第3話
ダダダダダダッ!!!
飛んできた銃弾を全員が避ける。
アランは椿に抱えられている。
「ありゃあ。さすが、だぁれも当たんないね。」
「!!お…お前…」
椿が愕然とする。
「なんで…?」
チトセは何がなんだかわからないでいる。
「なんで…かぁ。元々そうだからなぁ。」
「…やっぱり信用し過ぎないで正解だったよ…シバ!」
「全く…アヤメもビビも鋭いんだから、嫌んなっちゃうよぉ。」
シバの周りには、人の形をした白いモヤが複数ある。その手には、みな銃らしきものが握られている。
「皆…ビビが今危険な状態だ。俺がビビに渡したカケラがさっき反応したんだ。早く助けに行かないと。」
「さっき苦しんだのはそういうわけか…!」
「行かせないよぉ。あの子のギア、厄介だし、せっかくだから潰しておきたいんだよねぇ。本当は僕のものにしたいんだけど…」
シバがギアの銃口を上に向けた。
「…装填。」
銃の先に大きな白いモヤの玉が現れ、だんだん大きくなっていく。
「来る!戦闘準備だ!」
アランのかけ声で、夢見屋は全員ギアを出し、戦闘態勢に入った。
シバが引き金を引く。
すると、大きな玉は小さな玉に分裂し、線を描いてあちこちに散らばった。それぞれ地面に着地すると、それは人の形をした白いモヤになった。
そして、そのモヤは、それぞれギアらしきものを持っている。
「…!もしかして、夢喰の失踪事件の犯人は…お前か!?」
アヤメが問う。
「当たりー!僕のギアって、すごいんだよ!いろんなエネルギーを吸収しちゃうんだから!まぁ、最初はフィールのエネルギーしか吸収出来なかったから、改造しちゃったんだどね☆」
「改造…?」
アランが問う。
「そそ!自分の銃だけじゃ心許ないからサ。新しい武器が欲しかったんだぁ。それで、ギアをちょっといじって、試しに知り合い夢喰クンの懐中時計のエネルギーを吸収してみたんだ。そしたら、こんなことができちゃって!でも1番すごいのはフィールの力!フィールの力で、いろんなものを強化したり、夢喰のコピーをたくさん作れたりもするんだ!」
「フィールまで…廃人化の原因もお前か…」
アヤメが拳を握りしめ、静かに怒りを露わにする。
「…お前…その夢喰はどうした…?」
椿が問う。
「え、僕のギアの中にいるよぉ。生身の身体は消えちゃったけど!」
「それって…」
チトセが恐る恐る聞く。
「うん、まぁいわゆる死んだと同じかな☆」
「…テメェ!!!」
「椿!落ち着いて。周りをよく見て。」
瑠々が椿を制止する。
シバに吸収された夢喰達は、
戦闘態勢に入っている。
「なんで…こんなこと…!」
チトセが声を荒らげる。
「うーん…暇潰し、かな。だって、この先ずぅぅっと、この世界で生きてくんだよ?つまんないじゃん。だから、この幻を支配できるとこまでしてみようかなって思ったの!そしたらさ、僕の思い描く世界が作れるでしょ。ワクワクするじゃん!」
「お前…本気で言ってんのか…?」
「うん!僕はいつだって本気だよ!…でもさぁ、ビビが変に勘付いちゃって、悲しかったぁ。夢見屋はいい隠れ家だったし、ビビのこと大好きだったのに…。」
「ビビを…どうした…?」
アランが問う。瞳には怒りの色が見える。
「1人で夢喰達の相手してるよぉ。いっぱいいるからね、悲しいけど、もう死んでるかも。」
「…!」
「…早く片付けよう。ビビを助けなきゃ。」
シロガネが冷静に言った。しかし、怒りに満ちていることがビリビリと伝わる。
「さぁ!力試しだ!張り切っていこー!」
シバの言葉と同時に、夢喰達が襲いかかってきた。
––キンッ!!
––ガキンッ!!
––ダダダダダダッ!!!
ギアがぶつかり合う音、銃の音…様々な音が飛び交う。
相手は銃弾から出てきたエネルギー体のはずだが、ギアも身体も実体を持っているかのような感触だ。夢喰達のギアはすり抜けることなく、触れれば身体に傷が付く。こちらの攻撃が夢喰の身体に深く当たると、夢喰はキラキラと消えていった。
チトセは稽古のおかげで、他のメンバーに劣ることなく、格段に強くなっていた。
攻撃を機敏に避けつつ、ギアが銃で防御がしにくい椿と瑠々に近づく者を攻撃した。
アヤメは薙刀を流れるような動きで自在に操る。時に豪快かつ素早く振り回し、敵を一掃する。
シロガネは目にも留まらぬ速さで次々と敵を突いていく。複数で襲いかかっても、いつのまにかそこにおらず、気付けばキラキラと夢喰が消えているような状態だ。
椿と瑠々は、見事な連携で敵を撃ち、アランが進む道を作った。
アランは残った敵を攻撃しながら、どんどんシバの方へ進む。
「やっぱ強いなぁ、夢見屋。僕もほんのちょっとだけ本気出すか。」
シバは次々と銃を撃って、新しいエネルギー体を召喚させていたが、その動きを止めた。そして側面にある、彼のギアには本来付いていなかったはずのレバーを引く。
シバは意識を集中させる。すると、ギアが赤く輝き出した。
そして、ニヤリと笑って、夢見屋達に向かって銃を撃った。
赤いエネルギー体は、アランの目の前で着地し、アランは距離を取る。
そして、赤黒く、今までのものより2回りほど大きな人の形をしたモヤが現れた。
「なんだこいつ…!?」
モヤの手には、大きな斧が握られている。
そして、目にも留まらぬ速さでそれを振り回した。
アランは素早くそれを避け、攻撃しようとする。しかし、モヤも素早く身を躱し、もう一度斧を振った。
アランは短剣でなんとか抑えたが、衝撃で吹き飛ばされた。そして、上手く着地できず、地面を転がる。
「アランッ!!!!」
全員が叫ぶ。
「…へへ、大丈夫。ちょっと油断した。…でも厄介だな…」
白いモヤも、いつのまにか元の数に戻っている。
「ふふ。すごいでしょ、僕の力。さぁ、そろそろ潰れていいよ。」
全員が、今まで以上に焦りを感じている。
––その時。
物凄い速さで白いモヤが次々と消えていった。
「…!」
上空を見上げると、何かが高速で回っている。
それは高速回転のまま主の元へ戻っていく。
「え…!」
主を見て、チトセが驚いた。
「…遅かったねぇ。コモリ。」
「これでもめちゃくちゃ急いで来たんだけどね。応援も呼んでる。そのうち到着するよ。」
コモリが、自身のギアである白いブーメランをもう一度構える。
「…うわぁ、マジか、超厄介。」
シバがげんなりする。
「まさか、アンタだったとはね。よくも色々やってくれたね。逃がさないよ。」
「はぁぁ。…アヤメが呼んだの?」
「さぁね。」
「やっぱ僕、アヤメ嫌い。チトセの次に嫌い。あーあ、ヤダヤダ。帰ろー。」
「逃げんなシバ!!」
「またねぇ、椿。」
シバは制服のジャケットを脱ぎ捨て、残ったエネルギー体を置いて、去っていった。
「ここは私とコモリでなんとかする。みんなはビビのところへ急ぎな!」
「わかった。あの赤い奴は強い。死ぬな、アヤメ。」
アランが静かにアヤメに言った。
「はいよ。」
アヤメ以外のメンバーは、事務所へ急いで向かった。
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