマトラ一行。
「あそこにいるのが本日のターゲットだ。メシにありつきたいのなら死ぬ気で狩らないとだぞ!」
ハマトラは少女たちに発破をかける! こういった重圧が後々、役立つことを知っているからだ。
少女たちも初陣のときとは違う。
教えを請う者もでき、最良の職に就いた! 今までの自分たちとは違う! 勝てる! 絶対に勝たなければならない! そんな気持ちだった。
「“ファイヤーボール“」
ローエイが唐突に魔法を詠唱すると、放たれた火球が“一つ目ウサギ”に向かって
方や、ローエイより遥か前方にいるドレッは、後方のローエイを守るように、前線で大きな盾を大地に突きさし“一つ目ウサギ”の動向を窺っている。
一方、ルカ・ブイースは持ち前の負けん気とは裏腹に、回復魔法使いになってしまった。
前線で戦いたいと思う気持ちは他のメンバーよりも強い。そんな気持ちから、持っていた杖の柄を捻る。
すると青白い光を放つ刃物がヌラッと姿を現す。
ルカ・ブイースは眼前にいる“一つ目ウサギ”に抜いた刃を振り降ろした。
◇◇◇◇◇
時は数時間前に遡る。
「はぁ! こんな服着れるわけねぇだろ!! “はだかの王様”ならぬ“マッパの少女”だぜ!」
「黙らっしゃいゴス! そのかわり、この衣装を着てくれたら、あんた好みの武器を無償で与えるゴスジャ!」
「マジか!? でもな。んーー。――それカッケーか!?」
「回復魔法使いになっても貴方のこころいきをかんみした仕様になっているジャ! カッコいいに決まっているゴスジャ!」
「……まあだったらしょうがねぇな!」
ウノカ自身も戦士だった為ルカの前戦で、戦いたい気持ちを汲んでの提案であった!
◇◇◇◇◇
抜いた得物を、回復魔法使い、でありながら“一つ目ウサギ”に浴びせてゆく。
本来であるならば、ローエイが魔法を放ち、ドレッが攻撃を防ぎ、ルカ・ブイースが傷ついた者を回復し、隙あらばローエイが新たに攻撃魔法を叩きこみ難なく戦闘終了。といった場面である。
しかしながら現実は、ローエイが魔法を放ち、変らずドレッが攻撃を防ぎ、ルカ・ブイースが回復を無視して攻撃に転じるというものであった。
その奇襲が功を奏し“一つ目ウサギ”は絶命した。
霧状に消える前に、ハマトラが“一つ目ウサギ”に駆け寄り“魔法の袋”に“一つ目ウサギ”を入れる。
「エッ!? 勝てたのですかです?」
「なんか“ファイヤーボール“が被弾する前にルカが攻撃したような……ぴよよん?」
「んーーーーーーやったーーーー! 皆には悪いが、モンスターを切り伏せることができたぜ!」
勝てたのなら何でもいいですです。なんかよくわからないけど勝てたならいいぴよ。と、ルカ以外の者は勝利の方法には貪欲では無かった。
「よくやった! お前ら! 当初の予定とは大いに差異はあるが、魔物の討伐に関しては何ら問題ない」
元々はタンクに守られ、攻撃魔法でダメージを与え、持久戦に持ち込み、回復魔法で体力を温存する。
そんな筋書きを描きながら戦闘に臨んだハマトラだったが。
出来上がった写真は、ルカの剣劇であった。
少しというか、大いに疑問は残るがハマトラ一行は勝利し。
結果に歓喜した。
「“一つ目ウサギ”を倒したってことは食えるんだよな!」
「あんな切り刻んだ感じでも、食べられるぴよよん」
「私たちは戦闘に集中していたのでモンスターの回収に携わって無いので分からないですです」
少女たちは各々の気持ちを吐露する。
ハマトラは回収した“魔法の袋”から見るも無残な“一つ目ウサギ”を取り出し、
「コイツのためにも、食して成仏させてやろう」と、言う。
少女たちは、先ほどと、うってかわってかわいそうなる感情が浮かび上がる。
しかしながらこの世は弱肉強食の世界。
躊躇していたら明日は我が身である。
少女たちは言外に瞼を閉じ理解するのであった。
☆☆☆☆☆
次回
うっま!
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