フィンガースナップLv9とスキル解放の種


 こんにちは。

 ブルジョワ探索者にしてAランク第10位、ギルドマスターにしてフィンガー・エクスペリエンス社CEO、厄災島オーナーにしてブラック会員の赤木英雄です。

 

 デイリーくんが実施した200日継続記念オールスター感謝祭二度と馬鹿なことするんじゃねえぞ次やったらシマエナガさん焼き鳥にして抗議するぜmenファッキンクエストで手に入れた『スキルの種』二つと、『スキル解放の種』なるものを使ってみたいと思います。

 

 『スキルの種』は以前、千葉ダンジョンで使ったことがある異常物質です。

 すこし濡れていて、ブドウみたいな大きさのそれ。


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『スキルの種』

 生前に取り出された聖職者の瞳

 うちに宿すことで神秘の力を増幅させる

 使用でスキルレベルを1上昇させる

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 何に使おうか。


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 赤木英雄

 レベル325

 HP 2,702,965/3,807,500

 MP 794,,690/991,500


 スキル

 『フィンガースナップ Lv7』

 『恐怖症候群 Lv10』

 『一撃 Lv10』

 『鋼の精神』

 『確率の時間 コイン Lv2』

 『スーパーメタル特攻 Lv8』

 『蒼い胎動 Lv5』

 『黒沼の断絶者』

 『超捕獲家 Lv4』

 『最後まで共に』

 『銀の盾 Lv9』

 『活人剣 Lv7』

 『召喚術──深淵の石像Lv7』

 『二連斬り Lv7』

 『突き Lv7』

 『ガード Lv6』

 『斬撃 Lv6』

 『受け流し Lv6』

 『次元斬』

 『病名:経験値』


 装備品

 『クトルニアの指輪』G6

 『アドルフェンの聖骸布 Lv6』G5

 『蒼い血 Lv8』G5

 『選ばれし者の証 Lv6』G5

 『メタルトラップルーム Lv4』G5

 『迷宮の攻略家』G4

 『血塗れの同志』G4


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 最近のダンジョン攻略では『召喚術──深淵の石像Lv7』を使ってダンジョンフロアを歩くだけ全自動攻略にハマっているのでかなりスキルが成長した。


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 『召喚術──深淵の石像Lv7』

 深淵の彫刻家はいまも作り続けている

 それは終わること無き探求である


 深淵の石像(月陰)を召喚する

 消費MP 1,000

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 このスキルで召喚できるモンスターがこれだ。


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 深淵の石像(月隠)

 HP1,500,000/1,500,000

 ATK1~1,000,000(100万)

 DEF800,000(80万)

 

 スキル

 『身代わり』

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 分厚い体の厳めしいローマ彫刻みたいな形状をしている。

 攻撃能力より防御能力に優れており、パワー至上主義者である俺に言わせてもらえば、これを召喚する理由はあんまりない。

 ただ、面白い能力があって、影に溶け込むようなステルス能力があるのだ。

 これはフィンガーズ・ギルドに所属するどんなモンスターも保有しない能力だ。

 人間ひとり分の影に1体仕込むことができ、興味深い能力として、もし攻撃を受けてしまった場合、石像のパッシブスキルが起動し、影より飛び出し身代わりになって初撃を受け止めてくれるのである。


 もしゲームの世界みたいに即死系のスキルによる攻撃あるいは、そういう危険な能力を持つモンスターに遭遇した時、何か役に立つと思っている。まあ、そんなモンスターいないかもしれないけどね。


 なので最近お気に入りのこと石像くんを強化してもいい気はする。

 候補はいろいろあるんだ。


「まあでも、悩むまでもないか」


 スキルの種をパクっと食べた。


(どのスキルへスキルポイントを振りますか?)


「指パッチンしか勝たん」


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 『フィンガースナップ Lv9』

 指を鳴らして敵を還元する。

 生命エネルギーを攻撃に転用する。

 転換レート ATK1,000,000:HP1

 解放条件 ワンスナップ・ワンキルで10億キル達成

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 HP1でATK100万。

 ついにそこまで来てしまったか。

 いや、もうなんというか慣れてはいるんだ。


 ただ、どんどん苦戦が遠のいていくというか……。


「まあ、強い事はいいことだ」


 そう信じてる。疑うことはない。


「ちーちーちー(訳:本当に地上で戦うだけでみんなに迷惑かける存在になってきたちー)」


 ぼそっとつぶやくシマエナガさん。

 まったくその通りで面目ない。

 これは指パッチン封印も近いかもなぁ。

 地上で使わなきゃいいだけなんだけどさ。


「あとは……これか」


 『スキル解放の種』ですか。

 はじめて見る異常物質だ。

 クルミみたいな大きな種である。

 目玉とかのフォルムではない。普通に種だ。


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 『スキル解放の種』

 触媒から得られた情報をスキル昇華させる

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 アイテム説明だけじゃチンプンカンプンだ。

 というわけでシマエナガさんに『冒涜の眼力』で見てもらって使い方を学んだ。


 結論から言うと凄まじい異常物質だった。

 どうにもなんらかの環境、現象、人物、経験、物質、概念、そのほかさまざまな事象を因子として取り込み、それらをスキル化、人間を覚醒させることができるらしい。


「え? いきなりこんなこと言われても、困るな。何にしよう」


 予想より凄い物が手に入ってしまい困惑する。

 

「ちーちーちー(訳:英雄は頭が足りないから頭がよくなるスキルを解放するちー!)」

「ぎぃ(訳:適材適所。頭脳はほかで補えばよいのです。我が主はリーダーシップやカリスマなど、磨こうにも磨きにくい素質をスキルで補いましょう)」

「きゅっきゅっ!(訳:力こそパワーっきゅ! 英雄にとって勇ましい武はいくらあっても足りないっきゅ! もっと攻撃力をつけるといいと思うっきゅ!)」

 

 三者三様。

 どれも納得できる。

 特にハリネズミさんのさらなるパワーは魅力的だ(※脳筋)


「ちょっとみんなの意見を聞いてみますか」


 ということで、フィンガーズ・ギルド本部である厄災島へやってきた。

 夜空には星空がきらめき、すっかりあたりは暗くなっている。

 ビーチにある扉に到着すれば、すぐそこは夜に溶ける黒い建物がある。

 黒い指先達の労力と、トランプマンの経済的・技術的支援を受けて完成させた通信基地である。太平洋上の島でありながら、太い電波域を確保しており、スマホ画面には5Gの文字が表示されている。


「指男、この通信基地すごいぞ。海のうえなのに爆速じゃないか」


 アロハシャツを着た長谷川鶴雄を発見。

 夜のビーチを散歩していたのかな。

 スマホを掲げてニコニコだ。

 彼はVtuber活動があるので厄災島から配信できるのは嬉しいらしい。

 

「家では家族らの評判があまりよくないと知ってしまったからな。厄災島には助かっているぞ」

「それはよかったです。ところで長谷川さん、こんな感じのアイテム手に入れたんですけど。カクカクシカジカンって感じですごいアイテムなんですよ」

「狙ったスキルを発現させられるのか? とてつもないレアアイテムだな!」

「ですよね。俺に足りない物ってなんだと思います?」

「そんなものあるか……? お前が持ってないものなんて数えるほうが速いだろう。探索者としてモンスターとの戦いを想定してるなら、足りないものはない。完全な実力をすでに完成させているように私には見えているぞ」


 長谷川さんをはじめ、その後、島のあちこちでギルドメンバーを見かけては話しかけてみたが、みんな特にこれと言ったヒントをくれなかった。

 俺としては完璧どころか、欠点だらけに思えて、こんな適当な男が社長やらギルドマスターやらの地位にいていいのか毎分疑問を抱いてるくらいなのだが……。

 面白い案としてはドクターの「『セーブポイント』の能力をスキルかしたらタイムリープできるんじゃね?」という大胆なもの。

 ただ、試してみた結果、強力な拒絶反応がでたので、人間の身ではタイムリープを操れないということがわかっただけに終わった。『セーブポイント』。なんかすごそうだから、なんとか利用したいんだが、いかんせん今のところ上手く行っていない。


「赤木さん! こっちこっちちょっと来てください!」


 考えごとをしながら散歩してると、経験値のなる木のふもとで修羅道さんを発見した。ぴょんぴょん跳ねて手招きしてくる。

 

「見てください、にゃんにゃんハウスですよ!」

「にゃんにゃんハウス?」


 修羅道さんはなにを言ってるのだろうか。

 分厚い根っこの隙間をのぞいているで俺ものぞく。


「にゅあ~」

「これは……ノルンとコロンが子どもを……?」

「根っこの隙間をにゃんにゃんパンチで掘っておうちをつくっていたみたいですね。ノルウェーの猫又の家族です」


 なんということだ。

 ノルウェーの猫又って増えるのかい。

 

 俺と修羅道さんは樹の根に腰かけ、小猫たちが母親と父親の尻尾であそんでいるのをのんびり眺める。


「『スキル解放の種』ですか。初めて見る異常物質ですね。一応データベースで照合してみます」


 修羅道さんは「ふむふむ」と手際よくスマホで確認をした。


「やはり初めての異常物質ですね。名前から察するにすごいものだとはわかりますね」

「なにに使うべきだと思います?」


 俺は『スキル解放の種』をくいっともちあげる。


「ふむ、任意のスキルを解放させることのできる異常物質ですか。いろいろと悪用を思いつきますが……正直言って、赤木さんは小賢しいスキルを身に着ける必要性を感じませんね。なのでこれは無理に使う必要もないのでは?」


 攻撃力は有り余ってるし、防御力も十分、回復も自前でできるし……。

 ソロで活動してきたせいか、オールインワンみたいな探索者に進化している。

 確かに現状で欲しい能力はないし、戦力が足りないと思ったことはない。


「未来への投資にしましょう。きっとこの種が必要になる時が来るかもしれません」

「投資ですか」

「種なので植えたら樹が生えるかもしれませんよ!」

「おお!」


 なるほど。流石は修羅道さんだ。

 すぐ使うのではなく、増やすことから考えるとは。

 ということで『スキル解放の種』は日当たりの良い場所に植えられた。


 どんな樹が育つのかな。

 スキル解放の種まで栽培できるようになったら、厄災島の特産がまた増えることになる。そうすればフィンガー・エクスペリエンス社はもっとビッグになるだろう。ノルマは1兆円なのでぜひとも生産を拡大させたいところだ。

 大金の使い道なんて、毎日LサイズピザとLサイズポテトで豪遊するくらいしか贅沢が思いつかないけど……でもまあ、たぶん修羅道さんは喜んでくれるはずだ。

 

 

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