コツコツランク:ブラック

 課金分の妹モードを楽しんだ俺は、愚妹がネザミーランドへ旅立つのを見送る。

 

「あそこは千葉国だからね。油断しちゃだめよ。国民全員自分たちが東京に住んでいると洗脳されている危険な思想統一国家からね。もしなにかあったら元・チーバくんの名を呼ぶといいわね。彼は友達だから、きっと助けてくれるわ」

「はいはい、行ってきまーす」


 妹が無事に千葉から帰ってこれることを神に祈り、俺は台所で床下をあさり、カップラーメンを発見したので、美味しくいただいた。


 本日は記念すべきことがあったりする。

 なんと俺のデイリーミッション継続日数が199日まで来たのである。

 今日の分をクリアすれば200日。つまり何かが起こる可能性があるのだ。


 この1カ月、語りだしたら止まらない程度にはキツイデイリーはたくさんあった。

 最も恐ろしいデイリーは三つほどあった。

 ひとつ目は『サウナちゃんぽん!』である。

 このデイリーは後付けがひどかったのが印象的だった。

 

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  ★デイリーミッション★

  毎日コツコツ頑張ろうっ!

  『サウナちゃんぽん!』


 サウナちゃんぽん 0/100


 継続日数:182日目 

 コツコツランク:プラチナ 倍率10.0倍

 ──────────────────


 もはや名前からしてヤバさしか感じなかったが、俺は近くのスーパー銭湯へ赴き、ぎぃさんを使ってお客さんたちをいったん退避させ場を整えた。

 ぎぃさんがサウナの外で触手を器用に使ってちゃんぽん100人前をつくり、ハリネズミさんが運び、シマエナガさんがサウナのなかでダイエットしようと死にかけている傍らで、俺はひたすらにちゃんぽんを食べた。

 しかし、途中からハリネズミさんが「熱々ちゃんぽんじゃないっきゅ? エンタメでは熱々ちゃんぽんが常識と思うっきゅ」と余計な発言したせいで、サイレントレギュレーションは施行され、実質、サウナで熱々ちゃんぽん100人前という修羅の苦行に変貌したのだ。熱々なんてクエスト名に入ってないのに。 

 しまいには「サウナならろうりゅ──熱したサウナストーンに水をかけて水蒸気を発生させることにより、体感温度を上げる。つまり地獄──って言うものがあるらしいっきゅ。ろうりゅしないっきゅ?」とかまたしても余計な発言したせいで、ろうりゅなしだとデイリーの進捗状況が進まなくなり、15分に1回ハイペースろうりゅがハリネズミさんによって実施されるハメに。お前をちゃんぽんにしてやろうかと思いながら俺たちは汗をかいた。

 シマエナガさんはサウナから出て来る頃にはすっかりスリムエナガさんになっていましたとさ。


 二つ目はこれ。


 ─────────────────

  ★デイリーミッション★

  毎日コツコツ頑張ろうっ!

『時々ボソっと日本語で悪口言う後ろの英雄さん』


 時々ボソっと日本語で悪口言う 0/100


 継続日数:186日目 

 コツコツランク:プラチナ 倍率10.0倍

 ──────────────────


 いや、もうただの嫌な人なんだよ。

 こういうイロモノ系が来るとミーム装甲があることに感謝する。


 ──────────────────

  ★デイリーミッション★

  毎日コツコツ頑張ろうっ!

 『ハードラックとダンス』


 ハードラックとダンスする 0/100


 継続日数:196日目 

 コツコツランク:プラチナ 倍率10.0倍

 ──────────────────

 

 なにを言ってるかわからなかったんで調べたところ、どうにも交通事故にあえと言う事らしかった。

 1日で100回。頭がイカれてると思いながら「まあ、デイリーミッションだしこれくらいはありえるか」と受け入れていた。

 思い返せばこれは一種のマインドコントロールなのかもしれない。

 すこしずつ過激になるデイリーによって、常識で考えておかしいことをたやすく受け入れやすくなっている。

 ジウさんに頼んで用意してもらった最新鋭の装甲車で時速100kmで100回轢いてもらった。運転手はハリネズミさん。

 「英雄殿なら耐えられるっきゅ! 英雄の矜持を見せてほしいっきゅ!」と、車の耐久実験かのようにもうスピードでつっこまれ「そんなスピード出さなくていいから……!」と思いながら、生身でぼこぼこにされた。

 『銀の盾Lv9』でメタル装甲を使えば俺はノーダメージだろうが、それだど装甲車のほうが傷ついて最悪大破してしまうので、俺はメタルなしで受けまくった。

 普通にめちゃ痛かったので二度とやりたくはない。


 もちろんこれだけじゃなかった。

 なんか知らないけど本当に過酷な1カ月で『約束された勝利の指先 5』『鋼の精神 パワー』『鋼の精神 指男チャンネル』『ひとりフラッシュモブ』『俺の名はネコ』などの歴代ボスみたいなやつらが集結してきていた。

 そんなこんな過酷なデイリー月間を乗り越えた俺は、ついぞたどり着いたのだ。


「さあ、栄光の200日目へ! デイリーミッション!」


 視界にデイリーウィンドウが表示される。


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  ★デイリーミッション★

  毎日コツコツ頑張ろうっ!

 『時々ボソっと俺の名は指男チャンネル

   約束された勝利のモブ英雄さんは

   ハードラックとパワーでサウナちゃんぽん』

 

 エクスカリバーと叫びながら指パッチン

             0/5,000

 道ゆく者を「パワー!」で呼び止める 0/100

 指男チャンネルをはじめる 0/100

 ひとりフラッシュモブ 0/20

 にゃんにゃんにゃん 0/100

 サウナちゃんぽん 0/100

 時々ボソっと日本語で悪口言う 0/100

 ハードラックとダンスする 0/100


 継続日数:199日目 

 コツコツランク:プラチナ 倍率10.0倍

 ──────────────────


 オールスターはじまっちゃったよ。

 全員参戦ッ! あははははは死ねくたばれデイリーッ!


 ──16時間後


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  ★デイリーミッション★

  毎日コツコツ頑張ろうっ!

 『時々ボソっと俺の名は指男チャンネル

   約束された勝利のモブ英雄さんは

   ハードラックとパワーでサウナちゃんぽん』


 エクスカリバーと叫びながら指パッチン

             5,000/5,000

 道ゆく者を「パワー!」で呼び止める 100/100

 指男チャンネルをはじめる 100/100

 ひとりフラッシュモブ 20/20

 にゃんにゃんにゃん 100/100

 サウナちゃんぽん 100/100

 時々ボソっと日本語で悪口言う 100/100

 ハードラックとダンスする 100/100


 ★本日のデイリーミッション達成っ!★

 報酬 『スキルの種』×2


 継続日数:200日目 

 コツコツランク:ブラック 倍率100.0倍

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 俺はやった……っ! やったんだ……っ!

 壮絶なる200日目を越えて俺はたどり着いた!

 俺はデイリーミッションの王だッ!


「ちーちーちー!(訳:がんばったちー! 英雄は本当にやる時はやるやつちー! 見直したちー!)」

「ぎぃぎぃ!(訳:我が主は厄災を支配するにふさわしい王の器の持ち主。流石です。あなたこそこの世界を統べる存在にふさわしい)」

「きゅっきゅっ!(訳:感動したっきゅ! 英雄殿は不可能を可能にする大英雄っきゅ! 大古竜の盟友として本当に誇らしい存在っきゅ!)」

「ありがとう、みんな、ありがとう……!」


 はあ、涙がおさまってきた。

 コツコツランクは……あっ、ブラックになってる!?

 来た! ブラック会員だっ!

 しかも倍率100.0……!? 嘘だろそれはおかしいだろ!

 もはやただのバグ技。チートコードの仕様を疑われるぞこれ。


 でも、それだけのことなのか……今日のデイリー、最後の関門は間違いなく歴代デイリーのなかでもトップだった。断言できる。だってボスラッシュだもん。


「ん、デイリーミッションが点滅してる」


 視界の端、デイリーミッションが更新されたことを示すアイコンが出ている。

 開いて見る。


 ────────────────────

  ★デイリーミッション★

  毎日コツコツ頑張ろうっ!

   『おめでとう』


 よく頑張った


 ★本日のデイリーミッション達成っ!★

 報酬 1兆経験値

    『スキル解放の種』


 継続日数:200日目 

 コツコツランク:ブラック 倍率100.0倍

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 デイリー君……。

 思えばお前のおかげだよな。

 全部、全部、ここまで導てくれたんだよな。

 ありがとな。


「それでは僭越ながら特別報酬を受け取らせていただきます……きちゃぁああああ!」


 ピコンピコンっとレベルアップの音で意識が飛びかける。


「はぁ、はぁ、はぁ……っ」


────────────────────

 赤木英雄

 レベル325

 HP 2,702,920/3,807,500

 MP 794,,690/991,500


 スキル

 『フィンガースナップ Lv7』

 『恐怖症候群 Lv10』

 『一撃 Lv10』

 『鋼の精神』

 『確率の時間 コイン Lv2』

 『スーパーメタル特攻 Lv8』

 『蒼い胎動 Lv5』

 『黒沼の断絶者』

 『超捕獲家 Lv4』

 『最後まで共に』

 『銀の盾 Lv9』

 『活人剣 Lv7』

 『召喚術──深淵の石像Lv7』

 『二連斬り Lv7』

 『突き Lv7』

 『ガード Lv6』

 『斬撃 Lv6』

 『受け流し Lv6』

 『次元斬』

 『病名:経験値』


 装備品

 『クトルニアの指輪』G6

 『アドルフェンの聖骸布 Lv6』G5

 『蒼い血 Lv8』G5

 『選ばれし者の証 Lv6』G5

 『メタルトラップルーム Lv4』G5

 『迷宮の攻略家』G4

 『血塗れの同志』G4


──────────────────── 


 レベルは315→325に上昇。

 HPは110万上昇し、MPも20万以上上昇した。


 なんというステータスの伸びなんだ……あるいは『病名:経験値』によりレベルがあがりやすくなっているからか……?

 わずか1兆経験値キメただけでこんな成長してしまうとはな。


 とにかくブラック会員の力が凄まじいことはわかった。

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