第七話 その女、凶暴につき

 ハマトラたちは市街近郊の丘陵からディアマンテ市街にいた。

 この街は“サークル王国”内では第二の都市であり初級から中級、上級冒険者といわれている者たちが均等にひしめき合い、活気あふれる場所であった。


 ハマトラにとってはされた街であり、少女たちからすればという、何とも因縁深い所である。


 そんな街の目抜き通りの脇にある、石畳ではない曲がりくねった細い道を抜けると。先ほどまでとはうってかわって喧騒もなく、どこか風情のある街並みが広がっていた。

 そこの一角に店を構えるいかにも老舗な佇まいの建物に入店するハマトラ一行。


 入店し恰幅のいい店主を視界に捕らえるとハマトラは、

「よっ! 久しぶりだな。ウノカ! 景気はどうだ?」と声をかけた。


「エッ!? エッ!? ジャッ!!?? ハマトラの旦那! なんで!? どうして!? これは夢なんでゴスか!?」


 店主は驚きのあまり、店内に所狭しと陳列されていた物を、腕を広げ後方に倒れるさいの随行者にし背中から、というマンガじみた音を発し倒れた。


 もくもくと立ちのぼるホコリを背景に店主はゆっくりと立ち上がり、

「旦那! 逢いたかったゴスジャ!!」と涙目で言うのであった。


 その後、絞め殺すほどにハマトラを抱きしめたのはここだけの話しだ。




 ハマトラは簡易的にこれまでの経緯を店主である“ウノカ”に説明した。

 話しを聞き終えたウノカは全身を生まれたての子鹿のように震わせながら、この比喩表現に似つかわしくないことを吐露する。


「旦那……『神の鉾』の奴らッっちゃてもいいゴスか!?」


 ウノカは、この世の生物を皆殺しにしてしまうかのような、凄まじい殺気をまといながら凄むようにハマトラの耳元で囁く。

 ハマトラは「どうどう」と凶暴な暴れ馬を御するようにウノカの肩をやさしく撫でた。すると軽めの“風魔法”程の威力があった鼻息がしだいに治まっていった。


 ◇◇◇◇◇


 店主のウノカは元『神の鉾』のメンバーであった。

 あまりの凶暴さにハマトラともう一人を除いて監督下に置けなかったのだ。

 紆余曲折ありウノカは退団し実家の店を継ぎ現在に至る。


 身の丈は二〇〇センチほどで、胸は豊満というよりかは鍛え上げられたのそれに近い。この世界にそういった大会が有るならば間違いなくぶっちぎりで優勝するだろう。


 髪色は、根元が金髪で毛先が、自然界には存在しなと思われる光沢のある桃色。

 髪型は、両サイドを大胆に剃り上げ、中央に残った髪を重力に喧嘩を売るように激しく立たせている。さらに、剃り上げられたこめかみから首元にかけて禍々しい奇妙な模様のが彫られたいた。


 陳腐な表現が許されるならば、一九八〇年代に流行った“パンクロックバンドの海外ギタリスト”と言ってもなんら遜色のない風貌。



 そんな中、今まさに人知れず、ハマトラが大勢の命を救ったにもかかわらず、なにも知らない三人の少女たち。


「超カッケーぞ! 見たこともない、武具防具がたくさんありますです! ヤバぴよよん丸」


 と、言いながらのほほんと好き勝手に展示品を物色していた。


「オーイ。お前ら」ハマトラは絶賛店内物色中の少女たちに声をかけ手招きをする。


「えーっと、こいつは店主のウノカ。お前らの装備を見立ててくれる。それと元冒険者で『神の鉾』のメンバーだった奴だ! 女同士仲良く頼む! じゃっ後は任せたぞ! ウノカ!」


 ハマトラは少女たちにウノカを紹介すると、言い終わりの最後にウノカの背中を軽く叩いた。

 ハマトラに押し出されるような形で一歩前に出るウノカ。


「えーっと――」と軽く天を仰ぎ口を開く。


「旦那より紹介頂いたウノカだゴス! しっかりと見立ててやるから安心するジャッ! にしてもお前たちかわいいゴスジャッ!」


 言い終わるとウノカは舐めるように少女たちを見て破顔はがんした。


 その姿を見た少女たちは若干の違和感を覚えるが今はまださほど気にしていなかった。のちにこの違和感の正体がなんなのか気づいた時……。悲劇が生まれる……!




 ☆☆☆☆☆


 次回

「もう――お嫁にいけないですです」



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