第十四 “魔法の書”
ハマトラ一行は竹林にいた。
ハマトラは戦闘に入る前の少女たちに確認しておきたいことがあった。
「お前ら“魔法の書”の登録はもう済ましてあるよな?」
その問いかけに対し、
「んっ!? なんだそれ? してねーぞ!」
「なにそれぴよん?」
「私は“タンク”に転職したので今回は関係ないですです」
やっぱり。とハマトラが肩を落とす。
「お前らなぁギルド会館で言われただろ! “魔法の書”に登録しないと魔法は使えないって。ルカとローエイは初めてだから仕方ないとして、ドレッは回復魔法使いだったんだからそのことは知っていただろ? 教えてやれよな!」
どこから見てもルカとローエイのミスなのになぜか一人、怒られるドレッであった。
この世界で魔法を使うには、魔法系の職業に就いたとき、ギルド会館で必ず貰える“魔法の書”に登録しなければならない。
「まずルカ、ローエイは“魔法の書”を出して中身を見てみろ!」
ハマトラに言われるとルカとローエイは
おもむろにページをパラパラとめくる。
「なんだコレ! なんに書いてねーじゃねーか!」
「白紙のページしかないぴよん」
「そりゃそうだ。まだ登録してないからな! 表紙に手をかざし我は契約するものなり魔法を司る神々よお力をお与え下さい。と心の中で願え」
ルカとローエイはハマトラの言うとおりにした。すると“魔法の書”が激しく発光し、その光がルカとローエイの全身をやさしく包み込むと、ゆっくり消滅した。
「なななぁぁぁ! なんだ今の! かっけー!」
「スゴイぴよ! ファンタジーって感じぴよよん丸!」
二人は興奮した感じで口を開いた。
ハマトラはジェスチャーだけで本を開いてみろ。と伝える。
「ああっ! なんか書いてあるぞ! 《ヒール。回復魔法。消費魔力二。傷を少し回復できる》」
「さっきまで白紙だったところになんか書いてるぴよ! 《ファイヤーボール。火属性攻撃魔法。消費魔力二。直径十センチほどの火球を出現させる》」
二人は“魔法の書”に新たに記載された文字をまんま朗読した。
「ヨシっ! 取り敢えずこれで登録は完了だ。あとはレベルが上がったら必ず、さっき心の中で願ったことを忘れないように
少女たちはきょろきょろと目配せし、今まで蚊帳の外だったドレッから答える。
「私は、体力二十二の魔力七でしたです」
「俺は、体力十八の魔力十三だぜ」
「ウチは、体力十四の魔力九だったかな? ぴよ」
ハマトラはその数値を聞いて「うーん」と首を傾げポリポリと頭をかきながら、
「まあレベル一なんてそんなもんか。一応知っていると思うがギルド会館にある“強さの石板”に手をかざすしか正確な体力、魔力を知りえることはできない。即ち冒険者は現在の自分の体力、魔力を知ることはできない! 自らの疲労感や魔力の漲りだけが頼りだ。無闇に魔法を使ったり、傷ついたとしても残りの体力、魔力の残量は分からない。なので自らの最大値を理解しながら戦闘するように!」
ハマトラが少女たちを諭すように言いう。
すると赤髪ツインテール巨乳の、ドレッが挙手に正解があるならばそれしかない! といった動作で真っすぐ堂々と天を突くように手を挙げた。
すかさずハマトラが指をさす。
「もしもですが、体力が満タンの状態でも上位モンスターの一撃で絶命、もしくは弱っている状態で下位モンスターの一撃で絶命もあるのですか? です」
ドレッの問いにイヤらしい笑みを浮かべるハマトラ。
「いい質問だ! 答えは絶命する。圧倒的簡単に死ぬ! まだ見ぬモンスターに出会ったとき、見た目に油断して戦闘を挑んだところ一撃で
ハマトラがいつになく、熱く声を発する。
ドレッは「理解しましたです」と、優雅に深々と頭を下げる。
この動作も正解があるならばこの所作だと思わせる素晴らしき代物であった。
一方、ルカとローエイは魔法を使えることに歓喜し、無駄に魔法を詠唱し魔力を無駄にするのであった。
☆☆☆☆☆
次回
食料調達
※少しでも面白いと感じましたらフォローと☆☆☆をくださると嬉しいです。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます