第5章

第1話


翌日、深夜3時のとある倉庫。

夢見屋はシバに見つからないよう、隠れて辺りを見回している。



あらゆる場所に刑事が身を潜めている。

チトセの隣には、あの刑事と後輩がいる。

刑事達からは、チトセの姿は見えない。



倉庫の中では、蛇と呼ばれる組織の者数人が、相手の到着を待っている。



「なかなか現れませんね…海外のマフィア達。」



後輩が小声で言う。



「警戒してるのか、あいつらが騙されているのか…なんにせよ、もう少し待つしかないな。」



刑事が言った。



「…お互い、同じ状況ですね。…ここまで辿り着けたのは貴方達のおかげです。ありがとうございます。」



チトセが言うが、2人には聞こえず、独り言に終わった。






しばらくすると、蛇がいる倉庫の隣の倉庫の屋根に人影が現れた。



「…捕まってくれるなよぉ。君達のお仲間のとこまで案内してもらいたいんだからぁ。」



「…そうはさせないよ、シバ。」



屋根には、シバとアランがいる。

2人の間には15m程の距離があり、シバはアランに背を向けている状態だ。

シバは黒のモッズコートを着ており、一番上までファスナーを上げている。



「…あーあ、思ったより早く見つかっちゃった。残念。」



シバは振り向くことなく言った。



すると、夢見屋全員がアランの周りに集まった。



「…シバ!!」



椿が大声で呼びかける。



「んー?」



シバがようやく振り返る。



「お前を…絶対許さねぇ。俺はもう、お前を仲間だと思っちゃいねぇ。お前を必ず倒す。」



シバがギアを出した。

それに合わせて、他のメンバーもギアを出す。



「…悲しいなー。僕、椿と瑠々と過ごす時間、好きだったよ。そうだ!椿達もこっちにおいでよ。一緒に新しい世界創って遊ぼ!」



「ふざけんな。俺達はお前に1ミリもなびかねぇ。」



「…ねぇ、シバさん。一個聞かせて。」



「…僕、君とは話したくないんだけど。」



「…なんで、心に闇のある人間を襲ったの?」



「…まぁ、いいよ。教えてあげる。僕の力を1番高めるフィールは、欲望。その感情が負であればあるほど、僕の力は強化されるんだ!そのことに気付いたのは、しばらく経ってからけどね。だから、そういう人達を探してたんだけど、この間、精神化病院には犯罪者とか、そういう思考を持った人がたくさんいることを知って!効率良いと思ったんだよねぇ。でも絞っちゃったのが、まずかったんだねぇ。反省だ。次は慎重になるよ。」



「お前に次はない。ボク達がここで終わらせる。」



「ふふ。逆だよ。みーんな、ここで僕が殺す。吸い取って僕の力になってもらうのもいいね。」



シバがギアを出し、引き金を引いた。

モヤになった夢喰が次々と現れ、屋根を埋め尽くした。



そして、一斉に襲いかかってきた。



チトセとアヤメとシロガネは隣の屋根に移り、それに合わせて半分程の夢喰が3人を追いかけ襲いかかる。



ギアがぶつかる音や銃声が響き渡るが、下にいる刑事達には何も聞こえていない。



モヤの夢喰の力は、前回より強くなっている。しかし、夢見屋は劣ることなく次々とモヤを倒していく。



「アヤメ!」



コモリ達が到着した。

それを見たシバは、意識を集中させ、引き金を引く。

すると、赤黒い大きなモヤの夢喰が5体同時に現れた。

そして、シバは屋根から飛び降り、その場から離れていく。



「ここは私らに任せて、シバを追いな!」



アヤメが言う。



「ボクも残るよ!5体は多すぎる!」



「俺も残る!このデカいのを倒したら、すぐ向かうから!」



「わかった!気をつけて!」



「アラン達も!」



アランと椿と瑠々はシバを追いかけた。






一方、下では海外マフィアが到着し、蛇と交渉が始まった。そして金品の受け渡しが行われた瞬間。



「確保!!」



合図と同時に、あらゆる場所から警察が飛び出してきた。組織の者達は銃を取り出し、発砲する。警察は持っていた盾やその場にある物を使い攻撃を防ぎつつ、急所を外すように発砲する。気が付けば、銃撃戦となっていた。





屋根の上では、5体の赤い夢喰に苦戦していた。


一対一で敵う相手ではないため、アヤメとコモリで1体、チトセとシロガネで2体を相手にしている。


残りの2体とは、10名の夢人界からの強者が戦っている。その他の白いモヤは、並の戦闘力を持つ応援等が蹴散らしている状況だ。



赤い夢喰は、前回よりももうひと回り巨大化していた。

アヤメとコモリは、長い槍を持った夢喰と戦っている。

敵の素早い突きで、避けるのに精一杯だ。

しかし、2人もなんとか攻撃を仕掛ける。コモリが隙を見て、ギアであるブーメランを投げつける。しかし、ブーメランの威力はコモリの力と比例し、並大抵の力では弾き飛ばすことはできないのだが、槍で簡単に弾き飛ばされてしまう。

敵がブーメランを弾き飛ばしたと同時にアヤメが敵へ突っ込み、攻撃を試みた。だが、敵はすぐに体勢を整え、槍を振り回してアヤメを吹き飛ばした。アヤメは2軒先の屋根まで飛ばされ、身体を思い切り打ち付ける。



「アヤメ!!!」



コモリが叫ぶ。コモリが目を離した隙に、夢喰がコモリとの距離を詰め、槍で吹き飛ばした。



「コモリッ…。…くっ…そ…。…こんなとこで…やられてる場合じゃないんだ…ッ!」



アヤメはよろめきながら起き上がる。



「私は…私は…みんなを…今度こそ守るって…決めたんだッ!!!!」



その瞬間、アヤメの腕からビキビキと筋が浮かび、全身へと広がっていく。そして、ダンッと踏み込んだ刹那、一気に敵のもとへ飛び込み、ギアの薙刀を振りかざす。敵はすぐに槍で防御するが、アヤメは目にも留まらぬ速さで次々に攻撃をする。



「うおおおおおあああああッ!!!!」



そして、その一撃が、ついに敵の体勢を崩した。その機を逃さず、薙刀を敵の腹に突き刺し、そのまま跳んだ。そして、近くに建っている高い塔の壁に敵の背中がぶつかる。



「コモリ!!!」



アヤメのかけ声と同時に、ボロボロになったコモリがアヤメの背後から跳んで現れ、ブーメランを投げた。そして、ブーメランは敵の身体を真っ二つにし、敵はキラキラと消えていった。



「…ハァ…ハァ…。やるじゃん、アヤメ…。」



「…ハァ…まだ…1体さね…。早く、次へ行かないと…。」



2人は次の戦場へ向かった。

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