第十三 旅立ち


 この世界では未だに“ダンジョン”が形成される法則が解明されていない。

 ある日突然、地震があったかと思えば、人知れずかに現れ、時には落雷が落ちた所に行くと突如として現れるといった、謎多き現象であり“ダンジョン”の規模もさまざまである。十階層だったり百階層だったりと。


 ちなみに、攻略済みダンジョンにはが付く。それは攻略したギルド、もしくは個人冒険者の名前がそのまま、名づけられる。


 ディアマンテにある最難関のダンジョンの名は“『神の鉾』のダンジョン”。

 ハマトラやウノカが現役のころに攻略したダンジョンである。


 それを機に『神の鉾』というギルドが有名になり入団者も増えた。その時期に入って来たのがザーフとガンテルであった。


 まだ攻略されてなく後の“『神の鉾』のダンジョン”に挑んだとき、ハマトラは“副ギルド長”、“参謀長”には鍛冶工の男、“特攻隊長”にウノカという布陣であった。

 そんな百戦錬磨のハマトラからすれば“新ダンジョン”の攻略などとまでは、言わないがそれなりの自信はあった。




 ◇◇◇◇◇




 ギルド会館でザーフたちと一悶着あったがハマトラ一行は、無事にディアマンテ郊外の街道にいた。

 ハマトラが大八車を引き、少女たちは後方から押す格好で進行していた。


「何から何まで本当にありがとうございますです! ハマトラさん!」

 大八車を真面目に押しながら言うドレッ。


「一時はどうなるかと思ったぴよが、ハマぴよのおかげで何とかなって感謝ぴよよん丸!」

 猫人特有の長いしっぽをくねくねと振り、大八車を押しながら語るローエイ。


「いやーマジで恩に着るぜ! ハマのおっさん!」

 大八車に片手を添えるだけのルカ・ブイースがはにかみながら声をあげる。


 先頭で大八車を引いているハマトラは、「あぁア」とあくびをし、

「お前ら少し勘違いしてるぞ! お前らにとっては師事できる存在を見つけたかもしれないが、それと同時にを目指すことになったんだぞ! 即ち全ての冒険者内で一番厳しい“教えを問う”と言うことだから泣き言は許されないからな!」


 ハマトラが言い終わるや否や、

「てかハマのおっさん! ハラ減ったぜ」

「そういえばさっきからお腹がなってるぴよ!」

「たしかに昼食も取ってませんしもう暫くしたら夕時ですし空腹感を覚えますねです!」


 少女たちはハマトラの熱弁なんって、なんのその。

 色気より食い気を地で行くのであった。

 ハマトラは目的地である“アルバート”に向けて五日分の食料は用意していた。しかしながら肉、魚等の生ものは仕入れていない。乾燥めんや雑穀類、といった保存可能な物ばかりで若い冒険者には質素というか味気ない食事メニューであった。


 そんな食事情をハマトラが少女たちに伝えると、

「お肉がないのですかです!」

「エッ! マジぴよ!?」

「それわねーだろ! ハマのおっさん!」


 と大ブーイング。

 ならばとハマトラは少女たちに提案した。


「そんなに肉が食いたいならば、“食用モンスター”を狩ればいいだけだろ! 後三キロほど進むと街道の両側にが現れる。そこに生息している“一つ目ウサギ”を狩れば肉には在り付けるぞ!」


 その言葉を聞いた少女たちは、満面の笑みを作りながら、口元からはおびただしい量の涎を垂れ流していた。




 ☆☆☆☆☆


 次回

 “魔法の書”



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