南極到着
恐ろしい変質体はすべて討伐された。
船に潜伏している個体がいないかの確認作業もようやく終わった。
手分けして何度も何度も生き残りがいないかを見回ったのでたぶん大丈夫だとは思う。
すべての騒動が落ち着く頃には、天に星空がひろがっていた。
その晩、ジウさんが俺の部屋をたずねて来た。
状況の報告を秘書として行うためとのこと。メッセージを飛ばせばそれで済むとは思うが、ジウさんは面と向かって連絡する派の人なのである。
アーサーは数分前にすべてのフェリーをまわりおえ船団が負ったダメージを回復させたらしい。なかなか仕事をするやつだ。
「ちーちー(訳:今回はちーが出るまでもなかったちー)」
お澄ましエナガさんもすっかり頭を冷やしてくれている。
いざとなればゴッドエナガを出動させようとは思ったが、不要だったとは。
「……。ホワイトユニコーン号は再集合をのため移動しているところです。集合後は、ふたたび南極へと進行を再開します」
「変質体については何かわかりましたか?」
「……。詳しい事はまだ。しかし、経路はおおよそ判明しました。船に乗る前から寄生型モンスター兵器を仕込まれた者たちが混ざっていたようです。スイッチひとつで人間を怪物するができたとだけわかっています」
「それじゃあスイッチを押した者が?」
「……。はい、おそらくは船団に混ざっているかと思われます。エージェントたちが顔のない男の尖兵を探しているところです」
「なんでこんなことするんですかね」
「……。顔のない男の目的は誰にもわかりません。行動は不規則かつ動機が不明なものばかりですから」
「ただの嫌がらせが動機だったりして?」
「……。ありえるのがかの怪人の恐ろしいところです」
嫌がらせの天才という印象は確かにある。
なんでかは知らないが、俺は『顔のない男』アララギが、徹底的にやっていないように思えてならない。やつがその気になればもっと被害を出せるだろうに。
見当もつかない。
何がしたいのだろうか。
「はあ、考えてもわかるようなことじゃないか」
「……。指男さん?」
「ああ、いえ、なんでもないです。……ところで南極遠征ってこのまま続けるんですね。結構な事件だったと思うんですが」
「……。顔のない男の干渉がある以上、再アプローチも考慮されましたが強行することが吉と判断されました。今回の南極遠征隊は8コのダンジョン財団本部すべてが連携することでなりたっている一大作戦なので再計画にはたくさんの時間を要することになってしまいます。封印が完全に解除されるまえにアルコンダンジョンの入り口を制圧する必要がありますので、再アプローチをする猶予があるかは現状では不明なためです」
とにかくはやく南極のアルコンダンジョンをしばきたいってことか。
「……。ところで指男さん。レヴィアタン・ワンの件ですが」
「あっ」
「……。あの巨大な怪物を倒した一撃が指男さんのものだとはバレていません。空からの一撃は多くの探索者にとってはS.O.L.の二発目としか認識できていないようです。S.O.L.に連射能力が無いことを知る者は首をかしげていますが」
船は丈夫で沈んだ物はなく、転覆被害も完全にひっくりかえったものはなかった。せいぜい横に傾いて海水に船体が半分ほど浸った程度だったという。
フェリー船団に打撃を与えてそのあとのあの事件だから、余計へイト集められるんじゃないかって心配してたが杞憂だったようだ。
「……。レヴィアタン・ワンを倒したのが指男さんだと知るのは私だけです。この功績を報告しておきます。半世紀以上も世界各地で船舶を沈めてきたおそるべき厄災を打倒したんです。世界中が指男さんに感謝することでしょう」
うーん。怒られないんだったら、まあいいか。
──数日後
嵐の前の静けさと言うのか。
暗く怪しげな雲のした、南極海は嘘のように穏やかになっていた。
甲板に出てもよいとの船長からの放送が入ったので、気分転換に足を運んだ。
数日前の惨劇では死体が積みあがっていたが、いまはすっかり綺麗になっている。
俺は手すりに寄りかかりスマホで風景を撮影する。
旅の土産に、氷を持って帰っても仕方ないので、赤木家には俺の南極遠征の思い出を南極土産にすると伝えてあるのだ。
「フィンガーマンも写真とか撮るんですね」
フェデラーがやってきて、俺の隣の手すりに寄りかかる。
「まあ普通にな」
「普通に」
「うん」
はい、会話終了。コミュ障乙。
「……えっと、SNS見ました?」
「いや、見てないけど」
「み、見てくださいよ。面白いことになってますよ」
SNSでは俺が海の悪魔を刺身にして南極遠征隊にふるまったという伝説が話題を呼んでいた。どこから持ってきたのか捏造画像が一夜で無限に生成されていて、俺でさえ「もしかしたら刺身振舞ったのか?」と思ってしまうほどだった。
「どこからこの画像出て来るんだよ……はぁ」
「こうやって噂に尾ひれがついていくんですね」
「そう言うことだ」
「僕とのツーショット事件がこれで上書きされるといいんですけど」
「ツーショット事件?」
「フェニックスvsフィンガーマンで引き分けになったあと、いっしょに写真撮ったじゃないですか。あれで何仲良くなってんだよって炎上してて」
「炎上する案件だったか」
「RIP.Empireなのに決着つけなかったのがよくなかったのかも……?」
ニューヨークでの一件はお互いの支持者のために引き分けを落としどころとした。
明確な決着にしなかったのが周囲には茶番に見えたのかもしれない。
「身勝手なもんだな。決着ってなんだよ」
「みんなに嫌われたらどうしよう……」
「画面の向こうの顔も知らないやつがそんな大事か」
「あなただって投稿伸びるとニヤニヤしてるじゃないですか」
「話が別だろう。お前はみんなに誇示してるだけだ。投稿の伸びが、影響力が……なんていうんだ、その、幸せの関数みたいな……」
頭の良いことを年下に言おうとして訳わかんないこと言っちゃったよ。
なんだよ。幸せの関数って。そもそも関数ってなんだよ。
「幸せの関数……なるほど。幸せがなんなのか見つけるのが難しいから、数字とリーズナブルな反応の量で自分の価値を担保した気になってたんだ……っ」
「ん? あぁ伝わった? ならいいんだ。そういうことそういうこと」
フェデラーはスッキリした顔で空を見上げる。
よくわかんないけど悩みが晴れたなOKだ。
「あっ南極!」
言って彼はスマホで航路の先をパシャリと撮影した。
画面には水平線より現れた真っ白な陸地が映っていた。
ウシュアイア出発から3日後。
トラブルを乗り越えて南極遠征隊は目的地にたどり着いた。
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こんにちは
ファンタスティックです
読者の皆様は興味ない話かもですがすこし語らせてください。
昨日の実験結果ですがイカれた結果になりました。
2022/8/30 19:30~2022/8/31 19:30の間でザっと★900コ増えてます。
バグです。カクヨム運営に不正行為を疑われるレベルです。狂ってます。
本作『俺だけデイリーミッションがあるダンジョン生活』は過去に日間週間月間で一位になったことがありますが、一番華形の総合週間一位の時ですら1日で★400コくらいの増加がMaxだったように記憶しています。つまり瞬間最大風速だけで言えば昨日の夜から今日の夜のあいだは総合週間第0位といっても過言ではありません。
ちなみに昨日までランキング圏外だったのに、今は総合日間ランキングで第5位にまで瞬間移動しております。総合週間ランキングでも178位→41位に瞬間移動してます。ありえないです。こういうランキングの上昇の仕方はまずありえないです。
ランキングに影響を与えるのは★だけではなくフォローも1ポイントになっていたりします。なので皆さん、好きな作品は★を入れるだけでなく『フォロー』もしてあげると作者は喜びます。言っている意味、賢い君ならわかるよね……?
味を占めたファンタスティックは定期的に「★★★を入れろ……」と言うかもしれません。でも恐がらないでいいんだよ。みんなで幸せになろう、ね──?
長文失礼いたしました。
最後に、読者の皆さまありがとうございます。
一晩だけですが久しぶりに作品がバズる疑似体験をさせてもらいました。
やっぱガンガン伸びると嬉しいね。
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