最恐死刑囚編 開幕
ちょっと長めです
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無数の監房が左右に陳列する広々とした空間。
ここは米国某所にダンジョン財団が建設した特殊刑務所のひとつ。
その役割はスキル犯罪者を収容することにある。
スキル覚醒黎明期、文明を衰退させるほどに暴れまわった時期に比べれば、すっかりスキル犯罪の数は減ったと言えるが、依然としてその数は多く、毎年数百人がこの手の特殊刑務所にぶちこまれている。
とりわけ凶悪犯罪をおかしたスキル犯罪者は、”黒い監獄棟”と呼ばれる場所に連れて行かれる。世界にスキル犯罪者特殊刑務所はいくつもあるが、そのすべての刑務所がこの黒い監獄棟を持ち、そこでは財団の恐ろしいエージェントの監視のもとでの収容生活が待ち受けている。
黒い監獄棟へと続く暗い静かな廊下がある。
靴音がカツカツっと響く。闇に溶ける。
黒いポロコートに品の良いハットをかぶった人物だ。
背はスラっと高く、肩幅は広い。骨格からして男である。
表情はうかがえず、足音の主を中心に闇が広がっている。
とてつもない圧力をまとっていた。ただその場にいるだけで音と光を掻き消し、すべてを飲み込んでいく──そんな錯覚を覚えるほどの。
「止まれ」
靴音が止まった。
立ちはだかるのは暗色のスーツに身を包んだ男。
魔法銃を取りだし構えるその男は、ダンジョン財団のエージェントである。
「看守ではないな。何者だ」
「僕かィ? 別にたいした者じゃないよォ」
「お喋りをするつもりはない。両手をあげて床にうつ伏せになれ」
「んふふっ、それは嫌だなァ、これ見てくれよ、いいコートだろうォ? 汚したくないんだァ」
バンッ!
撃鉄で火薬が破裂する。
エージェントはなんの躊躇いもなく発砲した。
財団の秘密の使者であるエージェントたちにはおおくの裁量権が与えられている。
とりわけ黒い監獄棟を守るために配属されたエージェントには、凶悪な犯罪者を外へ出してはいけない使命がある。怪しい者はすぐに撃ち殺す。それが超越的な能力者がはびこる人智の及ばない世界で1秒でも長く生き延びるための心得だ。
「血の気がおおいなァ。放っておいてくれたら別に僕も構いやしないんだけどねェ。目には目を、歯には歯を。僕の好きな言葉なんだァ」
言ってポロコートの男はつまんだ魔法弾をポイっと放り捨てる。
カランっコロンっと静かな廊下に金属音が反響した。
特殊刑務所の黒い監獄棟へ向かう通路を美しい少女がゆく。
絹のように白い髪。色気の宿る褐色の肌。
豊かにふくらんだ双丘。
まだ酒も飲めぬだろう年齢のはずなのに、誰もが求めて羨む、垂涎ものの美貌を誇っている。
黒いスーツに黒いネクタイをビシッと締めて、暗黒のコートを羽織っているため、いくばくかそのエロティックな部分は隠されている。
せいぜいシャツがはち切れんばかりに張ってるだけだ。実に巨大だ。
彼女の名前は畜生道。
下の名前はあまり有名じゃない。
「遠いところ、ご足労いただきありがとうございます」
「さしたる苦労じゃないよ。気にしないで」
北米本部所属エージェントに迎えられ、案内され、畜生道は現場へ到着する。
血みどろの通路では科学捜査班による検視が行われている最中であった。
「被害者は黒い監獄棟を守るエージェントです」
「みたいだね」
首と両腕両足をもがれつぎはぎスタッカートされた遺体から、感情のない眼差しを切って、畜生道は奥へと向かう。
「エージェント室はノーフェイスの仕業と見ています。日本のあなたならわかることがあるのでは」
「そっちの推測通りだと思うよね。タケノコだよ」
「やはり……」
JPNダンジョン財団は『
「ひゅ~! えろい女が来たぜ~! ちょっとこっち来て俺のシャブリリしてくれよ~!」
「こら、静かにしないか馬鹿者どもが!」
極悪犯罪者たちが下世話にはしゃげば看守たち警棒で檻をぶったたいて注意する。
ただあまりにも畜生道が可憐すぎるものだから、欲を抑圧された監房エリアの者たちは盛大に劣情の言葉を浴びせた。
「ちょっとそれ借りるけどいいよね」
「え?」
北米エージェントのスーツの内側から銃を抜き取り、畜生道は監房の囚人の肩を撃ち抜いた。炸裂音が響き渡る。監房エリア全域が一瞬で静まりかえる。聞こえるのは撃たれて苦痛に悶える囚人のうめき声だけだ。
「そんなに大きい音が恐い? ウケる」
畜生道は銃をエージェントにかえして足を進めた。
その後、通り過ぎていく彼女へ野次をとばす囚人はひとりもいなかった。
長い空中廊下の先、鑑識が調査をする現場がまたしてもあらわれる。
ほかの監房エリアと独房エリアを隔てる重たい鉄の扉は、いびつにゆがみ床に横たえられてる。万力のような力で無理やりこじ開けられたことを示唆していた。
「この先が黒い監獄棟のなかでもとりわけ凶悪な犯罪者が収容される独房エリアです」
「ふーん」
言ってエージェントは畜生道をなかへ案内する。
足を一歩踏み入れた瞬間、むせかえるような血の香りが鼻をついた。
これには畜生道も眉根をひそめる。
独房エリアは凄惨を極めていた。
分厚い扉で隔てられ、光も届かないまっくらな部屋が横並びになっているが、その扉すべてが独房エリアのそれと同じように引き剥がされている。
通路には血と肉と骨、それと臓物だろうか、散乱していた。蠅がブンブンっと羽音をたてて飛んでいる。
畜生道は痕跡を吟味し、それらが『顔のない男』の仕業であることを断定した。
北米本部が知りたがっている日本本部のお墨付きを得て、エージェントはどこかホッとする。これが『顔のない男』の仕業であるなら、管轄外であっても日本本部の協力を積極的に要請することができるからだ。
「でもわからないよね。なんでアララギはこんなことをするんだろうね」
「それは……おそらく彼らが目的だったのかと」
「彼ら?」
「はい。実は独房に収監されていた死刑囚と死体の数が合わないのです」
「いなくなってる死刑囚がいるってこと」
「その通りです」
畜生道はエージェントからリストを受け取る。
リストには4名のファイルがピンでまとめてあった。
「連邦捜査局からの情報ではその4名のうち2名は日本行きの便に乗った可能性が高いことがわかっています。足取りは追えていませんがおそらく残りの2名も同じように日本へ向かったのでしょう」
「……目的はこれかな」
畜生道は独房エリアの壁に人体の各々パーツを磔にして描かれた文字を見上げる。
「fingerman」
身の毛もよだつ狂気で書かれた文字。
それが示すものをわからない者はこの場にはいなかった。
後日、日本に戻った畜生道はエージェント室にこのことを報告した。
それから数日もしないうちに日本へ入国したと思われる死刑囚たちの足取りがつかめて来た。
「先日、日本で変死体がいくつか発見された。関西圏に集中している」
目玉をくりぬかれた8人の女性の遺体。
小学校通学路に陳列された脳みそだけ抜かれた遺体。
途方もない腕力で四肢を引き千切られた遺体。
顔を腐食性の薬剤で溶かされた女子高生の遺体。
「どれもこれも尋常の術じゃ難易度の高い殺しだ。その多くが例の死刑囚4人が得意としたスキルによる殺傷法と近しい。時期から考えてまず間違いなくタケノコが逃がしたという死刑囚たちだろう」
エージェントマスターは険しい顔で変死体の写真がファイルされた調査報告書をそっと閉じる。
キリっとした表情で畜生道を見やる。
「タケノコはどうしてわざわざ死刑囚なぞを解き放ったんだろうね。数字だけで考慮してもAランク第10位の探索者を仕留めるためには力不足だと思うけどね」
「わからん。ただ、あるいはこれが関係しているのかもしれない」
「これは……」
畜生道は目を見張る。
そこにはダンジョン財団と敵対している特大級の要注意団体の情報が載っていた。
「『魔界結社オーライア・デュポン』。またずいぶんデカい名前が動いたね」
『魔界結社オーライア・デュポン』──要注意団体にもし格付けがあるとしたら間違いなく最大級の危険と判断される組織である。もし『顔のない男』をSランクとした場合、その脅威はS+ランクと形容しても過剰ではない。
「先日、魔界結社の構成員と思わしき危険人物『
「能力を強化。この前の剣牢会でもそんな調査報告があがってたけど」
畜生道は『剣牢会』の剣牢・白夜を尋問した時のことを思いだす。
「それだけじゃない。ダブルダンジョンで暴れてくれた『銀色』と『暗黒』の信徒たち。やつらもAランク探索者に匹敵する、あるいは上回るほどの超人的なチカラをもっていた。近年の要注意団体の戦闘員の能力の飛躍的な上昇には裏があるとされてきた」
これまでダンジョン財団が数多の危険思想を掲げる団体やら崩壊論者を抑え込んでこれた背景には、ダンジョン財団だけが大規模に、合法的にダンジョンと言うある種の人間兵器育成場を利用することができ、大量の超人を持っていたからという部分も少なからずあった。
そのパワーバランスが崩れれば、ダンジョン財団は『魔界結社オーライア・デュポン』はじめ『顔のない男』などの超級の犯罪組織および犯罪者を抑えられなくなってしまう。
そのためダンジョン財団はこの近年の傾向を大変に危険視している。
「『混血の軛』は能力者を強化することができる。直接Dレベルに干渉するほどのものか、スキルが強力になるのか、具体的にはわからないが」
「それじゃあ、あくまで探索者にかなうわけなかった死刑囚たちはその『混血の軛』によって強化されて、指男を殺しうるだけの戦力になっているってことかな」
「そのとおりだ」
「なんで指男なんだろうね」
「さてな。だが、確かに今年に入ってからの指男はセンセーショナルな印象をダンジョン界隈に与えて来た。そのせいでタケノコの興味を引いてしまったのかもしれない。やつらは指男をどうにかするつもりだ。そしてその手段に死刑囚を投入してきたとなると、その結末は推測するまでもない。指男は殺される」
エージェントマスターは厳かな表情で言い切った。
畜生道は目をしばたたかせ、フっと得意な表情になる。
「室長、なにか忘れてると思うんだよね」
「なに?」
「指男には餓鬼道お姉様がついてるんだよ」
「っ!」
「餓鬼道お姉様が死刑囚ごときに、対象の暗殺を許すわけがないよね」
「た、たしかに……あのスーパーエリートエージェントがミッション失敗をするわけがない。それはつまり、絶対に指男は死なないということ……? いや、しかし、相手はあのタケノコが送り込んだ魔界結社の構成員と凶悪な死刑囚」
エージェントマスターは頭を悩ませる。
先日また更新された指男の調査報告書をとりだして考察の材料にする。
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JPN Aランク第10位『指男』
【基本情報】
性別男、年齢不明、住所不明、経歴不明、国籍不明、能力不明。
ダンジョン財団のデータベースにも一切の情報無し。
4カ月ほど前にポンと現われ、驚異的な速度で昇級、現在Aランク。
先日のダブルダンジョン事件ではアルコンダンジョンとクラス4ダンジョンの二つをひとりで攻略したとさえ言われている。
また現在攻略中のクラス5ダンジョンでは大量の眷属モンスターを動員し、そのほとんどを彼一人の能力で攻略しているとされる。
【人物像】
冷酷無比で、自分にも他人にもストイックである。
自身の正体が暴かれるのをひと一倍に嫌う。秘密を探るものは殺される。
己を鍛え、高め続け、貪欲に成長し、人類を浄化し、新しい文明を築こうとしているレベルの計画を遂行しているとされる。
猟奇的な道楽趣味をもっており、人間を何度も殺し、経験値を搾って遊ぶともされる。
災害地域では逃げ遅れた市民相手に巨大なフレンチブルドッグの頭を胴体から引き千切って見せて恐怖におののく姿をニチャっとした笑みで楽しむ。とりわけ幼女を見る眼差しは粘度を増す。つまり生粋のロリコン。
【能力】
IQ420。24ヵ国語を操るとされる。
あらゆる文化圏に侵入し、何者にもなれるらしく、世界各地で目撃情報があるが、そのすべてが食い違っている意味不明の存在。
パチン、パチン、パチン、っと特徴的な指パッチンの音とともに、あらゆる敵をただ一回指を鳴らすだけで滅ぼすとされる。
黄金の剣をふりまわすとの噂が広がっている。指男は剣をひとふりするだけで京都の町を破壊した。京都が壊れているのはだいたい指男のせい。
また重大な安全保障に関わる『黒き指先の騎士団』なる軍事力を保有している模様。その陸上戦力規模は20億。
【重要証言】
「彼の正体を探ってはいけない……っ、殺されるぞ……悪い事は言わない、やめておけ……」(元・敏腕記者)
「駅前でpower?とたずねられました……あれは悪魔的な力との契約を持ち掛けられていたのかもしれません……とても恐ろしい体験でした……」(群馬県、某部族代表)
「やつは男でも喰っちまうんだ……俺は、あとすこしで掘られるところだった……知ってるかい、あんた、やつのイチモツは黒くてガチガチじゃないんだぜ。白くてふわふわなんだ──」(メタル柴犬クラブ、構成員)
「彼の優しく、それでいて非常に聡明な探索者さんですね」(財団受付嬢)
「あの男は鳥に厳しいちー。動物愛護団体に訴えるべきちー」(野生の小鳥)
「やつの通ったダンジョンはすべて消し炭に変わる」(Sランク探索者『トランプマン』)
「彼は軍隊をもっています。そしてそれをいつでも動かせます」(研究職、20代)
「交換こがえしを使う相当な交換この使い手です! 信じられません!」(修羅道)
「彼は無類の勝負師です。かれは指先一つで100%の敗北を100%の勝利に出来るのです」(Aランク探索者『花粉ファイター』)
【備考】
彼に敵意を向けられれば何人も生きて帰ることない。それが彼が冷酷無比の狩人と呼ばれる由縁である。
指男はいつだって狩る側にいる。その正体に近づくことはできない。
夜の闇を恐れよ、指男が来る。彼はいつだって見ているのだ。
決して興味本位で彼に近づいてはいけない。後悔したくなければ。
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日々エージェントGこと餓鬼道から送られてくる報告書はアップデートされ、いまではそれなりに人物像を把握できるようになった。
エージェントマスターの考えでは「危害さえ加えなければ心強い探索者」という認識である。ゆえに守るため人材を動かすことにした。
「エージェントGを疑うわけではないが、もしものことも考えておく必要がある。指男はそれだけの貢献をしてきた。『
「……了解」
畜生道はすこし抵抗がありそうながらも、しぶしぶ承諾した。
ダンジョン財団総務部エージェント課には”スキル狩り”がいる。
スキル狩りは言葉の通り、スキルを持つ者すなわちスキルホルダーを狩り殺すための言うなれば殺し屋である。その対象は探索者かもしれないし、今回のように脱獄死刑囚かもしれない。警察やら自衛隊やら、そのほかでは対応が難しい者どもをどうにかするのがスキル狩りの仕事である。
『
畜生道はエージェントであると同時に『
1時間後、今回指男の護衛にあたるブラックオーダーはミーティングを行うことになった。メンバーは3名だ。
暗い部屋、エージェントマスターと3名はホログラムで表示される殺害対象と、護衛対象をそれぞれ確認する。とはいえ、指男の人相は共有不可能なので人物像だけの提供になるが。
「君たちの働きに期待している」
ミーティングが終わりブラックオーダーは解き放たれた。
出動が決断されてから、わずか1時間30分後のことであった。
──赤木英雄の視点
はい、というわけでダンジョンボスの部屋発見です。
相変わらず素晴らしい連帯行動で黒い指先達はボス部屋前にたどりついてました。
でもなんだか人数が少ないような気がします。
「ちーちーちー(訳:大変ちー、きっと道中で酷いダメージを受けて消滅してしまったに違いないちー!)」
「きゅっきゅっ(訳:それはないと思われるっきゅ。指先達は低くてもDレベル37っきゅ。連帯をもっている以上、ダンジョンモンスターがどれだけ束になってかかろうとも1匹とて倒すことは難しいはずっきゅ)」
「ちーちーちー(訳:超後輩は甘いちー。ダンジョンには徘徊ボスが存在するちー。黒い指先達がやられる可能性は大いにあるちー!)」
ポケット間で活発な議論が交わされております。
ちょっと数えてみようか。にーしーろーやーと。にーしー──
「──42匹しかいないですね。ぎぃさん、本当にみんなやられちゃったんですか?」
「ぎぃ(訳:2ギルドだけ攻略にあたらせ、残りの3ギルドは経験値とクリスタルを回収するためにうえの階層を巡回させたり、浅い階層で危なげな探索者パーティを助けさせたりしてます)」
「人助けで口コミ評判が広まれば、黒い指先達に対する印象もよくなるかもしれないですね」
ぎぃさんの鮮やかな手腕に、いえ、触手腕に誰も気づかないうちに危機感を削がれていくのでしょう。やっぱり人間はなめくじに支配される運命なのかな。
「まあ、とりあえずマップを記録して、帰還しますか」
「ちーちーちー(訳:ボスをさっさと倒して経験値をひとりじめするちー?)」
「それもいいんですけど、ジウさんに確認とりたいので」
「ちーちー(訳:英雄も大人になったちー……前までならノリと勢いで扉を開けていたはずなのに……)」
みんないつかは大人になるものだ。
なりたくなくてもね。
『黒い指先達』への命令をボス部屋発見から資源回収へ切り替えて、40階層探索へもどってもらい、俺たちはターミナル転移駅から地上へ帰還、マップを財団アプリでシェアして本ダンジョンの最終目標発見報告をする。
ついでになにか投稿しようか。
『ボス部屋発見』とかでいいかな。
10分後くらいに確認してみると、あっという間に『拡散 2,123 いいね! 40,749』となっていた。こういうの見ると指男のネームバリューを再認識する。
キャンプに戻るとすっかり外は暗くなっていた。
このまま旅館まで歩いて戻る。
「お前が指男か」
ん? なんでしょう。
虚ろな眼差しの男が暗い路地の影からでてきました。
「ああ、間違いない、その顔だよ。リストに載ってたとおりの顔だ」
「その顔……?」
おかしな話だ。
俺の顔は世のどこにも出回っていないのに。
なんか怪しい野郎だな。
「私の名はブレイン。皆はミスター・ブレインと呼ぶ、つい先日、日本についたばかりでね──」
言いながらミスター・ブレインを名乗る不審者は服を脱いで、全裸になると、笑いながら力み始めた。皮膚の下がむくむくと蠢き肥大化がはじまり、やがて身長2m近くまでデカくなる。
変質する露出狂の背後から、見覚えのある怪物が姿をあらわす。
笑顔が縫い付けられたいつかの人造人間だ。
「あー、お前、剣牢会の残党ってことか」
「君の脳はどんな形をしてるのかな、ねえ、教えてくれないか?」
「嫌だ。エクスカリバー」
指を2回鳴らす。
人造人間ごと消し炭にする。
後に残るのはひび割れた地面だけだ。
かなり威力を抑えて地面にクレーターを作らないように気をつけたので被害は最小限。
「露出とかやめろよな。みんなの迷惑だろう」
「ぎぃ(訳:もしかして、いまのって修羅道さんが言っていた怪しい奴なのでは……?)」
「なるほど。……まあ、もう悪は滅んだので」
本当におかしな野郎でしたね。
はやく旅館に帰りましょう。ジウさんにボス部屋見つけたって報告しないと。
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