第13話
「皇太子が王位を継ぐ決意をしてくれるか、もしくは第二王子の成長を待ち皇太子の地位を譲るしなければま皇太子は婚約者を持たないのではないかと思うんだ……」
そんな事情があったんですね。20歳にもなって婚約者もいないのには……。そうか。王妃になるつもりで婚約したのに!って上位貴族の娘だといろいろ禍根を残しそうです。かといって、事情を説明しないまま下位貴族に話を持って行けば、何かあるのではないかと色々探られますよね。
ならば、王位を継ぐのかやめるのかはっきりしてから婚約した方が問題はなさそうです。
「あるいは、心から愛しあえる相手に出会えば、婚約するかもしれない」
だからお見合い目的の舞踏会に顔を出しているんですね。
「陛下も、どうやら愛する人ができればやる気が出るのではと期待している面もあるみたいだ」
まぁ、本当に好きで好きでたまらない人の頼みなら、叶えてあげたくなるかもしれない。王様になるのは大変だと思うけど、私も支えるから頑張って!みたいに言われたら……。素敵よ。政務を行っているときの貴方。大好きだわと言われたら……。
確かに、気が変わるかもしれない。うん、だから政略結婚の相手ではなく、舞踏会で好きな人を見つけてきなさいと……。
あ、ある意味私と同じ立場ですねぇ。本来なら家の格だとかなんだとかで選べるようで相手は選べないはずなんですが。
お兄様も、公爵家令息ということで、年齢の合う伯爵令嬢の中から選ばれたという感じでしたし。
「お父様、とにかくですね、私、皇太子殿下には興味はございません。本当に興味があれば、会いたいとお願いしますし」
お父様がほーっと、大きく息を吐きだした。
「そ、そうか。うん、任せて置け、その、皇太子殿下ではなくとも、その、会いたいと思った、アレルギーがあまり出ない相手が見つかれば、私が何としてもゲットしてやる」
ゲットって。
……間違いなく、権力使っていいなりにするって意味ですよね。いえ、あの……。それは後々まで禍根が残って、私、幸せになれなさそうなんですけど。
ぞっとして身震いする。
もし、アレルギーがあまり出ない相手が見つかったらゆっくり自分で愛をはぐくんで、そのうえで事情を話してそれでも一緒になってくれるなら……という感じにした方がいいんじゃなかろうか?
「それで、リリー、なぜ突然オレンジ色のドレスを作りたいなどと……」
「目立つのですわ!ピンクでフリフリのドレスを着ているご令嬢など、他には全くいなくて」
本当は悪目立ちして、変なのに絡まれたり、陰口を叩かれたりしたのですが、もし、そんなことをお父様に言おうものなら。
取り潰されてしまう家がありそうで言えない。いや、流石にお取り潰しなんて乱暴なことはしないとは思うけれど……。
相手は一緒に仕事しにくくなるだろうなぁってレベルでは睨まれると思う。
「目立つなんて最高じゃないか!流石私の天使!」
「お父様、流行に乗り遅れているという意味で目立つなんて恥ずかしいのです」
お父様がむっとした表情をした。
「何を言う、公爵令嬢のお前が、流行を作っていくファッションリーダーになるんだぞ?半年後には、そこら中お前のドレスを真似した令嬢で舞踏会はあふれかえるに違いない!」
お父様の言葉に、ああ、それもいいかもしれないとちょっとだけ思った。
だって、エミリーの好きな感じのドレスを流行らせたら、エミリーは目で楽しめるわよね?
周りにフリフリいっぱい。
って、でも、ダメ!
「お父様、普段舞踏会に出ない私は、運よく誰もに公爵令嬢だと知られることはありませんでしたわ」
「何?なんてことだ……やはり、お前の誕生日の舞踏会など盛大に開くべきだったか……」
お父様が落ち込んでしまった。
「お父様、私、公爵令嬢だと知られていなくて良かったと思っていますの」
そのおかげで、エミリーと出会えたし。
「もし、公爵令嬢だと知られていたら、高位貴族以外とお話できる機会は減ってしまうと思うのです」
せいぜい伯爵家の令息までだろう。そして、継ぐべき家のない次男や三男はのぞかれる。
「本来は婚約者として名前が上がらないような方が、もし私に近づいてきたとしても……何が目的なのか疑ってしまいますわ」
好みのタイプだから話がしてみたかったと、思ってもらいたい。
ふとエミリーの「かわいい!理想そのもの」という言葉を思い出す。まぁ、もちろん自分がなりたい女性の理想と言う意味なんだけれど。
それでも、あれだけ手放しでかわいいって褒めもらえるのは嬉しい。
公爵令嬢だと分かっていて私を褒めてくれる人がいたとしても、ご機嫌とりなのか、ゴマすりなのか、本心として素直に受け取ることはできないと思う。
「ああ、そうだな。そうだ、リリーの言う通り。リリーを利用してのし上がろうとする男など、認めん!私のかわいい娘を利用するようなやつは」
お父様が鬼のような形相を見せる。
「せっかくお父様が、どのような方でも構わないと言ってくださったので、公爵令嬢ということは隠して舞踏会では過ごそうと思うのです」
「うん、そうだな、ハイエナみたいなやつが私の天使を汚すなど想像もしたくない」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます