第60話
「まぁ、だがリリーシェンヌのいうよに、万が一何が起きるかは分からない。王都を多くの兵が離れる好きをついて、王都で騒動が起きないとも限らない」
なるほど。目を北の領地に向けさせ、そのすきに間者が王都で何か起こす可能性か。……って、しっかりもう、お父様に作戦読まれてるからそれも失敗ね。サ国には、頭の切れる人はいないのかしら。
「ローレル嬢と友達だと言っていただろう?」
「え?」
ローレル様が今の話に何故出て来るの?
「しばらく舞踏会も行われないから、ローレル嬢も領地に帰るだろう。王都よりもよほど安全だからな」
そうか。エミリーにも会えないけれど、ローレル様にも会えなくなるんだ……。
ぐっと奥歯を噛む。サ国の馬鹿!無駄なことして!
「ローレル嬢が領地に帰るのであれば、リリーシェンヌを一緒に避難させてもらえないかと手紙を出しておいた」
「え?」
「友達だと聞いていたからね」
た、確かに、お父様には友達ができたと言ったけれど、まだそこまで親しくないですし……。
そ、それに、手紙って公爵家から娘を一緒に領地に連れて行ってくれみたいな感じですよね?
私、ローレル様に公爵令嬢だって言ってないのに……!
ちょ、手紙をもらった辺境伯も困っちゃうんじゃないかな……。
翌日には手紙が届き、3日後には公爵家に迎えの場所が来た。
「まぁ!リリー様、公爵令嬢というのは貴方でしたの!」
ローレル様が通された部屋に、私が姿を現すとローレル様が驚いたように立ち尽くした。
「ごめんなさい、内緒にしていて……あの……」
どうしよう、馬鹿にするつもりでしたのとか、怒ってしまったかしら……。こんなふうに教える予定なんて無かったのに……。
「素敵!」
え?素敵?
「招待を隠して舞踏会に参加されるなんて、なんて素敵でしょう。リリー様は……いえ、リリーシェンヌ様」
ローレル様に、リリーシェンヌと呼ばれたことで胸の奥がぎゅっと痛む。
距離を置かれたような気持ちになった。
「リ、リリーと呼んでください。あの、今まで通りで、お願いします!」
私の言葉に、ローレル様がニコリとほほ笑む。
「リリー様がご自身の身分を明かさなかったのは、公爵令嬢としてではなく自分を見てくださる方との出会いを求めたのでしょう?」
ローレル様が生き生きとして言葉を続ける。
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