第42話
「あら、貴方は嘘をつくのがお好きなようですし、そういうこともあるかもしれませんわね?」
「は?私が嘘つきですって?何を言い出すの!失礼ですわ!それに、立場をわきまえなさい!私を誰だと思っているの!」
え?立場?
「あら?立場ですか?確か貴方は、辺境伯よりも位が下である伯爵令嬢ではありませんでしたか?」
ローレル様の言葉に、エカテリーゼ様が手に持っていた扇子の先をローレル様に向ける。
「私は、辺境伯よりも位が上の公爵家へ嫁ぐ身。将来の公爵夫人だとご存知ありませんの?」
ふんっとエカテリーゼ様が鼻を鳴らす。
「あらいやだ。まだ嫁いでもいないと言うのに、公爵夫人気取り。……婚約破棄されないとも限らないでしょう?それに、未来の話でしたら」
ローレル様が一旦言葉を切って手に持つセンスで、エカテリーゼ様が付きだしたセンスをパシリと払った。
「私、未来の皇太子妃……のちの王妃になるかもしれませんのに。ねぇ?」
ローレル様が集まっている人たちに同意を求めるように視線を向ければ、誰もが押し黙った。
そりゃそうだろう。未来のありもしない位で上下関係を語るなど聞いたこともない。
いくら婚約していても、確約ではないのだ。エカテリーゼ様はあくまでも今はまだ伯爵令嬢でしかない。
「それに、貴方が嘘つきだということの、何が失礼なのかしら?」
ローレル様が一歩、エカテリーゼ様に近づく。
「い、いくら立場が上の者でも、証拠もなく人を嘘つきだと言うのは失礼というものですわっ!そうでしょう?」
今度はエカテリーゼ様が周りの人たちに同意を求めるように話かける。
確かに、上の立場であればいくらでも下の者を理不尽に扱っていい訳ではない。
「あら、あなたが嘘つきだというのは、王妃様もご存知の事実だと思いますわ」
突然飛び出した王妃様という単語に、エカテリーゼ様はもちろんのこと皆が固まる。
「な、な、何を……」
動揺しているエカテリーゼ様にローレル様はもう一歩近づく。
「ねぇ、これ、素敵でしょう?このドレスについている布で作られた花」
エカテリーゼ様は、今日は青紫色の細身のドレスを身に着けている。この間言っていたアルストロメリアオニックスの花を模したブーケ・ド・コサージュの着いたドレスだ。早速仕立てんだ。とても似合っていて素敵だ。
「何という名前かご存知?」
「は?し、知らないわよ!花の名前なんて」
「私が尋ねているのは、貴方もドレスにつけているでしょう?その名前を聞いているのよ」
ローレル様がセンスの先を、エカテリーゼ様のドレスについているブーケ・ド・コサージュにむける。
「ああ、花飾りのこと?」
エカテリーゼ様の言葉を待って、ローレル様がセンスを広げて口元を覆う。
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