第四話 「マジかよ!?」「凄すぎますです!」「コレほど迄ぴよよん!」
ハマトラに言われた二人の男はバツが悪そうにいそいそと、居住まいを正す。
「あぁ! 酒がまずくなる! 店を変えて飲み直しだ! まあせいぜい頑張れよポンコツ一家!」
スキンヘッドの男がそう吐き捨てると、金をぞんざいにカウンターに置き店を後にした。
すると、涙をコレでもかと流し号泣していた三人の少女たちがハマトラを囲むように寄ってくる。
「何なんだよ!? あいつ等!? オッサン……わりーな!」
「なんか又助けていただきまして、ありがとうございますです!」
「マジこわぴえんだったけどマジ神感謝乙ぴよよん!」
おのおのハマトラに感謝の念を送るのであった。
昨夜の事件から十二時間後の昼十一時。ハマトラと三人の少女たちは街近郊の草原に居た。
天候は晴天に恵まれ、春を彷彿とさせる生温かい風が吹きぬける日和。
そんなのどかな雰囲気とは裏腹に、少女たちは大地に
「コレまでの
「今までのご無礼は心底申し訳ないと思っている所存で御座いますです!」
「なんかーー。ごめんぴよよん丸!」
その姿を見てハマトラは、
「お前ら、本当にそう思っているか? オレもあんな啖呵を切った以上後戻りはできない! お前らの個々の思いを知りたい!」と言った。
その声を聞いて、ゆっくりと立ち上がる小柄な巨乳少女。
「俺は、見た目が小さい。周りには冒険者は無理だと言われてきた! でも俺の人生を決めるのは俺でしかない! やんややんや言ってきた奴らを見返したいんだ!」
灼熱に燃えんばかりの魂を瞳に宿し、元日本男子プロテニス選手にも伍する程の、うっとうしさを含んだ熱量で力説するルカ・ブイース。
その声に触発されたのかは、わからないが長身の赤髪ツインテール少女が口を開く。
「私は弱いですです! でも自分の弱さに押しつぶされながら生きてゆくことの方が、死ぬほど嫌なのですです! 少しでも自分を変えるまでは死んでも頑張りますです!」
真剣な眼差しで言うドレッであったが、凛と背筋を伸ばした時に、幾つもの鼻毛がお目見えしていたのはここだけの話だ。
二人の宣言を聞いた気だるそうな猫人ギャルが話し出す。
「皆熱くなりすぎーー! でも今回ばかりはネツ持ってもいいかもしれないぴよん! 私もダルいけど弱いよりは強く成りたいぴよよん!」
いつもは我関せずなローエイだが、この時だけは純粋な気持ちを独白した。
真面目に語ったローエイであったが、慣用句的な意味合いではなく、文字通り“猫の額”に無数の草が、びっしりと張り付いていたのは土下座の勲章としておこう。
少女たちの真意を聞いて納得したハマトラは、モンスターとの実戦を提案する。
少女たちの力量を見定めるためだ。のほほんとした草原から少し奥に入り、木々に囲まれた森に進みモンスターを待った。
しばらくすると、茂みの奥から「ウゥー」と、地を這うような声を洩らしながら、
“ゾンビウルフ”が現れた。
大きさは全長六〇センチほどで、所々肉が削げ落ちちらほらと白い骨が露出している。好戦的で強さは新米冒険者には強敵な部類である。
しかしながら三人の少女たちはやる気満々。あらかじめ決めておいた所定の位置につく。
“ゾンビウルフ”を迎え撃つように、モンクのローエイが攻め込む。
しかし振るった拳は空を切り、攻撃を避けた“ゾンビウルフ”は回復魔法使いのドレッめがけ一直線に向かって行く。
それを見てい居たタンクの、ルカ・ブイースはドレッと“ゾンビウルフ”の間に身体を滑り込ませ身を呈して守ろうとするも……その願いは叶わず――。
ドレッは“ゾンビウルフ”が高く振り上げ力任せに下ろした、右爪の鋭い一撃をくらい「キャー」と言う叫び声と共に後方に吹き飛ばされる。
吹き飛んだドレッの後を追うように“ゾンビウルフ”は
“ゾンビウルフ”は威嚇するように「ヴヴゥゥ」と雄たけびを上げる。
刹那ハマトラは固く握った右拳を常人には目視不可能な速さで突き出した。すると目の前に居たモンスターが深紅の霧となって消えうせた。
それを目の当たりにした少女たちは口をだらしなく開放しその場にへたり込み空を仰ぐしかなかった。
「マジかよ!?」
「凄すぎますです!」
「コレほど迄ぴよよん」
☆☆☆☆☆
次回
死刑宣告からの逆転無罪
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