第3話


ダダダダダッ!!!



無数の銃弾が飛んでくる。



アランとシロガネとチトセは3方向に散らばる。



アランとシロガネは、時にギアで跳ね返しながら、器用に素早く弾を避ける。



チトセは、初めてのことで戸惑っているが、アラン達同様、身体能力が格段に上がっている他、視力も格段に良くなっているため、何とか避けることができる。よく見ると、弾は地面や建物に当たると消え、跡が残らない。弾は、フィールに似た白いモヤを纏っている。



アランは弾を避けながらも、どんどん前に進んでいる。夢人の中でも並外れた身体能力である。



「チッ。」



黒髪の男は舌打ちをし、銃を持つ3人は迫るアランから遠ざかるため後ろに下がる。



「ここは、そうだね。足手まとい君から狙うのが得策だね。」



薄紫色の髪の男が笑顔でそう言うと、ショットガンを構え、チトセに狙いを定めた。そして、他の2人もチトセに銃口を向ける。



「…!チトセッ!逃げろッ!!」



アランが叫ぶ。



「まずいっ!」



シロガネがチトセに駆け寄るが、間に合いそうにない。




ドクンッ。3種の銃口を前に、チトセは固まってしまった。



……あれ、俺…死ぬ……?



3人が引き金を引いた。



ダンッ!



弾が近づく。



チトセは身動きが取れない。



死ぬ…。







…ふわっ。



目の前に誰か現れた。



そして、物凄い風を起こし、弾を吹き飛ばした。チトセは尻もちをつく。



「…チーちゃん、大丈夫!?」



「び…ビビ…?」



ビビが、自分のギアである大きな白い扇子を勢いよく仰ぎ、風を起こしたのだった。扇子の先は刃のようになっており、骨の部分は金属だ。



「ビビの後輩をいじめるなんて…絶対許さない!」



もう一度大きく仰ぎ、先程より強い風を起こし、竜巻を作った。竜巻は相手へ向かっていく。




「厄介な奴が来やがった。ここは撤退だ。」



3人は退散した。



「こらぁ!逃げるなぁ!」



3人の姿は見えなくなった。



「ビビ、ありがとう…」



アランがそう言いながら、ビビとチトセのもとへ駆け寄る。



「ううん。アーくんがすぐ呼んでくれたから…間に合って良かったよ。」



「チトセ、大丈夫?」



「う、うん…。いつのまに呼んでたの?」



「実は、アーくんは私達に、自分の懐中時計のカケラを渡してくれてるの。もし助けが必要な時は強く想えばそのカケラが反応するんだ。」



ビビが右手の人差し指にはめているリングを見せた。真ん中に、小さなカケラが埋め込まれている。そういえば、全員リングをしていると気が付いた。



「え…じゃあ、人数分のカケラを…?」



「…うん。そうだよ。アーくんは、すごい人なんだよ。」



「いやいや…ほんと小ちゃい破片だから。」



アランはそう言うが、例えほんの小さなカケラだとしても、あの耐え難いほどの痛みを何度も…と考えると、とても真似できない。



「チトセにも渡す予定なんだけど、まだ注文したリングが届かなくてさ。もうちょっと待っててね。」



「アランは…大丈夫なの?」



「うん、大丈夫!どこまでがセーフなのか、ちゃんとわかってるし、心配しないで!」



「アランは…すごいな……。」



「えー?すごくないよぅ。てか、本当にごめんね。急にこんなことになっちゃって…。」



「あの人達は…?」



「彼らは夢守だよ。」



合流したシロガネが言う。



「あれが…夢守……。」



「うん、中でもあの3人は、ボク達を執拗に追いかけ回しててね。もう何度も戦ってるんだ。」



「なんで…?」



「あの黒髪の男…椿ツバキは、俺の元同僚なんだ。」



アランが切なそうに言う。



「え!?」



「俺の夢喰時代の時のね…。みんなには迷惑かけて申し訳ないって思ってる。」



「何度も言ってるけど、君のせいじゃないよ。ボク達はボク達の意思でここにいるし、ここが、アランが好きで一緒に戦ってる。あのわからずやが悪いんだ。」



「そうだよ!シロの言うことに賛同するのは嫌だけど。アーくんはなんにも悪くないよ!」



「…ありがとう。」



アランはどこか悲しい笑顔を見せる。



「…俺も、アランの力になりたい。でも、こんな弱くて情けない俺じゃ、今日みたいに狙われておしまいだと思う…。だから、ちゃんと訓練して、強くなるから。アランが安心できる様な夢魔になるから。」



「チトセ…。」



「さ、とりあえず今日は帰ろ?早く帰らないと、朝になっちゃう。」



空が少し明るい。朝はもうすぐそこだ。



「そうだね。アヤメも心配してるだろう。事務所に戻ろう。チトセ、立てるかい?」



チトセはシロガネに助けてもらいながら立ち上がる。そして4人はアヤメが待つ事務所へ戻った。




––カランカランッ。



「みんな、大丈夫だったかい!?」



アヤメが慌てて駆け寄る。



「この通り、大丈夫だよ。ビビがいなかったらピンチだったけど。…椿達が現れたんだ。」



「チーちゃんが、ギリギリのとこだった。」



「そうかい…。チトセも何も知らなかったから、大変だったろう。とにかく無事で良かった。」



「俺の弱さを痛感しました…。…みなさんにお願いがあります。俺に稽古をつけてください。」



「稽古かぁ。じゃあ、週替わりでみんなに稽古をつけてもらおう。2時から朝までは仕事があるから、その後でいい?」



アランが提案した。



「はい!よろしくお願いします!」



「よし、じゃあ最初は私が相手をしよう。」



「はい、よろしくお願いします、アヤメさん。」



「じゃあ、来週から、よろしくね。まずは今回の依頼の方に集中しないと。明日は例の部長のところへ行くよ。」



今日はここで解散となった。

翌日、アランとシロガネとチトセは

依頼者の苦しみの原因である、部長のもとへ向かった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る