第15話「誘いの鍵」

俺は、シリアにこの家に住まないかという提案を持ちかける。

「なぁ、シリア」

「はい、どうかしましたか?」

「シリアとアルシャが良ければなんだが、この家に住まないか?」

俺がそういうと、シリアは嬉しそうに、でも少しだけ申し訳なさそうに頷いた。

「はい、お兄さんがそう言ってくれるなら私はここに住みたいです」

「アルシャもお兄ちゃんの家に住みたい!」

どうやら、シリアもアルシャもこの家に住むことには賛成のようだ。でも俺は一応、聞くだけの事は聞いておこうと思った。

「本当にいいの?もし2人が、お父さんやお母さんに会いたいって言うのなら、そこまで何日かかるか分からないけど送り届けるよ?」

「いえ、どうせ私たちは売られたんです。今からお母さんたちの元に戻っても、愛情や喜びを少しでもお母さんたちが分けてくれるとは思えないですし。お兄さんは、助けを求めていた全く知らない私たちのことを必死に助けてくれて、その上、家にまで住まわせてくれると言ってくれる人です。だから、私はそんな優しいお兄さんとアルシャと、この家に住みたいです。」

「私も、お兄ちゃんとお姉ちゃんと住みたい!」

俺の問に2人はそう答えてくれた。

「じゃあ、それで決まりだ。早速なんだが、今のドロドロのカッコのままじゃ、気持ち悪いだろうから、風呂に入ってきたらどうだ?この家の風呂はすごく大きいぞ。」

「は、はい。お風呂入りたいです。」

「アルシャもお風呂入るー!」

「じゃあ、階段を降りて左に真っ直ぐいくと、お風呂があるから入っておいで」

幸いな事に、家には子供用の服もあったし、

2人がお風呂に入ってる間に、冷蔵庫に入っていた食材で何か作っておこうと思った俺に、アルシャちゃんが聞いてきた。

「お兄ちゃん一緒にお風呂入らないの?」

「え?」

「アルシャね、お兄ちゃんとも一緒にお風呂入りたい。」

唐突なアルシャちゃんの発言に俺は困惑する

「いやいや、流石にお兄ちゃんは一緒に入れないよ。アルシャちゃんは良くても、シリアちゃんが恥ずかしいと思うし」

そういうと、シリアちゃんは照れながら

「あの、恥ずかしいですけど、お兄さんとならお風呂入っても大丈夫ですよ」と言う

だが、流石に兄妹でもない16歳の男と、8歳と12歳の女の子が一緒にお風呂に入るというのは世間的にもあまりよろしくないだろう。

「いや、俺は下でご飯作っとくからさ、2人で行ってきなよ。」

そういうと、シリアちゃんは少し落ち込んだ様子で、「そうですよね。お兄さんは忙しいですから、迷惑ですよね。」と悲しそうに言う。さらに、アルシャちゃんは目をウルウルさせながら、「お兄ちゃん、ダメ?」と上目遣いで、聞いてくる。

「仕方ない、一緒に入るよ。」

流石にこのダブルコンボを決められてしまったら断る事は出来ない。だが、決して俺はやましい気持ちでお風呂に一緒に入るわけではない。悪魔で、2人が心配だからだ。

そうして俺たちは3人で風呂に向かうのだった


そんな3人を狙う怪しい影たちが動いている事を心はまだ知らないのであった。

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