第14話「経緯の鍵」

俺は、これからこの子達を保護するに当たって、聞かないといけない事が1つと、伝えないといけない事が1つある。まずは、何故あの森でこの姉妹が黒ずくめの奴らに追われていたのかを聞くことにする。

「起きたばっかりの所で悪いんだが、質問に答えてくれないだろうか?」

「分かりました。助けて貰ったんです。質問ぐらい全然答えますよ。」

唐突な俺の質問にも、シリアは答えてくれる姿勢だった。本当にこの子は12歳なのか?

「なんで、あの森で黒ずくめの奴らから逃げていたのか、そこに至るまでの経緯を説明して欲しいんだ。」

「分かりました。私達が何故逃げていたのかを話します。」

そうして、シリアは自分たちがどんな状況になって、あの森に逃げたのかを話始める。

「私たちは、お母さんとお父さんに売られたんです。あの黒い服の人達に」

入りから胸糞が悪かった。だが、話が終わるまでは俺は聞いた以上、口は出さない。

「私たち家族は元々貧乏で、ご飯もしっかりと食べれないような家庭でした。でも、そんなある日のこと、あの黒ずくめの人たちが家にやって来て、私たちを高値で買うと言ってきたんです。お母さんもお父さんも、元々私たちの事はほとんど見てくれなくて、その上死なす訳にもいかないから、しょうがなく少ない食料をくれていただけでした。黒ずくめの人は最初に、いつでもお母さん達に会いたい時に会えるし、貧乏な家庭を支えたいんだといって、私たちはその言葉を信じて黒ずくめの人達の馬車に乗ったんです。でも、その言葉は嘘でした。馬車の中には既に沢山の私たちのような年頃の女の子が沢山いて、みんな体のあちこちに傷や火傷あとがありました。話を聞くと、黒ずくめの人達は貧乏な幼い子供がいる家に押しかけて、支援と言う形で子供を親に売らせて奴隷として、他の知らない人間達に売るという商売をしていると言われました。その後、私達も直ぐに黒ずくめの男達から暴力を受けて、従うしか無くなりました。特に私たちは髪や目の色が珍しいと、特別な奴隷として価値があったのでしょう。他の女の子達より厳重に監禁され、アジトに着くまで馬車の外にすら出して貰えませんでした。でも、あの森の近くまで来た時に、馬車が急にバラバラに壊れたんです。逃げられる状況になって、私たちや、ほかの女の子達はいっせいに外に逃げ出しました。多分、黒ずくめの人達は特別上物な私達姉妹を優先して、追いかけてきたんでしょう。私たち姉妹は、軽い拷問と、ご飯をほとんど食べさせて貰えなかった事で、体力もほとんどない状態で、とにかく必死にあの森の中に入って、逃げ回りました。そしてお兄さんを見かけて助けを求めて今に至ります。」

シリアの話を聞いて、俺は正直ムカついたなんて所の騒ぎではなかった。黒ずくめの奴らも、この2人の親も、はっきりいって人間のクズだ。俺は、この2人を保護しようと考えている。勿論、この子達が親の元に帰りたいと言うのならば、俺はこの子達を親元に返しに行ってもいい。だが、正直に言うと、自分の子供を売るような親に返したいなんて俺は思えない。俺はシリアの話を聞いた上で、この家にすまないかという提案を持ち出すのだった

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