盗作疑惑について

キングスマン

盗作疑惑について


 このたびは拙著に対する一部の方からのご指摘により、ファンのみなさま、関係者各位にご心配ご迷惑をおかけしてしまったことについて、お詫び申し上げます。

 問題が解決するまで、当該作品は非公開にさせていただきました。

 まず、一部の方がおっしゃるような、いわゆる盗作について、私は一切そのような行為に手を染めていないとここに誓います。

 私は自分の物語を愛し、誇りを持っています。それはもちろん、私以外の作家の創作物に対しても同じです。

 盗作などしようはずがありません。

 しかし私も人間であり、完璧ではありません。

 世界中の全ての物語を把握しているわけではありません。それは不可能です。

 今回、このような場を設けさせていただいたのは、世界中にいるファンのみなさまの不安を一刻も早く解消する義務があると感じたからにほかなりません。

 私の盗作疑惑の多くは、言いがかり、あるいは言いがかりですらない、悪質な事実誤認やデマばかりで、誹謗中傷も見うけられました。

 これらは決して許されるべきことではありません。すでに弁護士を雇い、法的措置の準備に入らせていただいております。

 そしてごくわずかではありますが、他作品との類似に関しまして、ここで説明をさせていただきたいと思います。


 まず『メロンボーイ』について。

 海から漂流してきた巨大なメロンを切ると、中から少年があらわれ、やがて成長した彼が仲間とともに邪悪な魔物を退治し、世界に平和を取り戻すという、世界中の子供たちに愛されている私の代表作の一つです。

 この物語が日本の『桃太郎』という童話に酷似しているのではないかと、極少数ではありますが、ご指摘がありました。

 大前提として、こちらはメロンであちらは桃です。

 みなさん、メロンとピーチが同じに見えますか?

 食後のデザートはメロンだよと聞かされていたのに、実際は桃が出てきたらどう思います?

 ムカつきますよね?

 自分は桃のほうが好き? 今そういう話はしてないから。

 さらにメロンボーイでは魔物退治の仲間にマンモスとライオンとペガサスを選んでいますが、桃太郎は犬、猿、キジです。

 こっちはマンモス、ライオン、ペガサスで、あっちはドッグ、モンキー、バードなんですよ。

 マンモスとライオンとペガサスに会いにいこうって誘われたのに、犬と猿とキジしかいなかったらぶちギレますよね?

 今回はさすがに犬と猿とキジのほうがいいなんて思わないですよね?

 しかもですよ、このパーティーで桃太郎一味が対決するのは鬼なんですよ。

 鬼というのは日本の有名なモンスターです。鬼ですよ、オニ。ダニじゃないんですよ。勝てるわけないじゃないですか。

 この問題については日本の読者からもかなりつっこみが入っているらしく、桃太郎の作者の脇の甘さがうかがえます。

 以上のことから推測するに、あまりこういう言葉は使いたくないのですが、桃太郎はメロンボーイの劣化コピーと言わざるを得ないのではないでしょうか。それが妥当であると判断します。


 次に『レオナルド・ディカプリオ』について。

 砂浜で少年たちからいじめを受けていたクラゲを助けた心優しい青年レオナルド・ディカプリオが、クラゲにみちびかれて海底のお城で美しい姫に接待を受け、お土産をもらって帰るという、これまた世界中の子供たちをとりこにした私の自信作です。

 こちらも日本の『浦島太郎』なるおとぎ話と似ているというご指摘を少数ですがいただいております。

 確認したところ、ストーリーラインの一部に類似が認められました。

 しかし、問題はそれぞれのラストです。

 レオナルド・ディカプリオでは海のお姫様からもらった箱を開けると中から大判小判がざっくざく出てきて、レオナルド・ディカプリオは生涯幸せにくらしましたとさ、という文句のつけようのないハッピーエンドが描かれています。

 ところが、浦島太郎とやらが姫からもらった箱を開けると、中から煙が出てきて、それを浴びた浦島太郎は老人になってしまったというではありませんか。

 最初これを読んだとき、私は翻訳ミスに違いないと思いWikipediaで確認したのですが、どうやら事実のようです。

 おわかりいただけますか、みなさん。

 これでもまだレオナルド・ディカプリオと浦島太郎が似ているというのであれば、あなたは現実の見えていないただのアンチだ。

 なんですかこの意味不明なオチは。

 典型的ないいオチがうかばなくて、奇をてらって失敗してるパターンです。

 よく編集はこれにOK出しましたね。

 それからレオナルド・ディカプリオについてはもう一つ、意見をいただいております。

 タイトルにもなっている主人公のレオナルド・ディカプリオという名前について、同姓同名の映画俳優がいて、そこから引っぱってきたのではないかという疑惑です。

 こちらにつきましても、明確に否定させていただきます。

 レオナルド・ディカプリオは正真正銘、私のオリジナルキャラクターです。

 私は年に20本くらい映画を観ている自他ともに認める映画狂シネフィルです。

 有名どころはもちろん、まだ無名な俳優、デビューしたばかりの新人も多数承知しております。

 その私が存じ上げていないのであれば、非常に申し上げにくいのですが、どこかにいるらしい俳優のレオナルド・ディカプリオ氏にスポットがあたる日は訪れないのでは、と思えてなりません。私のこういう予想はよくあたるので、転職をおすすめしたいものです。

 私の好きな映画?

 いい質問ですね。最近は豪華客船が舞台のものをよく見ていますよ。

 ポセイドンアドベンチャーとか海猿とか。


『シンデレラ』についても説明させていただきます。

 とても寒い雪の日。もうすぐ正月だというのに、まずしい老夫婦は正月に食べるお餅を買うお金もありませんでした。

 だからおじいさんは得意のマフラーを編んで、町まで売りにいきました。まったく売れませんでした。

 帰り道、道の端に数体の石像が立っていました。石像にはたくさん雪が積もっています。

 これでは石像が風邪を引いてしまうと思ったおじいさんは、石像の雪を払って、売れ残ったマフラーを巻いてあげました。

 あと、石像に名前がないのはかわいそうだと思い、その石像たちにシンデレラと名づけました。

 手ぶらで帰ったおじいさんは、おばあさんに、マフラーが売れなかったこと、それをシンデレラたちに巻いてあげたことを正直に話しました。

 おばあさんは、シンデレラって何? って顔を一瞬しましたが、なんだかつっこんではいけない気がして「それはよいことをしましたね」と微笑むにとどめました。

 翌朝。外から物音が聞こえます。

 なにごとかと、おじいさんがそっと扉を開くと、そこにはお餅に米俵、とれたての野菜、鮮魚、生肉、二郎系ラーメンなどが並んでいるではありませんか。

 そして道の向こうに、ウーバーイーツのリュックを背負ったシンデレラたちの背中が見えるのでした。

 良い行いには良い行いがかえってくる。

 この不変の真理を説いた物語は世代を問わず愛されています。

 だというのに『これシンデレラじゃなくて笠地蔵だろ!』という妙な言いがかりをつけられ困惑しています。


 このように、いくつものデマを拡散され大変迷惑しています。

 叱咤激励は歓迎ですが、いわれのない誹謗中傷は看過できません。

 端的に言って、私のようにヒット作を多く持つ男性作家はマスメディアの餌食になりやすく、センセーショナルな見出しのゴシップはアクセス数を稼ぐので、今後もこのような低俗な醜聞がおさまることはないでしょう。

 せめてもの抵抗として、この機をプラスと捉え、今後の私の活動をみなさんにお伝えしたいと考えました。

 作家として一定の評価を得たと自負している私には次のプランがあります。

 現在、画期的なアイデアのアプリケーションソフトを開発中です。

 擬人化した競走馬とアイドルを融合したゲームを鋭意製作中です。

 前例のないものなので成功はまだ未知数ですが、勝算はあります。

 エンターテイメントの頂点を目指す信念をタイトルに込めました。

『アイドルマスター』に、是非ご期待ください。



 2025年 吉日 アガサ・クリスティー

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