暗い野望
全裸マンと巨塔の最下層へやってきました。
周囲にはぎぃさんの眷属を展開しつつ索敵も同時に行ってます。
広々としたエリアを闇雲に索敵するのは危険だが、距離を10mくらいまでに限定すればぎぃさんとリアルタイムで同期した状態を保てるらしいです。
さながらちょっとしたレーダーだね。
「あんたの言ってた神の機兵とやらは、見当たらないな」
ここまでの道中、結構注意して来たけど、見つかりませんでした。
全裸マンにたずねたところ、最下層にて神の機兵たちはスリープ状態でいるのが本来のシナリオであるとのこと。
「だが、暗黒どもの力は予想以上だ。計画はもう本来のシナリオを逸脱している。もしかしたら、使徒さまたちはすでにいないのかもしれない。ありえない。ありえてはいけないことだが、覚悟をする必要がある」
全裸マン、哀愁漂う背中です。
「『メタル柴犬クラブ』の目的のひとつはすべての銀色の使徒さまを永き眠りから解き放つことにあった」
「どこまで成功したんだ」
「我々の進捗状況で言えば0%だ。もっとも使徒さまの幾らかは自力で覚醒へこぎつけていたようだがな。む、ここだ」
身の丈の倍以上もある石の門がありました。
大きく開け放たれています。
着いたみたいです。
ここが神の機兵の眠るお部屋ですね。
香ばしい香りがしますねぇ。
では、さっそく突撃!隣の経験値していきましょう。
「そんな馬鹿な……」
「ぎぃ(訳:これは……一方的な殺害が行われたみたいです)」
俺たちは部屋に入るなり、足を止めた。
部屋のなかには4つの大きな棺が建てられていて、壁際に並んでいる。
堂々たる彫刻の施された石棺は開かれている。
中には腕を胸前で組んで微動だにしない銀色の鎧武者たちがいる。
もっとも4つすべての胸元に”巨大な黒い槍”が突き刺さっていますが。
なんてことだ。
許せない。
誰が……誰が俺の経験値を……ッ!
遺体に近づいて、槍を注視。
握りしめるには棒の部分が太すぎて、うまく持てないほどデカい。
巨人用の槍かな。少なくとも俺みたいな標準的なサイズの人間用ではない。
黒い槍は銀色の装甲を溶かし貫くようにして、胸前から入り、背中へと貫通している。こんな太い物で寝てるところぶち刺されたら、まあ、死ぬでしょう。
「ぎぃ」
「あ、ぎぃさんが勝手に……」
ぎぃさん触手を動かして死体をまさぐっております。
「ぎぃ(訳:『千式メタルキット』がないです。どうやら犯人が持ち去ったみたいです)」
くっ! 許せない!
俺のメタルキットまで盗むなんて! 俺の!(※違います)
「ぎぃ」
「あ、またまたぎぃさんが勝手に……」
ぎぃさんが足元を示してきます。
暗くて気づかなかったですけど、遺跡の床が黒い液体で濡れています。
まるで墨汁まみれの身体で移動したみたいだ。引きずったような跡が部屋の外へ続いてる。
「なんということだ……私がセントラルを解放するより前に事態は動き始めていたのか……」
「でも、全裸マンが呪文を唱えて門を開けてたよな。それまでは門は閉ざされてたはずじゃないか」
「この塔は四方に入り口を持っている。別に一か所だけということではない……。ただ、開けられるのはただしい鍵を持っているものだけだ」
「それじゃあ、鍵を持っている奴が『暗黒』さんを招き入れたんじゃないか。裏切りだったり」
「いいや、それは考えられない。『メタル柴犬クラブ(本家)』は厳格にして篤き信仰と正義の代理人だ」
そうかな……あんまそんな感じはしないけど。
だってメタルで柴犬なクラブだよ?
「可能性があるとすれば……」
全裸マンは深く考え込みはじめました。
うーん、よくわからないが、塔にどうやって敵が入ったかが問題なんだろ。
「元から塔の内側にいたとか」
知らんけど。
「っ……まさか! いや……ありえる。なるほど、暗黒の信徒どもは空間転移を使えるとあの財団の男は言っていたか。やつらは我らがダンジョンの封印を解いた直後、あるいは以前から銀色のダンジョンで活動をしていた……そう考えれば我々が後手にまわったのも説明がつく」
ん、なんかまじまじと俺の方を見てきますね。
「(流石は指男だ。視点が違うな……)」
なんだよ、めっちゃ見てくるじゃん。Love so sweetが流れたら恋物語がはじまりそう。そんな展開はごめんなので彼をおいて経験値泥棒の痕跡を追跡することにします。
「お、おい、待て、私を置いていくな!」
機兵の封印室はいくつもあるそうです。
大小あわせて7つの部屋。全部で24の機兵。
それがこの銀色のダンジョンの保有する勢力らしい。
「ここも全滅か。暗黒どもめ、的確に戦力を削いでいる」
最後の封印室へとやってきた。
床に残った痕跡もここへ続いている。
これまで俺たちがたどって来た道と同じ道を辿ってます。
最後の封印室には6つの棺がありました。
どれも空っぽで、今までと違って寝ているところを一刺しされた雰囲気はないです。
「ぎぃ」
ぎぃさんいわく、おそらくのこの部屋にいた機兵たちは、活動状態にあったのかもしれないとのこと。
思えば、ここに来るまでに何体か機兵たちを倒して来た。
外にいたのは、この最後の封印室にいたメタルたちだったのかもしれない。
「ここにも黒い跡が……向こうに繋がってる。この先にはなにがあるんだ、全裸マン」
「儀式用祭壇……
るーさ……ぇ、なんて?
「ふぅん、なるほど」
「
全裸マンは静かに目を閉じて深呼吸をする。
「……この先だ」
儀式用祭壇にはすぐにたどり着いた。
そこへ至るために通路は天井高く、横幅の広い。
左右には武装した機兵たちの巨大石像が立てらえており、荘厳さがいっそう増している。
「誰かいる」
「なに?」
俺は足を止める。
全裸マンもつづいて立ち止まる。
向こうの方から人が歩いてくる。
暗くて見えづらいが外国人の女性だ。
俺と同じくらいの年齢かもしれない。
お胸がノースリーブの横からわずかにはみ出してて大変に助かる感じになっております。
「男爵ではないようですね」
女性は俺と全裸マンを交互に見やり、そうつぶやいた。
「この娘、暗黒の信徒か」
「それじゃあ、この女の子がベンヴェヌートさんを
女性は「博士でないのなら用はないですね」と、黒いモヤを手元に出現させました。中から禍々しい黒い長銃を取り出そうとしております。四次元ポケットだったみたいです。
「銀色の信仰者に、そっちはJPNの探索者ですね。おかしな組み合わせですが、どうやら儀式の邪魔をする気満々ようですし……ここで臓物晒させて犬の餌にしてしまいましょう」
「ははは……娘っ子よ、貴様ごときにやれる私だと思うか?」
全裸マン、片手にコートを翻し、勢いよく魔導書を開きます。
銀色に輝く光が放たれ、銀色の鉤爪が出現しました。
得物を両手に装着し、バッと近づく全裸マン。
──ズドン
銃声が鳴る。
鉤爪が銃弾を受け止める。
勢いよく吹っ飛ばされ視界を横切っていく全裸。
遺跡の床のうえをゴロゴロッ! と激しく転がっていき、壁に突っ込んで止まります。壁に亀裂が入るほどの勢いで叩きつけられたらしく、血反吐を吐いてぴくぴくと痙攣しております。
って、やられてんじゃねえか。
「私はもう人間をやめています。
女性は高揚とした表情を浮かべた。
黒い長銃を手慣れた様子で、片手でくるくる弄び、俺のほうへ銃口を向けてくる。
「今更、凡百な探索者など話になりませんが……ねえ、あなた。あなたは命尽きるまで舞って、せいぜい私を昂らせてください」
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