剣牢 白夜



 どうも赤木英雄です。

 磁石野郎を倒したら、新しいスキルが手に入りました。

 貯蓄ライターを起動し忘れてつい経験値横領してしまったので、レベルアップもしました。ステータスを確認しようと思います。

 え? わざと? まさかね。違いますよ。

 ……あの鳥には内緒にしますけどね。


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 赤木英雄

 レベル286

 HP 808,516/1,092,200

 MP 156,140/215,000


 スキル

 『フィンガースナップ Lv7』

 『恐怖症候群 Lv10』

 『一撃 Lv10』

 『鋼の精神』

 『確率の時間 コイン Lv2』

 『スーパーメタル特攻 Lv8』

 『蒼い胎動 Lv4』

 『黒沼の断絶者』

 『超捕獲家 Lv4』

 『最後まで共に』

 『銀の盾 Lv9』

 『活人剣』


 装備品

 『クトルニアの指輪』G6

 『ムゲンハイール ver7.5』G5

 『アドルフェンの聖骸布 Lv6』G5

 『蒼い血 Lv8』G5

 『選ばれし者の証 Lv6』G5

 『メタルトラップルーム Lv6』G5

 『夢の跡』G4

 『迷宮の攻略家』G4

 『血塗れの同志』G4


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 1レベルあがっているので数千億単位で経験値手には入ってるかな?

 いよいよ、HPが100万まで登ってきましたよ。


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 『活人剣』

 人を生かす剣の道

 剣を達人のように扱うことができる

 熟練度 3/10,000

 解放条件 悪を斬り多くを救う

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 新しいスキルですね。

 絶剣を使って倒したからかな?


 剣を達人のように扱うことができる、か。

 ちょっと振ってみる。ん? なるほど。

 以前より術理がわかる。

 剣の振り方が身に着いたということかな。


 熟練度は上げていくほどに、良い事あるのかな?

 気になるので、剣を使える時は積極的に使ってみますかね。

 

「ぎぃ(訳:魔女の枯指。どうやら量産が行われているようです)」

「スキルを封印する異常物質を? そんな危険なものつくれるんですか?」

「ぎぃ(訳:異常物質を開発することは恐ろしい科学力を要するようですが、ごくたまにそれを可能にする人にもいます。どこかのドクターがそういう稀有な才能をお持ちですね)」

「どこかのドクター? どこのドクターですか?」


 幸いにも封印をかけてきた指を破壊すればスキルはまた使えるようになるみたいです。

 最近はやたらスキルを封印して外道ビートをしてくる輩が多いので、その対策は必要。物騒な世の中です。いざという時に剣を触れるように練習しとかないと。


 ステータスの確認を終えて、怪我人のもとへ。


「花粉ファイターさん、ちょっとチクっとしますよ」


 異常物質『蒼い血 Lv8』を雑に首にぶっさす。

 花粉ファイターはビクンビクンと痙攣しながら苦痛の声をあげた。


 普通の人に使うとやっぱり苦しそうにする。

 不思議だ。こんなにも気持ちいのに。(刺す)

 あああああ~生を実感する~ッ!!


「ぎぃ(訳:主人が痙攣イキしてるのでここは私が。後輩、花粉ファイターをシェルターの方へ連れていてあげてください。回復まですこし時間がかかるでしょう。フレンチブルドッグが徘徊していて、こんなところで寝ていては危険ですから)」

「きゅきゅ!(訳:しかと受けたまわったっきゅ! 任せるっきゅ、蟲殿!)」


 ハリネズミさんは鎧と翼を着て、バランスボールサイズに膨らむと花粉ファイターは抱えて空へ飛びあがった。


「きゅきゅ(訳:ささ、しっかりと我の胸に埋まるっきゅよ。優しくしてあげるっきゅ)」


 トリップから戻って

 さて、それじゃあ、ダンジョンブレイクを潰しますか。








 

 ダンジョン・フレンチブルドッグを消し炭にかえながら流れを遡っていくと、清水寺の方へやってきた。懐かしい。昔、ここにも修学旅行で来たっけ。


「いや~本当に懐かしいですね~、あっ、ちょっと退いてくださいね~消し炭ですよ~」

「ぎぃ(訳:町を壊しながら消し炭が量産されていきます。これは損害賠償を覚悟しないといけないかもです)」

「え……俺が賠償ですか?」


 ブルドッグカリバーして気持ち良くなってたらまさかも訴訟案件。


「ぎぃ(訳:不要な破壊は気をつけたほうがいいと言う意味ですよ)」


 まだ賠償は確定じゃない。

 まだ間に合う。


 思えばここダンジョンじゃないんだ。

 いつもの感覚でカリバーしてたら地面が穴ぼこだらけになっちゃってる。

 そっか、これ全部直すのにもお金がかかるのか……。


「わんわん!」

「ぎぃ(訳:あ、ダンジョン・フレンチブルドッグが)」

「うるせえ、このクソ犬! 誰のせいで賠償の危機に瀕してると思ってんだ! エクスカリバー!」

「キャイーン!?」


 力一杯にぶん殴り、爆散させて、光の粒子へ還す。

 

「ぎぃ(訳:憐れブルドッグ)」

「ここからは絶拳エクスカリバーのお時間です」

「ぎぃ(訳:ただのパンチでは?)」


 拳でフレンチブルドッグを爆散させていく。


「い、いやあ! た、助けてー!!」


 むっ! 助けを求める市民の声がする!


 若い女性とちいさな女の子の親子へ襲いかかる4m級のフレンチブルドッグを発見。


「エクスカリバー!」


 背後からがしっと掴み、首をひきちぎって破壊する。


「う、うあああ! ママー! 恐いよー!!」」

「やあ、大丈夫ですか? シェルターはあっちですよ」

「あ、あわわ、ど、どうも……っ」

「連れて行ってあげましょうか?」

「ひえええ! け、結構です! さ、はやく行くわよ!」


 親切のつもりだったんだけど。

 なにか恐がらせてしまったかな?

 引き千切ったデカいブルドッグの頭を身体はそこら辺に放り捨てときます。


「さてと。清水寺が近づいてきたけど、あそこにがダンジョンの大本かな……む?」

 

 建物の影からふらりっと人影があらわれた。

 男だ。二枚目な風貌で手には日本刀らしき得物を持っている。

 京都観光を楽しんでいるようには見えない。


 男は冷たい眼差しをしていた。

 敵意、あるいは殺意を宿した目であった。


「財団の犬がよくもまあ元気に暴れまわってくれている。おかげでダンジョンモンスターたちは殲滅されかけている。これではエリア01を満たすこともままならない」


 男はゆっくりを近寄って来る。


「あんたが剣牢会の親玉か」

「ほう。すでに我々の正体を嗅ぎつけていたか」


 言って刀へ手を掛ける。


「俺は白夜という者だ。大いなる目的のために生きている。お前は何者だ。こんな大規模戦力を動かせる探索者など聞いたことが無いが」

「指男という者だ。経験値のために生きている」

「指男だと? ほう……なるほど、都市伝説の怪人が、まさか偶然にこんな舞台にあがってくるとはな。ともすれば、これは運命と言えよう。剣神ヴェルミ・リア、かの剣の乙女が用意してくださった俺への試練であること違いなし」


 抜刀。白刃に冷気が揺れている。

 

 なるほど、こいつが白夜。それじゃあ親玉で確定だな。


「指男、その首、もらい受ける──」










 白夜はフッと短く息を吐き捨て、残像ができるほどの初速を見せた。

 縮地法と呼ばれる古武術に伝わる足抜きと体重移動の術理。

 長年の修練により完全に会得し、いまとなってはダンジョン因子の進化も加わり、人の領域を超えた究極の武を手にいれた。


 まさしく神業。

 指男は白夜の動きにまるで反応できていないのか、棒立ちのままである。


 白夜は明鏡止水の境地にいたり、神速の中にあって、脱力し、最速の踏み込みから、最速の一刀を放った。

 計画を潰してくれた憎き輩へ、わからせの一撃。

 神秘の力に頼り切ったおまえたちとは、積み上げて来た技が努力が違うのだ、と。


 速すぎるあまり空気を押しつぶした。

 刀身はプラズマを纏い、まるでそれ自体が発光しているかのよう。

 いまだかつて避けられたことのない『秘剣 幽世の煌めき』だ。

 閃光の一太刀が肉薄する。

 あと3cmで首を叩き落と────そこで、指男にひょいっと刀身を握られた。


「ッ!?」


 蚊が飛んでいたので掴んでみました。

 それくらいのしぐさで刀を素手で掴み完全に静止させた。

 白夜が顔を赤くして押しても、引いても、刀身はビクとも動かない。


「ば、ばかな……っ、っ、ぐぅ、うう! 離せ!」


 指男は握る手に力をこめる。

 瞬間、刀身がくだけちった。

 ガラスの破片のように儚くハラハラと舞い落ちる。


 白夜の家系に受け継がれし『伝説の妖刀 雪椿ゆきつばき』の最後であった。

 

「……あり、えない、ありぇな、ぃ……おまえ……なん、だ……その力は……っ。どうやってこれほどの……っ」

「デイリーミッション」

「…………は?」


 指男は白夜をぶん殴る。

 白夜の意識は一瞬で真っ白になった。

 この日またひとつ要注意団体が壊滅した。

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