第九話 ウノカの秘密

 ハマトラに装備の見立てを任せられたウノカ。しかしながら独特というか、個性的というか、自分に正直な傾向の見立てであった。


 かといって職業にいちじるしく反した装備は見立ていない。ドレッの最後の装備に関しても、身にまとう者次第では、機能的な装備であったりもする。

 仮に、男性冒険者で“オラオラ”系の場合ならば、急所を射抜かれない限りは、“準鉄壁”といってもよいぐらいの防御力である。言うなればだ。 


 クセが強すぎるというか、クセしかない接客なのでの冒険者たちには中々、受け入れてはいただけない。だからこの店には、若い冒険者がめったに来ない。それどころか女性冒険者に至っては皆無だった。

 

 その最大の理由は……。


 ウノカは三度の飯よりも兎にも角にも、初々しく可憐な少女が大好きなのだ。

 それはLIKEでわなくLOVEである。聡明な者であればすぐに気付きそうなモノだが今ここにいる少女たちは……違和感こそあるがまだ真相にはたどり着けていない。

 ウノカは“LGBT”でなのだ!


 それはハマトラも知っている事実。しかしながら装備の見た手に関しては、ウノカの右に出る者はいない。

 そのことを知りながらも“新人冒険者”に戦闘以外のもあるのだよと、言外に知らしめるべくとった行動なのであった。

 少女たちからすれば恐るべきトラウマになりかねない経験である。



 ◇◇◇◇◇



 つぎに登場したのは漆黒のローブをまとい、先端にテニスボールほどの赤い魔石が付いた杖を持ち、鉄製で拳の部分に突起物が付いている手套をした、ローイエであった。

 

「すごく似合っていますですです!」

「おー! いい感じじゃねーか」


 さきほどの辱めをなんとか持ち前の気力でのり越え凛々しく答えるドレッ。

 方や相も変わらず能天気に声を発するルカ・ブイース。

 ローイエはまんざらではない表情で試着室とつながっている、小さなステージを後にする。


「んー! もうあなた最高ジャ! つぎは思考を変えてこんなのどうかしらゴス?!」

「ええーーっ! 魔法使いなのにコレもありなのぴよよん?」

「なにを言ってるジャ! あなたのモンクの才能に期待しての見立てなのゴス!」

 ノウカは自身のセンスのみででローエイを見立てる。まあいつものことである。


 現れたのはゴリゴリのモンクスタイルで、魔法使い要素、皆無の出で立ち。薄い布をはおり、を強調するような、後ろ腰から前腰に掛ける紐を渡した格好だ。

 有り体に言うならば、“サスペンダー”で、一九八三年に流行った香国カンフー映画の主人公みたいな身なりである。


 だが確かにと思う点はある。ローエイの俊敏な特性を生かしモンスターに、使と思わせるには十分すぎる見立てであった。

 しかしながらモンスターがそういった思考を持っているのかは謎であり、信憑性もない中でつぎのお披露目が始まる。


「えっ! いいんですかコレ!? 斬新すぎますです! てか私の逆ですです!」

「オイオイ! マジかよ!? ドレッとは真逆で、乳首と陰部しか守られてねえじゃないかよ! ってかほぼだぜ! まあ機動性重視ならありかもな!?」


 ウノカがローエイに最後に見立てた装備は、ルカ・ブイースが言うようにしか保護しておらず、以外は裸であった。


 にも拘らず本人は満足そうに小さなステージを一周し、最後には深々とお辞儀をした。

 きっと周りが思うよりも本人は気に入っていたのかも知れない。


 最終的に採用されたのは、言うまでもなく始めの装備であった。




 ☆☆☆☆☆


 次回

「オイ! マジかよ!? コレはさすがにアウトだろ!」



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