第十話 「オイ! マジかよ!? コレはさすがにアウトだろ!」

 ハマトラはウノカに少女たちを預けた後、旅の準備に奔走していた。

 ハマトラ自身もウノカの店で少女たちがにされていることを想像はしていたがまさかそこまで過激だとは予想だにしなかった。


 とりあえずこのディアマンテ街に留まるのを止め、ここから北西に五日ほど進んだ新人冒険者の街“アルバート”を目指すための、当分の食料や野営資材、それを運ぶための大八車などを物色していた。


 本来ならば馬車の形式をとりたいのだが、新人の内から楽をするとロクなことにならないと思い、敢えての徒歩を選択した。

 ハマトラの新人時代がそうであったように。日々の厳しさや辛さが後々、生きることを見据えての決断であった。

 ハマトラは馴染みの店に赴き店主と交渉中であった。



 ◇◇◇◇◇


  

「おやじ! 全部込みで三十万カネーだ!」

「そりゃないぜぇ旦那! 五十万カネーは頂けねえーと」

「じゃあわかった。何かあったときを用心棒として呼べる券を付ける! だったらどうだ?」

「それはホントですかい!?」

「ああ。オレは嘘を言わん!」

「でしたらお代は頂きません! その代わりと言っちゃなんですが『神の鉾』の奴らの横暴から守って下せい!」


 ハマトラは眉間にしわを寄せ「んっ」と答える。


「昨日の発表、聞きましたぜ! 旦那が首になったこと! 今は、がいて、旦那がだった時の『神の鉾』じゃないんでさぁ。あの道化姿の奴が幅利かせるようになってから付け払いで一向に払ってくれねんでさぁ! かといって文句でも言いようもんなら、『あなた生意気ですね! 今すぐ絶命させても構いませんよ!』みたいなことを言ってくるんでさぁ。そんななかウノカさんが用心棒となりゃ心強いってもんでさぁ!」


 その話を聞いて、ハマトラは自ら志願し、一般冒険者と同じ扱いを望んだことを後悔した。

 その時分は『オレがギルドの役職だということを新人には言うなよ』と既存のメンバーには伝えていた。

 ハマトラの考えでは、自らが一般冒険者として振る舞うことで新人冒険者と親睦を深めやすくし、ギルド全体の連帯感を高めようと思っての行動だった。


 その後、道化の男や、スキンヘッドの男がギルドに加入してきた。

 彼らはハマトラが『神の鉾』の元副ギルド長だったことなど知らない。

 もしかしたら上でリストラしたのかも知れない。しかしながら、今は知る由もない。


 ◇◇◇◇◇

 

 最後の生贄に選ばれたのはルカ・ブイースであった。


 始めの装備は、

「なんだよコレ! メチャクチャかっこいいじゃねかー!」と、本人はご機嫌であった。

「そうゴス! お前のためだけにこしらえたゴスジャ!」


 それをドレッとローエイに見せる。


「純白に輝く、衣の上に“ハーフプレート”。それに大きめの盾が最高ですです」

「“ハーフプレート”よりも腰に携えた“杖”が気になるぴよん」


 と言った意見が飛び交う様相であった。


 次なる装備は。

「へへんー! どうだ! ドレッが嫌がった“辱めアーマー”だ!」

「んんんんんんんんーーーーいい! それだけゴスジャ!」


「わあー! 恥ずかしくないのですかです?」

「なんか見慣れてきてなんとも思わなくなってきたぴよん!」


 慣れとは、怖いもので何度も見ているうちに普通なのかも。と思うように感じてしまうローエイ。に対してドレッだけは正常な精神を保ってっていた。


 そして最後の装備である。

「オイ! マジかよ!? コレはさすがにアウトだろ!」

「グハァ! ハァハァ! アタイの夢が叶ったゴスジャ! ウノ汁大噴火ボファ!」


 その姿を見たドレッとローエイは絶句した。

「……あの――コレ服着てますです?」

「……大きな盾に隠れているだけの全裸のルカにしか見えないぴよん!」

「服なら着てるゴス! 特殊な加工を施したゴスジャ!」

「イヤぁ! コレはさすがにアウトだろ! てか冒険する前に!」


 少女たちとウノカがそんな会話をしているとタイミングがいいのか悪いのかハマトラが帰ってきた。


「いやー食料や野営資材、調達も大変だな。で、お前らはどう――――」

 ハマトラは誰に話すともなく店内に入り少女たちの方に視線を向けると全裸姿のルカ・ブイースと目が合った。

 みるみる眉間にしわが寄り、

「ウーノーカーーーー!」と怒髪天どはつてんなハマトラ。

「いや、その、違うんでゴス。これには理由があるゴスジャ!」


 その後ウノカはハマトラにみっちりと絞られたのは言うまでもないだろう。



 最終的にドレッは“フルプレートアーマー”に大きな肉厚の盾と両刃の大剣。

 ローエイは漆黒のローブに、先端にテニスボールほどの赤い魔石が付いた杖と、鉄製で拳の部分に突起物が付いている手套。

 ルカ・ブイースは純白に輝く衣の上に“ハーフプレート”。それに大きめの盾と先端に青っぽい魔石が付いている杖。


 一悶着どころか悶着ぐらいあったがようやく装備を整えることができた少女たちであった。




 ☆☆☆☆☆


 次回

 ギルド会館



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