第4話
彼は焦っていた。
予定が狂ってしまった。
アリスを消すはずが、まさか国外に追放されるなんて……。
とある秘密を知られたから、口封じのために彼女を消すはずが、さすがに国外に行かれては手が出せない。
彼女が秘密を洩らさなければいいが、当然そんな保証はない。
だから彼女を消そうと思ったのだ。
ライアン王子が余計なことをしなければ今ごろ、アリスを消すことができていたのに。
これからずっと、秘密を洩らされるか心配しながら生きなければならないなんて、気が狂いそうになる。
どうにかして、アリスを消す手段はないだろうか……。
*
アリスはライアンと共に馬車に乗って移動していた。
国内に戻ってきていたが、王宮付近の中心街は見つかってしまう恐れがあるので、国境沿いの小さな町の近くまで来ていた。
「まずは、変装しないといけませんね。いくら小さな町でも、ライアン王子は目立ちすぎます」
「え、そう? 急いで君を追ってきたから、そんなにきちんとした格好じゃないけど」
「いえいえ、どう見ても貴族とかにしか見えませんよ。まずは、服装を変えて、そうですね、その長い髪もばっさり切ってしましましょう。それで、誰もライアン王子だとはわからなくなるでしょう。あ、そうだ、王子が身に着けている貴金属を売って、お金に換えてしまいましょう。馬車を預けるのにも、食事をしたりどこかに泊まるのもお金がかかりますし、それがいいですね」
「あ、ああ、それじゃあ、そうしよう」
ライアン王子は渋々了承した。
「では、ライアン王子はその辺に隠れていてください。私は馬車を預けて、必要な物を買ってきてきます」
アリスは馬車に乗って町に入った。
そして馬車を預け、服などの必要な物を買った。
それから、ライアン王子のところへ戻った。
「お待たせしました。ライアン王子の服も買ってきましたよ。地味なものなので、これで平民に見えるはずです」
「ああ、これに着替えればいいんだね?」
「あ、その前に、髪を切りましょう。私に任せてください」
「この長い髪、結構気に入っていたんだけどなぁ」
「大丈夫ですよ。ライアン王子なら、短い髪もきっと似合います」
「それじゃあ、バッサリといきますよ」
アリスはハサミを構えた。
「あ、ちょっと待って。アリス、君は髪を切るのは上手なの?」
「大丈夫だと思いますよ。昔飼っていた犬の毛を何度か切ったことがありますから」
「え……、それって、大丈夫って言えるの?」
「はい、それではいきますよぉ」
アリスはライアン王子の髪を切り始めた。
そして、一時間後。
「ふう、変な髪形にならなくてよかったよ」
「だから言ったでしょう。大丈夫ですって」
アリスとライアン王子は、街の宿屋に到着していた。
途中で街に人と何人かすれ違ったが、誰もライアン王子のことには気づかなかった。
さて、ここなら、落ち着いて話ができる。
すべての事情を、これからライアン王子が説明してくれる。
「まず、君を殺そうとしている人が誰なのかはわからないと言ったが、実は三人の候補者がいる」
「え、容疑者ってことですか? いったい、誰なんですか!?」
「その人物は──」
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