第13話 明かされる想い

ようやく気持ちが通じあったことに喜びと幸せを感じながら顔を離す。


さっきまで口びるに感じていた温かさが無くなり、寂しく思う。


そんな私を知ってか知らずか、優斗がは


「ところでお前、なんでそんな恰好してるんだよ。スカート履くなって言ったよな。だから、掛川とかいったかな、あいつが勘違いするんだよ。気を持たせるようなことするなよ。」


とさっきまで、甘い顔をしていたはずなのにイライラした顔の優斗が目の前にいる。


この状況でそんなこと言うかと信じられない気持ちではあったが、


「勘違いしないで。大くんが明日元カノに告白するんだから。唯一の同期を悪く言わないで。あと、さっきの態度もありえないから。」と優斗を責める。


さっきまでの雰囲気はどこにいってしまったのか。


「元カノに告白する奴がお前に告白するって言うわけないだろ。あいつ頭おかしんじゃないのか。」


「ちょっといい加減にしてよ。」


と怒りながら優斗を睨みつけると、ポケットに入っていたスマホが振動する。


イライラしていたし、優斗と会話をしたくないと思いポケットからスマホを出してLINEを確認する。


メッセージの送信元は大くんだ。


内容を見ると、思わず笑ってしまった。


それを見た優斗が気を悪くしたのか、


「俺が怒ってるのに、何笑ってるんだよ。まさか、まだ掛川とかいう奴から連絡がきたのか。」


と言って、手元のスマホを取られる。


「ちょっと勝手に見ないでよ。」


というものの優斗はメッセージを確認している。


そのメッセージを見てがっくり項垂れる。


「私達、大くんに一本とられたね。」


メッセージの内容は『今井くんから告白されたかな?俺のヤキモチ大作戦が成功すれば良いけど。幸運を祈る!!』ときていた。


「掛川の奴、俺をからかったのか。」


と今度は手を額にあてている。


そんな優斗が可愛く思えて、抱きついた。


そんな私をぎゅっと抱き締めて、頭を優しく撫でながら、


「俺、お前のことになると見境なくなるのやめた方がいいよな。」


「そうだよ、私が好きなのは優斗なんだから。」


私の言葉に私を抱きしめる腕に力が入る。


「ほんと、ここまでくるのに長かった。早く言ってればよかったけど、幼馴染として隣にいられるのに、下手に告白して疎遠になるのも苦しくて言えずにいたんだよな。」


「私も同じこと考えてた。」


まさか優斗が私と同じ気持ちだったとは思わず驚いた。


「幼馴染っていうのも考えものだな。偽の彼女になってくれってお願いしてOKしてくれたから、お前も俺にその気があるのかと嬉しかったんだけど、お前全くそんな感じじゃないもんな。」


「それはこっちの台詞だよ。何回も手を繋いだり、顔が近くなったり、キスするには十分雰囲気が良い時なんか何回もあったでしょ。」


「いやいや、お前があまりにも俺を男として扱わないから、俺のプライドはズタズタだったんだぞ。」


お互いを想っていたはずなのに、何をやっていたんだと、今までの経緯を思いだすと可笑しくなってきた。それを見た優斗も連られて笑っている。


「私達、ここまでくるのに遠回りしたね。これから、もっと沢山想い出作ろうね。」


「そうだな、失われた3年間のこともあるしな。」


と、優斗に無視されていた3年間のことを優斗から持ち出してきた。


「その3年間、本当に辛かったんだからね。その時も私のこと好きだったの?なんであんなことしたの?」


「俺はお前のこと中学生から好きだったんだぞ。あれは、颯太先輩と付き合ってるって聞いて、この世の終わりがきたと思ったわけよ。颯太先輩と付き合ってるお前とまともにしゃべれる気がしなくて避けてた。まさかの勘違いだったけどな。」


まさかそんな理由で避けられているとは思わなかったし、中学生の頃から好きでいてくれたことにも驚いた。


「失われた3年間を取り戻すためにも、これからたくさん一緒の時間を過ごせばいいよね。」


私の言葉を聞いて嬉しそうな表情もするも、どこか複雑そうな表情をしている。


「俺もそう思ってるし、お前と一緒にいたいと思ってるんだけど。」


その後の言葉が続いてこず、何を言われるのかどきどきする。


まさか、今までの告白はどっきりでしたーなんてことは言われないだろうかと、内心ひやひやもしている。


「それが、とにかく仕事が忙しくなりそうなんだよ。お前、俺が連絡しないとほんとに連絡くれないじゃん。で、俺はお前を独占したいし、掛川とかいう奴とか颯太先輩にちょっかいかけられてないか、とにかく不安なんだよ。」


優斗の言葉に嬉しく思いつつも、


「だから、さっきも言ったけど、私が好きなのは優斗だから、そんなこと言わないで。」


と今度は私が優斗の髪を撫でる。初めて触った髪は思ったより柔らかい。


「なぁ、俺とお前は産まれた時からずっと一緒じゃん。長い付き合いだよな。」


「そうだね。今さら確認する程でもない事実だね。」


「俺は変な奴でもないし、快のご両親も俺のことよく知ってるじゃんね。」


「そうだね。親同士も仲いいしね。なんでそんなこと聞くの?」


「そういうことだから、俺達一緒に住もうぜ。」


唐突に優斗が提案してきた。


「ん?今私達付き合ったばっかりだよね?」


「そうだけど、今さらお互い知り尽くしてるし、どうせ結婚するんだから、一緒に住めばよくない?俺本当に忙しくなるから、快と会えなくなるの嫌なんだよ。」


結婚という言葉が優斗から出るとは思っていなかったので、胸がきゅんとする。


「そりゃ、私も優斗とずっと一緒にいたいと思ってるけど、急展開すぎないかな?親がなんて言うか。」


「それは問題ないだろ。快のご両親は俺とお前がずっと付き合ってると思ってるからさ。」


確かに優斗の言う通りだ。


偽装とは言え、付き合ってると両親には言っているから、1年以上も付き合ってることになっている。


「そうだね。確かに、1年は付き合ってるってことになるもんね。」


「そうだろ。じゃぁ、決まりな。今から快の家に行って、ご両親に同棲の了承を貰おう。」


「そんな急に?!まだ早くない?」


「お前、さっきから早い早いって言ってるけど、いつなら早くないの?仕事もやれることからやって、先延ばしにしないだろ。それと一緒だろ。」


と言われ返す言葉もなかったので、


「そうだね。いつになったら早くないか分からないや。」


と返すと、優斗は嬉しそうな表情になり私の手を掴んで歩き始める。


「どこ行くの?」


「よく考えたら、こんな夜に快の家に押し掛けても、迷惑な話だから、明日お前の家行っていいか?仕事中抜けして同棲の了承貰いにいく。」


「本気で来るってことだよね?」


「もうしつこい。俺と一緒に住みたくないの?」


「ごめん、ごめん。急展開すぎて頭がついてこなくて。」


「明日、ご両親の予定聞いておいて。連絡待ってるから。」


帰り道は挨拶のことや、住む場所について話をしていたらあっという間に家についてしまった。


名残り惜しくも、家の前でずっといるわけにもいかず、


「優斗、明日のことまた連絡するね。仕事頑張ってね。」


「おう。明日、仕事頑張るから元気チャージさせて。」


というと、優斗の顔が近づいてきて、一瞬唇が温かくなる。


一瞬の出来事だった。


「優斗ってキス魔なの?」


恥ずかしさを誤魔化すために冗談を言ってみる。


「ずっと我慢してたから、ずっと吸い付いていたいぐらだわ。」


と、とんでもないことを言ってくる。


「夜も遅いし、明日仕事だから、ここでバイバイだね。」


「慌てて可愛い奴だな。また、明日。明日のこと、早めに聞いて連絡してくれな。」


と言うと、笑顔で手を振りなながら優斗は家に帰っていった。


優斗と別れると急に現実に戻ったような気分になり、この数時間で何が起こったことが信じられない。


こんな急展開なことがあるのかと、家に入る前に頭の整理をしているとポケットに入っているスマホが揺れる。


取り出して見ると、優斗からのメッセージだ。


『いつまでも外にいないで家に入れ。数時間で起こったことは現実で、俺と快は付き合って、一緒に住むんだから。』


と私の頭を読んでいるかのようなメッセージが届く。


顔を上げると優斗がこちらを見て手を振っている。


これ以上外にいるわけにもいかないと思い、スマホをポケットにしまい、家に入る。


家に入るとお母さんが寄ってくる。


「あんた、優斗くんに連絡した?連絡がないって心配してたわよ。どこ行ったか聞かれたからお店教えたわよ。なんかあったの?」


「なんかあったんだよ。明日優斗家に呼んでもいい?お父さんもいる?」


「お父さんいるけど、なんかあったの?」


お母さんは心配そうな顔をしている。


「一緒に住みたいから、優斗が挨拶に来るって。」


いきなりの発言にびっくりしたのか、お母さんは固まってる。


「ねぇ、お母さん聞いてる?」


私の言葉で我に返ったのか


「お父さん。大変よ。快が・・・」


とお父さんのところへ行ってしまった。


明日は特に問題ないだろうと思って、スマホを取り出して優斗に連絡する。


『明日、お父さんもお母さんもいるって。』


と送ると、直ぐ既読がつき返事が戻ってくる。


『よくできましたら。快の家に行った後、俺の家に来て。まとめて片付けた方がいいでしょ。』


とまさかの優斗のご両親にも挨拶をすることになった。


そこから先は寝るまでの間、お母さんとお父さんからの質問攻めだった。


疲れ切って自分の部屋に戻ってベットに寝転ぶと、優斗からメッセージが届いている。


『お前と付き合えてほんとに嬉しい。明日、17時に家に行きます。おやすみ。』


絵文字もない文章だったけど、優斗らしくて思わず笑みがこぼれる。


ふと、大くんに返信していないと思いだし、急いで返信する。


『私達2人の愛のキューピット。付き合うことになりました。大くんのおかげだよ。ありがとう。明日アシストしてあげられないけど、大くんも頑張って。応援してる』


と送るとすぐ返信がくる。


『俺の魔法は効き目抜群だな。今日の結果を聞いて勇気がでた。明日頑張る。』


その後は他愛もないメッセージを数通やり取りして、おやすみの挨拶をする。


ベットに横になり天井を見上げると、数時間前に起こったことが怒涛のように思いだされる。


偽装の関係じゃなくて、本当の関係になれたんだと改めて思うと、心がじんわりと温かくなる。


今まで優斗のことなら全て知っていると思っていたけど、知らない一面、表情を沢山見れた。


これらから、もっといろんなことを知れるし、一緒にできると思うと嬉しい。


そんな幸せな気分に浸りながら、眠りについた。

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