要注意団体『剣牢会』
奈良から京都への電車でゆらゆら行こうと思いましたが、ダンジョンブレイクによって第一種緊急事態宣言が財団より発令されてたせいで、電車動いてなかったです。
「どうしますか」
「きゅきゅっ(訳:普通に走ればよいと思うっきゅ、英雄殿)」
「ぎぃ(訳:たぶん電車より速いと思いますよ)」
ということで、徒歩で来た。
京都。中学生の頃の時の修学旅行依頼です。
家族と、それとドクターと
「にゃお」
「ん、どうしたんですか、ノルウェーの猫又さん」
「にゃお~」
ノルウェーの猫又さんがなにかに引き寄せられるように走りだした。
まさかノルウェーの猫又に備わった正義の律動が彼女を突き動かすと言うのか。
伏見稲荷大社へとやってきた。
朱色の鳥居が延々とつづく幻想的な光景が有名ですね。
ノルウェーの猫又になんとなくついていく。
あ、なんか、見覚えのある人を発見。
黒い髪。切れ長の瞳。そうそう、確か『ブラッドリー』さんね。
俺のことが嫌いな、ね。よく覚えてる。だって俺の事嫌いなんだもん。
俺の名前呼んでますね。
はいはい、今行きますよっと。
「ど、どうして、きさま、が、ここに……」
「? 名前を呼ばれたので」
だって今呼んでたじゃん。
ん、なんか蒼い肌したデカい人が……って顔恐すぎイ!?
なんだこのバケモノは。
「ゆびおと、こ、やつに、気を付けろ、あれは……バケモノ、だ」
いや、見ればわかるわ。
超重傷で胸からあばら骨でちゃってるんだから喋るなって。
でもさ、さっきからノルウェーの猫又さんが猫パンチでボコボコにしてるんよね。
このまま勝てるんじゃないかな。
ちょっと傍観。
ノルウェーの猫又さんとカオナシ青肌大男は、文化遺産を保護する意識などまるでみせず鳥居を破壊しまくって激しい戦いをくりひろげ、結果、ノルウェーの猫又さんが最後に勝った。ノルウェーの猫又さん、強い(確信)
「ひえ! 嘘だろ……! 人造人間が負けただと……!?」
鉄パイプ持った柄の悪い男を発見。
目が合った。あ、逃げ出した。
「ぎぃさん」
袖に仕込まれていたぎぃさんは俺の意志をくみ取り、触手を伸ばして鉄パイプ野郎の脚を払って転ばせた。
その隙にノルウェーの猫又さんがデカいもっふもっふの身体で逃走経路を塞いだ。
「あんた誰です?」
「て、てめえこそ、一体誰だ……ッ! 人造人間を倒せる探索者なんざ俺らぁ聞いてねぇぞッ!」
「指男。で、あんたは。その血の付いたパイプはなんです」
「ゆ、ゆびおとこ…………指男って、まさか、あの……っ!?」
背後からブラッドリーがヨタヨタ歩いてやってくる。
さっき『蒼い血 Lv8』を打っておきました。
強力な回復方法ですが、麻薬型よ呼ばれる種類の回復アイテムで、かつ『蒼い血 Lv8』はめちゃめちゃ体への負担が大きいらしいので1日1回が限度らしいです。
俺は身体がおかしくなってるのでたくさん打てますけど。え? ヤク中?
「流石だな……指男……その猫はなんだ」
「新しいペットですよ。ところでこの柄の悪いやつは?」
「クズだ。おそらく今回のダンジョンブレイクは人為的に引き起こされてる。その男は首謀者の一味に加担してる野郎だ」
「ふむ。悪い奴ですか。ノルウェーの猫又さん、ちょっとそこどいてください」
「にゃあ♪」
俺は拳を固め、男をぶん殴った。
ずっと向こうへ吹っ飛び、鳥居をへし折って外路まで飛んでいく。
「指男、お前……」
「うーん気持ちいい。悪党はぶん殴っても誰にも怒られないからいいですよね」
モンスターを外界に解き放つ最悪の災害。
それを意図的に引き起こす下郎に慈悲などあるものか。
「だが、指男、殺してはだめだ。やつからは話を聞く必要がある」
「大丈夫です。もう尋問の準備は済ませてます」
殴ると同時にぎぃさんの分裂体を仕込んだ。
ほら、顔の形が変形した男が、ゆらゆら歩いて戻って来たでしょ?
「なるほど(指男、ただ者じゃないのはわかっていたが、どうやら対人戦闘の経験、諜報戦の経験も豊かというわけか。まだ若いがその経歴は壮絶を極めている。俺にはわかる。前職は諜報機関の特殊エージェントと言ったところか)」
ブラッドリーさんめっちゃ睨みつけて来るじゃん。
こいつ袖にナメクジ入れてんのキモっとか思われてんのかな。いや、キモイけどさ。
「ブラッドリーさん、質問をお願いできますか。こういうのブラッドリーさんほうが慣れてそうですし」
殺し屋らしいから、たぶん人間を拷問するのも得意という雑な動機でお願いしてます。本当は俺が質問してあんま革新的でない質問くりかえして頭弱いことバレたくないからです。はい、すみません、反省してます。
「俺に質問をしろ、とな(指男の奴、どうやら自分で尋問したら諜報員時代の癖がでてしまうと危惧したようだな。自分の無意識すらも常にリスクのなかに計算している。真のプロフェッショナルというわけか)」
「? なんです、そんなに見てきて」
「お前、相当なプロだな」
「……。まあ、その話はしないでおきましょう(俺が経験値プロなのバレてんじゃん。やっべぇ、もしかして痙攣イキしてんのもバレてる? え? なんで、こわ)」
「(やはりな。俺に勘づかれていることも気づいていると。ここから先に無闇に踏み込めば俺も身が危ない。これ以上は言及はしないでおいたほうがよさそうだな)」
その後、したり顔のブラッドリーさんは質問をいくつかしました。
ブラッドリーさんの尋問は手際良すぎた。
「俺たちゃ財団の妨害を想定し……戦力を整えて今回の儀式にのぞんだ……」
「戦力を整えて? それはあの奇妙なモンスター兵器のことか」
ブラッドリーは動かなくなった遺骸を指さす。
いまはノルウェーの猫又さんはつついて遊んでいる。
めっ、遊ばないの。ばいきんとかついてるかもしれないでしょ。
「あれは白夜さまが連れて来たんだ……どこから連れて来たのかは知らねえ……」
「それじゃあ戦力ってなんのことだ」
「”剣牢”の方たち……財団の探索者を刈るためにおいでなられた超越的能力者のかたたちさ……」
「超越的能力者? ふむ、物騒な輩がいると言う訳か」
わかったことは4つ。
①ダンジョンブレイクは『剣牢会』なる要注意団体によって起こされた
②『剣牢会』はダンジョンボスを世に解き放とうとしている
③リーダーは
④剣牢なる腕利きが3人いる
悪党全員ぶっ飛ばしますか。
と、ここで電話を一本。
「あ、地獄道さんですか? はい。いま京都にいて。……『黒い指先達』なんですけど、一応、5部隊ほどは出撃できる状態でして……はい、はい、そういう意味です。……はい、そうです。そういうことです。おっしゃるとおり……。……はい、わかってます。もちろんです。はい、はーい、了解です。はい」
電話を終える。
「ぎぃさん、『黒い指先達』を呼べますか」
「ぎぃ(訳:彼らをですか?)」
「この場にいる俺たちが動いて、一刻も早くダンジョンブレイクを起こしてるダンジョンのゲートを押さえないといけないでしょう? 地獄道さんには緊急事態につき許可をいただきました」
「ぎぃ(訳:わかりました。そういうことなら確かに免罪符にはなりそうですね)」
俺は”扉”を伏見稲荷大社の本堂近辺に作っておく。
”扉”からぞくぞくと黒沼の怪物たちが現れて、京都の町へと散っていく。
「これ……すべてお前の眷属モンスターなのか……?」
「一応、そういうことになってます」
「……そう、か」
ブラッドリーさん、ちょっと引いてるかな?
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