次元斬と16万連打




 ダンジョン31階層へ戻って来た。

 ノルンで狩場に立ち寄ると、すぐにモンスターを発見した。

 ダンジョン・フレンチブルドッグ。

 体長は像とかと比較したほうがいいくらいにデカくなっている。モンスターの肥大化に応じて通路の広さも増しているので、通路にぎゅうぎゅうということはないが、それでもノルンが4m級の化け猫であることを忘れてしまうほどのスケール感だ。


「とりあえずまずは体力測定からか」


 すっかり恒例となった体力測定。

 古都式身体測定法。英語ではクレイジー・ジャパニーズスタイルと言う。

 この方式の体力測定は極めてシンプルで、ATK10,000:HP1を連続して叩きこみ、燃えカスも残らぬよう焼き殺すことを至上としてしている。家庭でも簡単にできるのでぜひ真似してみてほしい。

 なお、いにしえの昔より、京都の小中学校における体力測定で、この方式が採用されているのはとても有名な話だ。古事記にも載っている。


 指を鳴らす。

 フレンチブルドッグはブォン──っと高速移動して避けようとしてくる。

 だが、俺のエイムはすでにガバエイム矯正日刊により仕上げられているのだ。

 スキル頼りのオートエイムを使わずとも、連続してフレンチブルドッグを爆破できる。だが、敵も31階層を徘徊するフレンチ界のブルドッグ。?。


 ATK10,000程度もろともせずスーパーアーマーの高耐久力を生かして突っ込んでくる。


「にゃん♪」


 接近してきたフレンチブルドッグを猫パンチで跳ね返すノルン。

 指パッチンを刻んでいく。


 ──25回、26回、27回、28回、29回


 やがて50回目の爆破を終えると、ようやくフレンチブルドッグは燃えカスとなった。ATK10,000が50回で500,000HP程度が31階層フレンチブルドッグの耐久力ということになる。


「結構硬くなってきたな」


 スキル『フィンガースナップLv7』を『クトルニアの指輪』で物質化して、黄金のつるぎを握り、設定をATK500,000:HP50にあわせておく。

 これで一振りで消し炭になる計算だ。


「さてと」


 調整を終え、俺は31階層を片っ端から消し炭に変えていった。

 










 ──ダンジョン侵入より480時間(20日)



 ダンジョン33階層までやってきました。

 恐るべきことに30階層を越えてから耐久力のあがり幅が飛躍的に伸びてます。

 俺が自前で用意した消し炭リストによるとこんな感じ。


 28階、43000

 29階、47000

 30階、10万

 31階、50万

 32階、100万

 33階、200万

 

 そう。この階層200万HPフレンチブルドッグしかいません。

 なかなか楽しませてくれる。


 ちなみにレベルも2あがっていまはレベル294です。

 そして本日のデイリーミッション完了しました。


 ─────────────────

  ★デイリーミッション★

  毎日コツコツ頑張ろうっ!

   『日刊剣術 8』


 剣でキル 3,000/3,000


 ★本日のデイリーミッション達成っ!★

 報酬 スキル『次元斬』


 継続日数:158日目 

 コツコツランク:プラチナ 倍率10.0倍

 ──────────────────


 また新しいスキルだ。


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 赤木英雄

 レベル294

 HP 1,512,120/1,524,900

 MP 295,,120/297,000


 スキル

 『フィンガースナップ Lv7』

 『恐怖症候群 Lv10』

 『一撃 Lv10』

 『鋼の精神』

 『確率の時間 コイン Lv2』

 『スーパーメタル特攻 Lv8』

 『蒼い胎動 Lv4』

 『黒沼の断絶者』

 『超捕獲家 Lv4』

 『最後まで共に』

 『銀の盾 Lv9』

 『活人剣 Lv6』

 『召喚術──深淵の石像』

 『二連斬り Lv5』

 『突き Lv5』

 『ガード Lv4』

 『斬撃 Lv4』

 『受け流し Lv2』

 『次元斬』


 装備品

 『クトルニアの指輪』G6

 『ムゲンハイール ver7.5』G5

 『アドルフェンの聖骸布 Lv6』G5

 『蒼い血 Lv8』G5

 『選ばれし者の証 Lv6』G5

 『メタルトラップルーム Lv4』G5

 『迷宮の攻略家』G4

 『血塗れの同志』G4


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 ちなみにいろいろスキルが増えてます。

 全部デイリーくんにもらいました。

 

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 『ガード Lv4』

 防御こそ最大の攻撃

 耐え凌げば好機は訪れる

 武器の耐久値を減らしダメージをカットする

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 ───────────────────

 『斬撃 Lv4』

 斬ることの極意

 斬撃攻撃に2.25倍の補正をかける

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 ───────────────────

 『受け流し Lv2』

 真の一流は衝突しない

 攻撃を受け流す際のハンドワークを補強

 ───────────────────


 そうとう俺のことを剣士にしたいご様子。

 でもね、結局、大爆発起こしてるんです。

 気が付いたら爆破してるんです。

 なぜならそこにパワーがあるから。君はどうだい。剣術くん。

 そこにパワーはあるかい。


 で、なに。今度は。

 スキル『次元斬』くんですか。

 

 ───────────────────

 『次元斬』

 異次元の剣聖アガサの見出した剣

 無限にある奥義、そのひとつ

 斬撃を時空の隙間に隠し、遠隔を切断する

 距離に応じて消費MPは増加する

 ───────────────────


「ハッピーさん、ちょっときゅうり持ってそこに立っててください」

「もしかして私に試す気?」

「大丈夫。信じてください」


 剣を取りだし、きゅうりで試し斬り。なおきゅうりは拾った。


 ハッピーさんの持つきゅうりを狙い斬る。

 間合いは5mほど離れているので剣身は届いていない。

 しかし、きゅうりは何の抵抗もなくシュパッと斬れて落ちた。

 

「すご……っ、そんなことできるの?!」

「みたいですね」

「いや、みたいですね、じゃなくて……本当になんでも使えるんだね、指男って」

「デイリーミッションのおかげですよ」

「(デイリーミッション……日々励み続けろってことだね。私も頑張らないと)」


 『次元斬』なかなかオシャンティーなスキルだ。

 でもね、やっぱり、採用基準は変わらないんだ。

 そこにパワーはあるんか?  ない? 不採用。














 ──ダンジョン侵入より648時間(27日)


 朝起きて顔を洗う。

 毎朝の指パッチンとコイン──各100回×3セット──、それと軽い筋トレメニュー──腕立て、腹筋、スクワット、各々100回×3セット──をこなし、本日のデイリーミッションを確認する。

 

 ─────────────────

  ★デイリーミッション★

  毎日コツコツ頑張ろうっ!

  『日刊筋トレ:腕立て伏せ 5』


 腕立て伏せ 0/20,000


 継続日数:164日目 

 コツコツランク:プラチナ 倍率10.0倍

 ──────────────────

 

 おや。ついに剣術デイリーが終わった。

 腕立て2万回ね。はいはい。


 サッと終わらせ、本日の報酬を受け取る。


 ─────────────────

  ★デイリーミッション★

  毎日コツコツ頑張ろうっ!

  『日刊筋トレ:腕立て伏せ 5』


 腕立て伏せ 20,000/20,000


 ★本日のデイリーミッション達成っ!★

 報酬 『経験値ボタン』


 継続日数:165日目 

 コツコツランク:プラチナ 倍率10.0倍

 ──────────────────

 

 また面白そうなものが来ましたね。

 デイリーウィンドウからPONっと排出されるそれは真っ赤なボタンだ。

 クイズ番組では恐ろしい形相で人々がこれを叩くことで有名だ。


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『経験値ボタン』

 異次元の匠モートンの作品

 ボタンを押すたびに1経験値手に入る

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 見たところ『経験値パイプオルガン』と同じ方式かな。

 獲得量は概算で少なそうに思える。


 旅館の自室から”扉”を使ってターミナル転移駅へ移動した。

 

「おはよう、指男。それなに?」


 ターミナル転移駅でハッピーさんと遭遇し、経験値ボタンについてたずねられたので「新しきインフレ」ですとだけ返しておく。

 ドクターのところへ行くといったら「私も行く」と付いてきたので、2人で厄災島の厄災研究所へやってきました。

 

 遠くから聞こえてくるのはチャイコフスキー『くるみ割り人形』より花のワルツ。

 春の陽気を感じさせるようなリズムに朝を優雅な気持ちにさせてもらいながら、マッドサイエンティストの巣食う魔窟『研究開発棟』へとやってきた。

 

「ドクターの場所がわかるの?」

「あの人はいつも『研究開発棟』にいるんですよ。ちなみに李娜のほうは『地下耐久実験場』です。だいたいいつもモンスターを戦わせて遊んでます」

「ふーん可愛いところあるじゃん、あのちびっこ」


 今の会話に可愛いところあったかなぁ。


「やあ、指男にハッピーちゃん。ダンジョン攻略は順調かのう?」

「いま35階層まで潜ったところです。攻略まであと1週間ってところですかね」

「はは、流石じゃのう。規格外のクラス5を1カ月で攻略するとは恐れ入るのう」

「それで今日はこいつを見て欲しくて」

「ほう、『経験値ボタン』とな」


 ドクターは3回ポチポチポチと押す。

 光の粒子が3粒出て来くる。


「ごくシンプルな仕組みの異常物質じゃが。押すたびに経験値エネルギーを生み出しているとなると驚異的じゃな」

「それ量産できますか」

「試してみよう」

「ありがとうございます」


 『経験値ボタン』をドクターにあずけた。










 その夜、再び厄災研究所へ戻って研究開発棟をたずねた。

 なおハッピーさんはやる気に満ちていて今夜は夜通し潜るらしいです。

 探索者っていうのはわりとやる気にムラがある。

 というか、いつでも帰って快適な場所で眠ってご飯食べれるってわかってると、集中力を長時間維持するのは逆に難しい。俺も以前ほど無理せずヘルシーダンジョン生活に切り替えたしね。

 

「やあ指男、待っておったぞ」


 言ってドクターが真っ赤なボタンを投げつけて来る。

 キャッチ。ん。すこし大きくなってる?


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『経験値ボタン Lv5』

 異次元の匠モートンの作品

 ボタンを押すたびに10経験値手に入る

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「ムゲンハイールを使って進化済みじゃ。ほれ注文通りとりあえず二つに増やしておいたぞ」

「流石はドクター。未知の異常物質でも構造を理解して瞬時に再現するとは」

「いや、なんかわからんけど、いじってたら二つに増えてたんじゃ。原理は1mmも理解しとらん」

 

 もうそろ科学者やめちまえよ。


「さてそれじゃあ使ってみますか」

「こうやって利用するのが好ましいじゃろう」


 ドクターは『貯蓄ライター ver2.0』を机のうえにおいて、その隣に『経験値ボタン Lv5』を添える。猛烈に連打して10秒後。


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 『貯蓄ライターver2.0』

 経験値を貯蓄できる

 510/9,999億9,999万9,999

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「ぜはぁ、ぜはぁ、ぜはぁ! これがわしのベストじゃ!」

「毎秒5連打ってところですか。人間にしては上出来ですね」

「それはもはや人間のセリフじゃないんだが」

「名人は16連打するものです。ちょっと貸してください」


 ドクターから『経験値ボタン』をひったくり、『貯蓄ライターver2.0』を一度経験値中央銀行へ送金してメーターを0に戻す。

 俺は息を短く吐き捨て、高速で連打した。


 ────────────────────

 『貯蓄ライターver2.0』

 経験値を貯蓄できる

 16万/9,999億9,999万9,999

 ────────────────────


「ッ!? ば、馬鹿な!? 10秒で16,000連打じゃと! 信じられん!!」

「ふぅ、ざっとこんなところですかね」

 

 探索者の能力を舐めてはいけない。

 ふふ、しかして、なかなかの記録ではないだろうか。

 昔は連打を要求されるゲームが多かったが、思えば兄貴と対戦していて負けたことは1度もなかった気がする。連打、自信あります。


 もしかしたらこれなら修羅道さんにも勝てるんじゃないか?

 現状、バスケットボール、バトルドーム、綱引きで敗北を重ねている。

 だが今度は俺のフィールドだ。これで勝つる。


「赤木さん、こんばんわ。今日もお疲れ様です」


 ということで、ダンジョンキャンプにやってきました。

 

「修羅道さん、勝負しましょう」

「ふっふっふ、そろそろ新しい戦いをもってくる頃だと思っていましたよ」

「減らず口を……すぐに得意げな顔できないようにさせてあげますよ」


 言って『経験値ボタン Lv5』と『貯蓄ライター ver2.0』を置く。


「わあ、なんだかおもしろい物を持ってきましたね。あんまり連打とかはしたことないですけど……いいでしょう、受けて立ちます!」


 ふふ、どうやら修羅道さんは連打初心者。

 この勝負もらった。


「ていやーっ!」


 かあいい声でやー!っと頑張る修羅道さん。

 瞬間、突風が吹きすさび、天が吼え、大地が震えた。


 ────────────────────

 『貯蓄ライターver2.0』

 経験値を貯蓄できる

 160万/9,999億9,999万9,999

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「思ったより難しいですね!」

「っ」


 ば、馬鹿な!? 160万?!


「もうちょっと時間を長くすれば記録が伸びそうです。試しに10秒での記録で勝負しませんか、赤木さん」

「ふ、ふぅん、い、いや、やめておきましょう。ルールは、ルールです」


 まずい。

 この人、1秒での勝負だと勘違いしている。

 ということは秒間16万連打。俺の100倍以上の連打速度。連打界の怪物現る。


「そうですか、残念です、赤木さんをけちょんけちょんにしてあげちゃおうと思ったんですが……あっ、そういえば、赤木さんの記録を聞いてませんでしたけどいくつなんですか?」

「…………1秒部門だと1,600回ですね」

「なんだ! わたしよりずっと少ないですね! よかったです!」


 非常に楽しげな修羅道さんは勝者の特権を利用してスタバへと俺を連行した。なんか名前の高い飲み物を奢ることになったが修羅道さんと一緒に過ごせて楽しかったので実質無料。


 しかし、今回も俺の負けか。

 またなにか勝てそうなの探さないと……とりあえず連打系はダメっと。ん? そういえば前も連打で負けたような……。

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