第4話


––カランカランッ。




「ただいまぁ〜。」



アランが言う。



「おかえ……!?な、なんで夢守が!?」



アヤメが身構える。



「どしたのアヤちゃ……え!?」



「…これは…どういうことだい?」



台所にいたビビとシロガネが、こちらを覗いて驚く。



「えぇと…新しい仲間達です!」



「…は!?」



アランの一言に、店番組が声を揃えて驚く。



「なんて説明すればいいかな…。とにかく、椿が俺達がやってるケアに、いたく感動して、俺達もぜひやりたいって懇願してきて…」



「あ!?感動も懇願もしてねぇ!」



「そういうことだろ!」



「勝手に話を盛るんじゃねぇよ!」



「ちょ、ちょっと、喧嘩しにきたわけじゃないでしょ!」



チトセがなだめる。



「…とにかく、彼等は夢守を辞めて、うちに入ることになった!」



「…さすがに話が全くわからないよ、アラン。こいつらは、今まで私らの命を狙ってたんだよ?いくら元同僚だからって、信用しすぎじゃないかい?それに、他の2人は何の繋がりもない。何か企んでたっておかしくないだろ。」



アヤメが少し苛立っている。

滅多にないことだ。



「そうだよ!ビビ、この人たちと仕事するなんて、怖すぎて出来ないよ!」



「ボク達にとっては、得体の知れない人達だからね。」



「…みんな……。」



沈黙が続く。






「……わかった。ちょっと待ってろ。」



椿が、自分の衣服の中に手を入れる。

そして、自分の懐中時計を取り出した。

懐中時計の中央に、白い盾のマークがある。



「これを、お前に預ける。もし、俺達の誰かが、お前達を裏切るようなことをしたら、俺が責任を取る。遠慮なくそれを壊してくれ。」



椿は懐中時計をアヤメに渡した。



「つ、椿…」



少女が不安そうに、椿の袖を掴む。



「…これで、椿の本気度がわかったかな?…あとね、さっき夢喰に襲われそうになったところを、助けてくれたんだ…」



アランがアヤメ達の顔色を窺いながら言う。



「…これじゃあ、お前がギアを使えないだろ。」



アヤメが椿に言う。



「なんとかする。」



「なんとかって…お前も無鉄砲な奴だね。これは返す。夢守になる時とやめる時は、手続きがあるんだろ?明日、夢人界へ行って、正式に夢守をやめる手続きをしな。私とアランも同行する。夢守じゃない奴が、夢喰や夢魔に危害を加えたら罰せられる。最悪、永遠に牢獄だ。それで、ひとまず私は仲間入りを許すよ。」



アヤメは椿に懐中時計を返した。



「…わかった。明日、深夜1時、夢人界へ行く。」



「じゃあ、入口前で待ち合わせしよう。」



「ああ。邪魔したな。また。」



3人は事務所を出て行った。



「……はぁぁ。怖かったあ!」



ビビがソファでぐったりとする。



「…勝手に決めちゃって、ほんとごめん…。」



アランがみんなに謝る。



「今回は、怒られても仕方ないね、アラン。」



シロガネが少し困ったような笑顔を見せる。



「…チトセも困ったろう。」



アヤメがチトセの頭にポンと手を置いた。



「あ、いや、俺は…。でも、助けてくれたのはほんとだよ。」



「そうだ、夢喰に襲われかけたって、どういうことだい?」



シロガネがアランとチトセに聞く。



「…例の、廃人化と夢喰失踪事件の犯人が夢魔だっていう噂…結構信じてる人が多いみたいで、普通の夢喰まで密かに夢魔を狙い始めてるみたいなんだ。」



アランが言う。



「え!?夢喰が!?」



ビビが大きな声を出す。



「うん。その人達は、夢魔狩りだって言ってた。」



チトセが言う。



「それって、見つかったら捕まるよね!?なんでそんなこと…」



「その人達も仲間が突然いなくなったって言ってた。みんな気が気じゃないんだと思う。便乗してストレス発散っていう人もいるかもしれないけど。」



「はぁ…突然世の中物騒になっちまったもんだねぇ。」



「でも、俺達の行動が夢守の心まで動かしたんだ。このまま自信を持って仕事を続けていいと思う。」



「そっか…。なんの手がかりもないから犯人探しもできないし、ビビ達は周りに気をつけながら仕事するしかないね…。」



「しばらく、単独行動は禁止にしよう。必ず2人以上で行動すること。特に…あの3人が同行する時は、こちらの人数は多い方がいい。用心するに越したことはない。…それでいいかい?アラン。」



「うん。ほんとごめん。」



「いいさ。もし本当に仲間になりたいのであれば、人数が増えて万々歳だからねぇ。信用

できるまでは、いろいろ用心するけどね。」



「アヤメぇぇ。ありがとぉお。」



アランはアヤメに抱きつこうとする。



「うざいよ。」



アヤメは一蹴した。



「なんか…夢見屋が問題なくやってこれたのは、アヤメさんのおかげな気がする…。」



「間違いないね。」



チトセとシロガネはコソコソと言い合った。




–−−–−



一方、椿は帰り道で、仲間の青年に怒られていた。



「もう!なぁんで椿はそう極端なのかなぁ!自分の命預けちゃうなんて…。椿が最初から素直にちゃんと話せば、わかってくれたかもしれないのに。」



「うるせぇ。」



「だぁあっ!それ!それが原因!もう椿のわからずや!ガキ!」



「あ!?」



「椿。お願い。無茶なことはしないで。」



少女が、椿の袖をぎゅっと握り、真っ直ぐ椿を見つめる。



「……わ、悪かった…。」



「椿があの金髪坊やを大事に思ってるように、僕達にとって椿はとっても大事な人なんだからね。だからこうして怒ってるんだよ。」



「椿がいなくなったら、困る。」



「…悪かった。次から気をつける。それと、俺もお前達を大事に思ってる。それは忘れるな。」



「…じゃあ今日は焼肉ね!椿の奢り!いぇーい!」



「は!?それとこれとは話が別だ!」



「いつものとこ行こ!瑠々、何食べたい?」



「…牛タン。」



「ぼーくもー!さぁいこいこ!」



「おい!勝手に決めるな!」



青年は2人の手を引いて目的地へ走って向かった。

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