第27話「動く屍」
ノバスの宣言と共に空から女とケルベロスが落ちてきたが何か様子がおかしい、さっきからピクリとも動かないのだ。だが、それはバルクとリニアさんが殺したからというのは分かっている。
そう、ピクリとも動いていない死体のはずなのに、女とケルベロスの死体の距離が少しずつ近づいているのだ。
「今から貴方の相手はこの死体が担当します。まぁ、貴方には勝ち目がないので諦める事をオススメしますが、精々頑張ってください」
ノバスがそう言ってアジトの方へ向かう。
「待て!」
追いかけようとしたその瞬間、女とケルベロスの死体がぶつかり合い激しい光を放つ。
「一体何が起きると言うんだ」
光が収まり俺が目を開けるとそこには、俺達を襲った女が防具化したケルベロスを装備して立っていた。
「ノバス様、こんな私達にもう一度チャンスを下さりありがとうございます。今度こそ貴方様の為にこのロロカ、必ず追跡者を殺害してみせます。ケルベロスアーマーにより私は無敵になった。負けることはありません!」
女はそういうと俺に向かっていきなり襲いかかってくる。
「貴方を殺すことにより、私はさらにノバス様に気に入られること間違いない。私の為に貴方を始末させてもらうわ」
「やれるものならやってみて欲しいな」
俺はそう言って襲ってくる女を避ける。
ズシャ!
「ぐっ!」
俺が女を避けたと同時に女の纏うケルベロスの爪が伸び、俺を引っ掻いてきた。
「甘いわね、今の私は1人と1匹、ただでさえ場数が違うのに数まで優ってしまった時点で貴方に勝てるわけがないのよ」
「クソっ、一撃当てただけで調子にのるなよ」
「貴方こそ、手加減しているノバス様にちょっと攻撃を当てたくらいで調子にのってるんじゃないかしら?」
「手加減してあの強さとかお前のボスは化け物だよ。でも、部下のお前はそんなに強くないな。実際死んでたし、融合してやっと俺に攻撃を入れたぐらいだからな」
「...決めたわ。貴方は今から私が少しずつ苦しめて殺してあげる」
「悪いが、俺はノバスを追いかけないといけないんだ。お前にかまってる時間はないし、とっとと終わらせてやる」
「それはこっちのセリフだよ」
女がそう言うと大量の小型ナイフを飛ばしてくる。
「解錠じゃこの数は消せないな。なら...」
俺は知らない間に覚えていたスキルの1つを使ってこの場をしのぐことにする。
「「
バキッ!
俺がスキルを使おうとした時、いきなり俺の前に人が現れ、ナイフを全てハンマーで吹き飛ばした。俺を助けてくれた男は振り向き笑顔で言う。
「大丈夫だったか?ココロ」
「バルク!」
「急に倒したはずのケルベロスが消えたからもしかしてと思ったが、やっぱりだったか」
「どういうことだ?」
「ノバスは昔、死んだものを生き返らせるスキルを研究しててよ。今のアイツならそれが出来るようになったんじゃないかと思ってたら、急に遠くの空が光り出したからよ。
来てみたら、案の定お前がいたんだが...
ケルベロスはいねぇのか?」
「ノバスがあの女とケルベロスを生き返らせて融合させたんだ」
「なるほどな。ノバスの野郎そんなことまで出来るようになってたのか」
「邪魔するならお前も殺してやる!」
「おいココロ、ノバスの位置は分かるか?」
「あぁ、ノバスが逃げる時に、居場所が分かるようスキルを仕掛けておいた」
「そうか、だったら早く追いかけろ。こいつは俺が相手してやるからよ」
「ありがとう。何回もすまないな」
「良いってことよ」
俺はノバスに仕掛けておいた索敵スキルでノバスの場所を確認し急いで向かう。
「っ!なんてスピード出してんのよあいつ」
「よそ見してたら死ぬぜ姉ちゃん」
「悪いけど、あんたの方こそよそ見したら死ぬわよ。あんたが倒したケルベロスには無かったスピードが今の私にはあるんだからね。
それに、私は1人と1匹でアンタには分が悪いって事わかってる?」
「確かに、スピードを手に入れて挙句に1対2となればキツいな。でもよ、その数の有利は対等になってるぜ。そうだよな、リニア」
「何!?あの女も来たというのかい?」
「えぇ、とっくの前に来てましたよ。貴方を殺し屋としてはもう認めることもできませんね。さっきよりも殺意を出していた私に気づいてすらいなかったんですから」
「...どいつもこいつも私の邪魔をしやがって、全員私の手で殺してやるわ!」
「あの女と知り合いか?リニア」
「はい。先程殺したんですけどね」
「微笑ましく喋ってんじゃねぇー!」
「「おっと」「遅いです」」
リニアとバルクは怒り狂うロロカの突進を華麗に交わし、カウンターを決める。
「「フンっ!」「ハッ!」」
バキッ!と骨の砕ける音が響き渡る。
「グファ!こ...このクソ共がぁ!...」
「どうした?こんなものじゃねぇだろ」
「最早、かける言葉もありません」
「私をなめるなァァァァァァ!」
「へぇ、全回復するとはな」
「死ぬまでの時間が伸びただけですね」
「貴様らに見せてやる!私の完全形態を!」
体の傷が全て回復したロロカは更に黒い翼を生やし、目が赤く染まり、ケルベロスアーマーをより強固にした姿へ変わった。
「これでお前らに私は倒せない!」
「どう思う?」
「どこまで変わっても可哀想なのは変わらない人だと思います。今は死体ですが」
「流石に久々に本気でやらなきゃヤバそうだよな?」
「いえ、我々2人なら力の10%程で殺せます」
「そうか、俺も落ちぶれたって事かな」
「久々の戦闘ですし、仕方ないですよ。
落ち込むのは相手を倒してからにしてください。お師匠様」
「それもそうだな。やるぞ弟子よ!」
「「さあ、2度目の死ぬの準備はでき「たよな?」「ていますね?」
無表情の鍵使い 白悟那美 破捨多 @tukimiko
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。無表情の鍵使いの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます