スキルの種




 レベルアップが止まらん。

 心が元気になっていくのを感じます。


 さっきスキルレベルがアップしたアナウンスも鳴ってたし、いったい何がどう進化したのか楽しみですね。


「ステータスっと」


 いつものウィンドウを開きます。


 ────────────────────

 赤木英雄

 レベル269

 HP 710/371,200

 MP 51,400/95,600


 スキル

 『フィンガースナップ Lv6』

 『恐怖症候群 Lv8』

 『一撃 Lv10』

 『鋼の精神』

 『確率の時間 コイン Lv2』

 『スーパーメタル特攻 Lv8』

 『蒼い胎動 Lv4』

 『黒沼の断絶者』

 『超捕獲家 Lv4』

 『最後まで共に』

 『銀の盾 Lv9』


 装備品

 『アドルフェンの聖骸布 Lv4』G4

 『蒼い血 Lv5』G4

 『選ばれし者の証 Lv4』G4

 『迷宮の攻略家』G4

 『血塗れの同志』G4

 『メタルトラップルーム Lv3』G4

 『夢の跡』G4


────────────────────


 レベルアップによるステータス上昇幅が増えて来ましたね。

 14レベしか上がってないのに、ステータスは倍近くなってます。


 ───────────────────

 『一撃 Lv10』

 強敵をほふることは容易なことではない。

 ただ一度の攻撃によるものなら尚更だ。

 最終的に算出されたダメージを6.5倍にする。168時間に1度使用可能。

 解放条件 ボスを10,000,000,000(100億)以上のダメージを出して一撃でキルする

 ───────────────────


 我が決戦スキルもいよいよ成長しきったかぁ。

 ダメージ6.5倍。

 これを使う時は来るのかな。


「そういえば……」


 大崩落が続き、いよいよ脱出したくなってきた視界の端で光るアイコンを見つける。

 デイリーミッション完了を知らせるアイコンだ。


「ああ、そうでしたね。デイリーミッション達成してるんでした」


 報酬の確認を忘れていたよ。

 あぶないあぶない。

 ポチっとな。


 ─────────────────

  ★デイリーミッション★

 毎日コツコツ頑張ろうっ!

 『鋼のメンタル 指男チャンネル』


 指男チャンネルをはじめる 100/100


 ★本日のデイリーミッション達成っ!★

 報酬 スキルの種


 継続日数:110日目 

 コツコツランク:プラチナ 倍率10.0倍

 ──────────────────


 ん? 報酬これだけ?

 経験値66兆5,000億とかないの?

 嘘でしょ、あれだけ人に苦行押し付けといて?


「ちょっとどう思います、シマエナガさん。なんとか言ってやってくださいよ」

「ち~ち~ち~♪(※経験値酔いで気分のよくなった厄災の禽獣による説教)」


 ピコン


 おや。

 デイリーミッションのウィンドウが更新されたようだ。

 

 ─────────────────

  ★デイリーミッション★

 毎日コツコツ頑張ろうっ!

 『鋼のメンタル 指男チャンネル』


 指男チャンネルをはじめる 100/100


 ★本日のデイリーミッション達成っ!★

 報酬 スキルの種×2


 継続日数:110日目 

 コツコツランク:プラチナ 倍率10.0倍

 ──────────────────


 お、報酬が増えてる。

 なんの報酬かわからないけど増えてる。

 ゴネ得とはこのことか。

 ということはまだまだいけるんじゃ……。


「デイリーくん、もっと頑張れるでしょ? ほらほら」


 ピコン

 

 おっ! 来た来た!


 ─────────────────

  ★デイリーミッション★

 毎日コツコツ頑張ろうっ!

 『鋼のメンタル 指男チャンネル』


 指男チャンネルをはじめる 100/100


 ★本日のデイリーミッション達成っ!★

 報酬 スキルの種


 継続日数:110日目 

 コツコツランク:プラチナ 倍率10.0倍

 ──────────────────


 いや、減らされとる。


「すみません、調子乗りました。ひとつで大丈夫です。いつも助かってます。さす」


 デイリーミッションのブチ切れ一本手前を垣間見たような気がして、俺は平謝り、このままでは報酬取り消しとかされかねないのでありがたく本日の報酬『スキルの種』を受け取る。


 デイリーくんにゴネるのは危険、っと。


 ところで『スキルの種』ってなんですかね。


 デイリーミッションのウィンドウからポンッと出て来たそれを受け取る。

 すこし濡れていて、ブドウみたいな大きさのそれ。

 よく見ると人の眼球みたいだ。

 盲目の巫女に与えると美味しく食べてくれそうな見た目してますね。


────────────────────

『スキルの種』

 生前に取り出された聖職者の瞳

 うちに宿すことで神秘の力を増幅させる

 使用でスキルレベルを1上昇させる

────────────────────


 がっつり目ん玉でしたね。

 しかし、ほうほう、なるほどな。

 これを食べるとスキルレベルがあがるのか。

 普通に強すぎじゃね?


 俺は迷わず口に放り込み、飲み込んでお腹に収める。

 甘い。シロップ漬けされてる果実みたいだ。

 結構おいしいじゃん。


(どのスキルへスキルポイントを振りますか?)


 アナウンスが入り、俺のステータスウィンドウが強制的に開かれる。

 どれ、か。

 流石に所有スキル全部を一律にレベルアップとかじゃないのか(強欲)


 ふーむ、ひとつだけとなると悩む。

 どれでもいいとなると、やはりスキルレベルを上げにくいものがいい。

 それかスキルレベルが上がって来て、次のレベルアップが難しそうなもの。


 使用頻度から言って、候補はこのあたりか。


 『フィンガースナップ Lv6』

 『一撃 Lv10』

 『蒼い胎動 Lv4』


 ほかのをあげてもいいが、正直、いまの状態でも困ったことがないです。

 いや、それを言い出したら、そもそも火力で久しく困っていなんですけどね。


 『一撃 Lv10』はこれ以上あげても感じだし、そもそもスキルレベルってLv10が最高と我らが修羅道さんがおっしゃってたのでこれ以上はたぶん上がらない。

 スキルポイントが無駄になりました、とかだったらショックで駅を降りて来る社会人みんなに「パワー!」と叫んで襲いかかりかねない。

 『蒼い胎動 Lv4』はなにげ一番助かってるかもしれない。

 でも、これ確か進化条件が『蒼い血に浸食される』とかなんとかで、放置しててもLvがあがってる印象なんだよね。


 というわけで、やっぱり我が伝家の宝刀フィンガースナップを進化させようと思います。


────────────────────

 赤木英雄

 レベル269

 HP 730/371,200

 MP 51,400/95,600


 スキル

 『フィンガースナップ Lv7』

 『恐怖症候群 Lv8』

 『一撃 Lv10』

 『鋼の精神』

 『確率の時間 コイン Lv2』

 『スーパーメタル特攻 Lv8』

 『蒼い胎動 Lv4』

 『黒沼の断絶者』

 『超捕獲家 Lv4』

 『最後まで共に』

 『銀の盾 Lv9』


 装備品

 『アドルフェンの聖骸布 Lv4』G4

 『蒼い血 Lv5』G4

 『選ばれし者の証 Lv4』G4

 『迷宮の攻略家』G4

 『血塗れの同志』G4

 『メタルトラップルーム Lv3』G4

 『夢の跡』G4


────────────────────


 ──────────────────

 『フィンガースナップ Lv7』

 指を鳴らして敵を滅却する。

 生命エネルギーを攻撃に転用する。

 転換レート ATK10,000:HP1

 解放条件 ワンスナップ・ワンキルで5,000万キル達成(または、短い期間に同条件で500,000キル達成)(またはごく短い期間に同条件で100,000キル達成)

 ──────────────────


 もう世界が崩れる。

 HP1を使ってどうして自動車を消し炭に変える火力がでるのか。

 頼むからエネルギー保存の法則にちゃんと納税してほしい。

 

 しかし、改めてみると解放条件厳しいなぁ。

 これは正直にクリアするとなったら、すごく時間がかかりそうです。

 『スキルの種』を使って正解かな。


「ちーちーちー(訳:そろそろ本当に生き埋めになってしまいそうちーね)」


 ですね。

 脱出しますか。

 シマエナガさんとぎぃさんもだいぶ大きくなられてますが、検閲はまたあとで、ということで。


 ではさらばだ。ダークナイト・ホーリー・ドラゴン(仮称)。

 なかなかお前強かったぜ。知らんけど。


「ん? なにかが落ちてる?」


 俺は崩れはじめるダンジョンを駆け抜ける。

 ダンジョンボスが墜落したあたりに光る大きな石を発見。

 クリスタルだ。大事なダンジョン資源を取り忘れるところだった。


 『超捕獲家 Lv4』でクリスタルを収納。

 このスキルとっても便利です。


 おや。

 なにか蠢くものを発見。

 クリスタルの影に隠れていたようだ。


「なんか可愛いの発見」


 ダークナイト・ホーリー・ドラゴン(仮称)を倒した地点にもさもさ毛が生えた灰色の動物を見つけました。

 これは……なるほど、ボスのドロップアイテムですね。


 というより、なんでしゅか。これ。うわぁ……。

 これはなんというか。その。ええ。

 これはまたくァァあいいどぅえすねえェ!(訳:可愛いですねぇ!)


 もちもちしてて、ちいさくて。

 ハリネズミですね。間違いないです。プロですから。

 足と手が死ぬほど短い。ド短足です。

 おなかも柔らかいですねえ。小動物特有の可愛さよね。

 ああ~もうそんな可愛くていいと思ってるんでしゅか~?

 

「どうしてこんなところにいるんですか?」


 シマエナガさんとぎぃさんのせいで、すっかり動物に話しかける癖がついた俺は、執拗にハリネズミさんに話しかける。


「なんでそんなに足短いんでしゅか~? 答えないともちもちしちゃいまちゅよ~?」

「ち、ちー(訳:そいつ……)」

「ぎぃ」


「きゅっきゅっきゅっ」


 聞きましたか? 

 きゅっきゅっきゅっ?

 そんな可愛い声だしていいと思ってるんですかねえ。

 もう俺がきゅっきゅっしちゃいまちゅよ~?


「きゅっきゅっきゅっ」


 ん? よく見たらハリネズミさんの頭のうえにアイテム表示が……。

 えーなになに、アイテム名『厄災の大古竜』。

 

────────────────────

 『厄災の大古竜』

 かつて世界を滅ぼした大古竜。

 厄災の大古竜は英雄だけを友とする。

 天空の支配者であり、嵐を使役する。

 神話はかの竜のなかで息づいている。

────────────────────


「……」

「きゅっきゅっきゅっ」

「いや、そのフォルムで竜を名乗るのは無理はありますよ」


 どうみてもハリネズミです。本当にありがとうございました。

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