大いなる遺物 物質を司る『クトルニアの指輪』
おはようございます。
昨日まさかの無人島のオーナーになった赤木英雄です。
これで俺も本格的にセレブの仲間入りでしょう。
プライベートクルーズでプライベートアイランドへプライベートホリデーをプライベートプライベートしたいと思います。
「デイリーミッション」
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★デイリーミッション★
毎日コツコツ頑張ろうっ!
『日刊筋トレ:腕立て伏せ その3』
腕立て伏せをする 0/10,000
継続日数:116日目
コツコツランク:プラチナ 倍率10.0倍
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毎日コツコツ、頑張ろうね。
俺は押し入れの”扉”を使って経験値工場へと入場。
コンテナのなかに布団を敷いて寝ているドクターと娜がまだ寝ているのをちらっと確認。異次元機械の排熱で意外とぬくぬく過ごせるらしいです。
手頃なコンテナのうえに上がって、さっそく腕立て伏せを開始。
巨大な悪が現れた時、俺は負けたくない。
シロッコに殺されかけた時の悔しさを忘れず、俺はゆっくりと全身の負荷を意識して筋肉と対話した。
朝のうちにデイリーミッションを終える。
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★デイリーミッション★
毎日コツコツ頑張ろうっ!
『日刊筋トレ:腕立て伏せ その3』
腕立て伏せをする 10,000/10,000
★本日のデイリーミッション達成っ!★
報酬 『バトルドーム』
継続日数:117日目
コツコツランク:プラチナ 倍率10.0倍
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いや、また『バトルドーム』かよ。
在庫が余ってるから適当な物を送りつけられてるんじゃないでしょうか。
まあお金になるからいいけどさ。
経験値工場を出て、自室へ戻り、シャワーを浴びてさっぱりする。
今日はちょっと予定があるので、はやめに家を出なければならない。
いつもの正装に着替えて、一階に降りてキッチンを物色、まだ麺づくりが余っていたのでお湯を沸かして3分待って3分で食して朝ご飯を終えると、駅へ走って、電車で揺られて、池袋まで進出する。
スマホを見やれば時刻は午前10時ちょっと前。
すこし早いが約束のカフェテリアへと赴こうと思います。
「……。指男さん、こんにちは」
背後から声を掛けられ振りかえる。
どうやら偶然にも待ち合わせ場所につく前に出会ってしまったようだ。
「こんにちは、ジウさん。私服だと印象が変わりますね」
「……。これは秘書制服ですよ」
さっそくワンミスです。
ろくに女の人とプライベートで会うことがないので、ネット記事でデートの時に気を付けるべきことをインプットしたはずなんですけどね。
『ポイント4 着ている服装を褒めよう! 直接褒めるのが恥ずかしかったら間接的にでも言及すると喜ぶかもっ!』。やかましいわ。浅知恵のおかげで反射ダメージを喰らいました。本当にありがとうございました。
「制服だったんですか。どうりでいつも通りよく似合ってる思いました」
ジウさんは修羅道さんと同じく受付嬢である。
ゆえという訳ではないが、ちょっと古めかしい、ゴシックファッション気味な洋服が似合っている。というか見慣れている。
「……。そうですか……? 似合ってますかね……」
「? 当たり前じゃないですか。よく似合ってますよ。それ以外の服装は考えられないくらいです。この世で一番似合ってると言っても過言じゃないです」
「……。そ、そんなに褒められるとは思いませんでした……そうですか……」
ジウさんはちいさな声でボソボソ。
「きゅっきゅっ(訳:我はお腹が空いたっきゅ、はやくご飯が食べたいっきゅ)」
「ハリネズミさんが限界を迎えているので、行きましょうか」
「……。そうですね、すぐそこですし」
池袋駅西部前のコメデス珈琲でハリネズミさんは生クリームたっぷりのシロノワールを注文、俺はコーヒーです。もちろんミルクと砂糖はたっぷり。
「ジウさん、これ返しますね」
「……。『オミヌス・オートマタ』、本当に直してしまうなんて……ありがとうございます、指男さん」
「お礼ならドクターに」
「……。流石はドクターですね。昔から変な方で誰からも相手にされていませんでしたが、不思議と頼りになる方でした。今もその隠された腕前は健在なのですね」
ジウさんはドクターと旧知の仲であるらしい。
「……。さて、では本題に入らせていただきます」
「はい」
ちょっと背筋を伸ばす。
「……。この度、暗黒のアルコンダンジョン含め千葉クラス4ダンジョンを攻略した指男さんへ、その功績を称え、財団から特別な品が送られています」
「ジウさんは今日はそれを渡しに?」
「……。役目のひとつではありますね」
ジウさんはそう言って、俺に黒い小箱を渡してくる。
ブローチかな、と思い開けてみる。
なかには指輪が入っていた。
黄土色の重厚な輝きをもった、どこか古めかしい簡素な品だ。
「ジウさん、もしかしてプロポーズしてますか……?」
「……。まだその段階ではないでしょう」
「ですよね」
「……。こほん。それは『クトルニアの指輪』と呼ばれる
ほーん、すごそう(小並感)
さっそくつけてみよっと。
指輪をはめた瞬間、黄金の炎がぶわっと吹き上がり、陽光の温かなオーラが広がりました。超常的な現象に素直に感動する。
「……。やはり、本来の持ち主は指男さんだったという事ですか……」
「話が見えないんですけど」
「……。その指輪が真に応えるのは本来の持ち主だけとされています。今の黄金のオーラ。指男さんこそが『クトルニアの指輪』の現段階での所有者としてふさわしいようです」
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赤木英雄
レベル272
HP 437,660/487,280
MP 106,420/112,900
スキル
『フィンガースナップ Lv7』
『恐怖症候群 Lv10』
『一撃 Lv10』
『鋼の精神』
『確率の時間 コイン Lv2』
『スーパーメタル特攻 Lv8』
『蒼い胎動 Lv4』
『黒沼の断絶者』
『超捕獲家 Lv4』
『最後まで共に』
『銀の盾 Lv9』
装備品
『アドルフェンの聖骸布 Lv4』G4
『クトルニアの指輪』G6
『蒼い血 Lv5』G4
『選ばれし者の証 Lv4』G4
『迷宮の攻略家』G4
『血塗れの同志』G4
『メタルトラップルーム Lv3』G4
『夢の跡』G4
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『クトルニアの指輪』
彼方で鍛えられた大いなる指輪、そのひとつ
装備者に偉大なる祝福をもたらす
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「説明だけ見たんじゃよくわからないですね。どんな効果があるんですか?」
「……。リングを起動させ、黄金の炎が灯った状態だと装備者がパワーアップするらしいです」
念じるとリングにまた黄金の炎が灯った。
偉大なる祝福。なるほど、確かに途方もないエネルギーを感じる。
その性質は太陽のごとく、巨大で、温かいものだ。
指を2回軽く鳴らしてみる。
ブワっと花火が起きる。想像しているよりも遥かに大きな炎が生まれた。
危うく店を燃やすほどの火柱に俺もジウさんもお互いにビクっとした。
体感にして『2.0倍』くらいの補正が掛かっている感じかな。
「これは良い消し炭ができそうです」
「……。それはよかったです。それを渡したのには期待があるからです」
「期待ですか」
「……。財団は『厄災シリーズ』と呼ばれる人類文明が修復不可能な終わりをもたらす因子を摘もうと邁進してきました。クトルニアの指輪はシナリオ『7つの指輪』に登場する7つの支配的な権能を誇るとされる指輪のひとつです。その指輪は意志をもっており、強大なチカラを宿しています。保管しているだけなのに、職員を引き寄せ、施設から脱走しようとした記録が残っています。それも指輪収容から昨日まで2カ月間で279回です。幸い、財団職員たちの努力により指輪を紛失せずに済みましたが」
いや、指輪くん脱走しすぎ。
もう収容なんてレベルじゃねーぞ。
「……。いつ無くなってもおかしくない状況でしたので、どうせなら所有者としてふさわしい方のもとに預けておくのがよいという判断になりました」
「この指輪はどこに行こうとしていたんですかね」
「……。必要としている者。とりわけ邪悪な思念に引き寄せられるとされていて、もしそれが誰かの手に渡っていれば大きな災いを生んでいたかもしれません。指男さんは間違いなく適合したので、指輪が勝手にどこかへ行ってしまうことはないでしょう」
「その言い方だと俺、すごく厄介な物を押し付けられたのでは」
「……。そうとも言えますね。ただ、財団にはほかの狙いもありまして、というか修羅道さんの狙いと言いますか」
「修羅道さんの?」
「……。実は『7つの指輪』の魔力を使えば指男さんがふりまいたミーム型SCCL異常物質を抑制、物質化することができるかもしれないんです」
「物質化……?」
「謎の多い『クトルニアの指輪』には彼方の異文明の魔術がこめられているとされており、本来、カタチのないものに物質宇宙の法則を適用することができるんです」
「ふぅん、なるほど。実に興味深いですね(理解放棄)」
ジウさんは「……。どうです、物質化できそうですか?」と聞いてきます。
「うーん」
うなりながらなんとなく指を鳴らす。
物質化と言ってもなぁ……カタチのない物にカタチを与える、か。
なんかインスピレーションが湧いてきたな。
カタチのない物……例えばスキルを物質化したりできるのかな。
そう思いながら『フィンガースナップ Lv7』を物質化してみる。
やり方なんて習っちゃいないが、直観で「こんな感じかな」とイメージを具現化する。その方法は虚空の向こう側から光と熱をひねりだし、スキルコントロールで爆炎を操る時の感覚によく似ていた。
俺のなかから何かが抜け落ちる。
それは手のなかへと移動し、ずっしりとした重みへと変換された。
握るのは白い両刃の西洋剣。
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赤木英雄
レベル272
HP 437,862/487,280
MP 106,420/112,900
スキル
『恐怖症候群 Lv10』
『一撃 Lv10』
『鋼の精神』
『確率の時間 コイン Lv2』
『スーパーメタル特攻 Lv8』
『蒼い胎動 Lv4』
『黒沼の断絶者』
『超捕獲家 Lv4』
『最後まで共に』
『銀の盾 Lv9』
装備品
『絶剣エクスカリバー Lv7』G6
『アドルフェンの聖骸布 Lv4』G4
『クトルニアの指輪』G6
『蒼い血 Lv5』G4
『選ばれし者の証 Lv4』G4
『迷宮の攻略家』G4
『血塗れの同志』G4
『メタルトラップルーム Lv3』G4
『夢の跡』G4
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『絶剣エクスカリバーLv7』
指男の魂のスキルが物質化した物
剣身は破壊の滅光が圧縮されたもの
解放することで無限のカタチを得る
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あーなるほど。
俺のスキルが異常物質化したのか。
「……。グレード6の異常物質。流石は指男さんですね」
「うーんでも、俺、剣はあんまり……」
「……。剣は多くの探索者さんが愛用している武器種ですけど。地獄道さんの魔法剣とか、使ったことはないんですか?」
「最初から指パッチンだけでしたから」
「(……。武器も持たずにひたすらにスキルだけを極めて来たと。初心の頃から只者ではなかったようですね)」
「これどうやって戻すんですかね?」
「……。戻してしまうんですか?」
「剣のままじゃ使いづらいですし」
「……。すみません、私にはちょっとわかりません」
あれ。もしかしてミスった?
やだやだ! 返してよ! 俺のスキル返してください!
「ぎぃ(訳:物質化を解除すればいいのでは)」
「なるほど」
戻った。危ないところだった。
でも、物質化か。なんだかいろいろ出来ることが増えそうだ。
なお、このあとミームの物質化を試してみましたが、なにをどうすればいいのかまるでわからず結局は上手く行きませんでした。指輪の使い方にまだ慣れてないせいでしょうか。要検証です。
「……。次にご報告です。まず一つ目は、指男さん、おめでとうございます。今回の目覚ましいご活躍が評価されまして、ランクが”Aランク第10位”に上昇しました」
「第10位って凄いですか?」
「……。それはもちろんですよ。第10位になるには通常10年以上のキャリアと、数多くの攻略の実績が必要とされているほどなんですよ。指男さんのようにデビュー4カ月も経たないで辿り着いた探索者は史上初でしょう」
なんだか嬉しいなぁ。
評価されると浮かれてしまいますなぁ。
「……。本来はSランクへの昇級が妥当だとは思われる能力ですが、Sランクというのはいろいろと難しい問題がありまして……とりあえず据え置きでAランク残留というカタチになっています」
すこし残念そうな声のトーンだ。
でも、第10位でしょ? 第61位からめっちゃあがってんじゃん。満足満足。
「……。それと、指男さんには財団の活動との緻密な連携をとってもらいたいため、本日付で財団より身のまわりのスケジュールほか、そのほかお手伝いをする秘書が財団より派遣されることになりました」
「それって断ることできますか?」
「え……」
「あ、いえ、ただ聞いてみただけです。選択肢はあるのかなって」
「……。できますけど……断るんですか……?」
ジウさんがすごく悲しげな眼差しを送ってくる。
すごく申し訳ないことをした気分だ。
「もちろん受けさせたもらいます。秘書さんが付いてくれるなんて、とてもありがたいお話ですから」
「……。では、本日付で指男さんの秘書として着任しましたイ・ジウです。よろしくお願いします」
「ジウさんが秘書? ダンジョン内補給拠点の受付嬢だったのでは?」
「……。アルコンダンジョンに蔓延していた暗黒の霧の後遺症を懸念されて、しばらく現場を離れることになりまして。ちょうどいいので、指男さんの秘書というポストにすぽんっと起用されることになったんです。偶然ですよ。ええ、それはもう偶然です」
はあ、これは嬉しい偶然だ。
ジウさんなら知ってるので緊張しないで済むしね。
なにより美人さんです。優しいです。飴ちゃんたくさんくれます。
「……。では、指男さん、さっそくこのあとの予定なのですが」
「もうなにかある感じですか?」
「……。方針を伝えて置こうと思いまして。指男さんには3カ月以内に100個のダンジョンを攻略してもらいたいんです」
3カ月で100個……?
ジウさん、なにをおっしゃってるんですか……?
「……。来たるアルコンダンジョン攻略。指男さんには他国の財団本部が納得できるだけの実績を積んでもらわなくていけません」
飛び級してきたツケが回って来たってことでしょうか。
次回指男過労死す。デュエルスタンバイ!
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