第6話「スキルの鍵」
「今君が使えるようになったのは、この世界を生きるものなら、みんな持っているスキルという物だよ。」
「スキルって、魔法とかの事だよな?」
「そうそう、そういうのをスキルって言うよ。スキルはね。生まれた時から持っている物もあれば、レベルアップして覚える物、スキルアイテムを使用して覚える物、アビリティによって確保した物と、色々あるんだよ。君の「締錠」と「解錠」はアビリティによる物だね。早速君に使ってもらうよ。」
そういうと、ギフティアはもう一度詠唱を始めたのであった。
「伝説を作る者の生贄よ、今こそ集まり、小さき力を1つにするのだ。そして、その力を私の前で見せつけたまえ。」
そういうと、次に現れたのは、俺がさっき倒したスライムの何倍もの大きさをした、とてつもないサイズのスライムだった。
「おいおい、今からこれと戦うってのかよ」
「今の君の実力ならば、ビッグスライムの一体ぐらいは倒せないと、能力を与えた身としては、残念だよ。」
ギフティアのしょうもない挑発に、俺はついのってしまった。これも、ギフティアによる性格変動のせいだろう。
「よし、やってやるぜ。」
そうして、俺はビッグスライムに向かって、パンチをくり出すが、ビッグスライムの弾力はさっき倒したスライムとは天と地の差だ。
俺はその弾力に跳ね返されてしまった。
だが、俺は1つ気がついた。今の俺の状態は、さっきのスライムを倒した時のままのはず。
そうして、俺はステータスを確認したのだが、俺のステータスは、攻撃値、防御力共に15だったのに対して、今は45と3倍になっていた。俺の予想は外れていたようだ。アビリティは常時発動しているという発言からして、相手が変われば、状況も変わり、俺の「感情(状況打破)」は、自分の状況に対してパワーアップを自動で行うアビリティということなのだから、今の俺のステータスは、ビッグスライムを倒せるステータスということである事は間違いない。じゃあ何故、ビッグスライムには、俺の攻撃が効かずに跳ね返されてしまったのか。そんな事を考えていると、ギフティアが俺に向かって言ってきた。
「ビッグスライムは、自分に対する打撃は、全て跳ね返すスキル、「
「それを先に言ってくれよ。」
「ハハッ、ごめんごめん、でも、本当に今は君が攻撃力45だった事に感謝だよ。」
「どういう事だ?」
「攻撃力45が、ビッグスライムを一撃で倒せる攻撃力じゃ無かったから、君は跳ね返されて、ちょっと吹っ飛んだ程度で済んだんだよ。だいぶ前に、ビッグスライムをパワーでぶっ倒そうとした奴がいたんだけど、そいつはパワーが80ぐらいあったんだけどね。ビッグスライムでも、弱いレベルのビッグスライムを殴ったんだよ。もちろん、一撃で倒せるぐらいの威力の力を全部返されたんだ。凄い勢いで、吹っ飛んでね、そのままぶっ飛んだ先の壁に激突して、内蔵が破裂して死んでしまったんだよ。もし今君がそれくらいの力だったら確実に死んでたよ。」
俺はそれを聞いた瞬間に、俺のスライムに対しての考えは、序盤に出てくるだけの雑魚ではなく、下手したら最強かもしれないヤバい生物へと、変化したのだった。
「じゃあ、いったいどうやってこのスライムを倒せば良いんだよ。」
ギフティアは、呆れたように答える
「だから、最初に言ったじゃないか、君のスキルを使って貰うってさ。」
なるほど、ついに俺のアブノーマルアビリティの力を使える時が来たのか、どうやって使ってやろうかな。
そんな事を考えていた瞬間、ギフティアが今から目の前で、大切な人が死ぬかのような顔をして、俺に叫び出した。
「心君後ろ!!」
俺は後ろを向いた瞬間にビッグスライムに飲み込まれたのだった。
「心君、早く脱出するんだ。ビッグスライムに飲み飲まれたら、体の中でドロドロに分解されて養分になっちゃう!」
おいおい、嘘だろ。スライムってのはどんだけヤバい生物なんだよ。
「ダメだ、もう心くんは死ぬの確定じゃないか、僕のせいだ。いきなりビッグスライムなんかと戦わせた僕のせいだ。自分で自分の首を締めるなんて、とんだ誤算だよ。」
ギフティアの顔は絶望している。もう俺が確実に助からない事を暗示していた。
俺は必死に考えた。この状況をどうにかしようと、考えて、考えて、でも何も思いつかない。もう終わりだと思った時、俺の中の何かが、元に戻った。だが、そんな事はどうでもいい、冷静に考えれば分かる事だ。俺は死なない。今からこいつを木っ端微塵にするから
である。ギフティアは、俺のスキル「締錠」と「解錠」についてこういっていた。特定の物の動きを止める。そして、特定の物を分離させる。と、ギフティアの言っている事が正しければ、俺が今からする事は100%成功する
「「締錠」!」
「え?心君いったい何をする気なの!?」
俺が「締錠」を使った瞬間、ビッグスライムの消化が止まった。いや、止まったんじゃない俺が止めたんだ。そして、今から俺を飲み込もうとしたこのビッグスライムにトドメを刺す時が来たんだ。
「「解錠」!」
そう叫んだ瞬間に、ビッグスライムは粉々に吹き飛んだのだった。
「いったい、何をしたんだい?心君」
ギフティアが、俺に対して聞いてきた。
「神のくせに、こんな簡単な事も分からないのか?自分が言ったくせによ。」
「まさか!、、、やっぱり、性格変動の効果が、なくなって来て、元の正確に戻りつつあるんだ。」
「俺はただ、ビックスライムの消化を「締錠」して止めた後に、「解錠」でビッグスライムを分子レベルに分解しただけだよ。これでもしっかり倒したって事で経験値入るんだね。レベルアップして、レベルが一気に6まで上がったようだね。新しいスキルも解放されたみたいだよ。「把握」(グラスプ)だって、俺のレベルアップした時に獲得するスキルを決めたのもあんたなんだろ、解説してくれ、頼んだよ。」
「流石、元の世界では成績優秀で頭のいい心君だね。あの状況をこんな簡単に打破するなんて、神の私もビックリしたよ。まさか、獲得するスキルを決めた事まで見破られるとは思わなかったけどね。」
「御託はいいからさっさと解説しろ。あと少しで、完全に元の性格に戻る、そうなったら説明も聞かなくなってしまうだろうからな」
最後の最後に使えそうなスキルが手に入ったのだから、今の間に聞いておかなくては、性格が戻った時に、聞かない可能性があまりにも高すぎる。自分の事だからこそ、戻る前に聞いておかないといけないのだ。
「そうだね、今君が手に入れたスキル、「把握」は、対象にしたものの、レベル、スキル、アビリティ、ステータスが全て見られるものだよ。簡単に言えば、相手の事をほとんど知れる能力って事だね。」
「そうか、ありがとう。最後に一つだけ聞かせてくれないか。」
「何かな?」
「俺のこの世界での目的を教えてくれ。」
「最初に言った通り、君の感情を全て手に入れて、人として成長する事だよ。君が元の性格に戻ったら、何も興味なくてやらなそうだから、神の力で勝手に感情を手に入れるルートに行ってしまう呪いをかけたよ。」
「そうか、でもそっちの方がありがたいよ」
「最初の街に向かうには、この先を真っ直ぐ行った森を抜ければいいからね。私は最後にこれだけ伝えとく。」
「伝えなくても、どうせその呪いで行くはめになることは分かってるけどな。」
「ふっ、そうだよね。お節介がすぎたよ。でも、私は君に期待してるよ。君なら必ず、全ての感情を手に入れる事ができるさ。」
そう言って、ギフティアは神々しい光に包まれてその場から消えた。それと同時に、俺に対する性格変動も切れたのだろう。だって、今俺は、この世界に対しても、何に対しても興味を全く持っていないのだから。
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