ハッピーさん



 相変わらずATK3,000万はとんでもない火力です。

 そのまま打ち込んだらクレーター必須、市民会館を消し飛ばす威力ですから。

 というわけで、最近ちょっとわかってきたスキルコントロールで、爆発のエネルギーを操作して螺旋状の爆発で被害範囲を抑えます。見た目は光柱が空へ登っていく感じで凄くオシャンティーです。ふつくしいですねぇ。


「カチ、カチ……っ(訳:馬鹿な……この獄門のヴラブが……ッ)」


 メタルくんが真っ赤に赤熱して、溶解しながら、崩れ落ちましたね。


 無事に経験値の光をげっちゅ。ライターに収納です。

 つまりこれでメタルくんは臨終したということですね。

 対戦ありがとうございました。GG。


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 『貯蓄ライター Lv3』

 経験値は貯蓄する時代です

 1兆502億93万7,931/99兆9,999億9,999万9,999

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 ふむふむ。

 さっき見たときはちょうど1兆経験値くらいだったから、いまのメタルで500億経験値に手に入ったということでしょうかね。

 やはり、メタルは破格の収入源です。

 いっぱいあるのでちょっと味見しますかね。

 そろそろ禁断症状がでてきて、手が震え出しましたから。


「アァ……楽しみだなぁ……へへへ……」


 ジッポを開いて、火打ち石こすれば、火が灯ります。これで経験値解放です。

 光る粉がでてくるのでこれを鼻で吸い込む。一気にスンっと吸うのがコツです。


 あぁあ~! これこれッ! たまらねえなぁ!


「イッヒヒヒ、止まんなくなっちまいますな!」

「ちーちーちー!」


 おや、シマエナガさんが胸ポケットから出て来て、ポフンっと巨大化しましたね。

 なんのつもりだ、そんなもっふりしやがるからに。


「ちーちーちー!(訳:英雄だけ、ずるいちー! 横領ちー!)」

「こほん。人聞きの悪いこと言わないでくださいよ。これは正当な医療行為です。俺は持病がありますからね。呼吸が苦しくなった人が吸引器を使ったら咎められるんですか? え? されませんよね。それといっしょです」


 ライターを懐にしまいます。

 やれやれ、またあとでゆっくり楽しむとしようか。


「ぎぃ」

「あ、ぎぃさんが勝手に……」


 ライターを触手で盗られました。


「ぎぃ(訳:預かります。経験値クズとジャンキーに持たせておくのは危険と判断しました)」

「で、でも、ぎぃさん。それじゃあ、俺の持病対策は!」

「ぎぃ(訳:知りません。先輩でももふっててください)」


 なんだとーッ! ふざけるなッ! もういい、シマエナガさんをもふりつくしてやる!! というわけでちょうど大きくなってたので抱き着いて、もふもふします。


「ちー……!(訳:すごくフガフガされてるちー……! セクハラちー!)」


 ふふ、シマエナガさん抵抗できまい。


「ちー?」


 ん、どうしたんだろう、シマエナガさん。

 俺を呆れた目で見てたのに、急に後ろに振り返りましたよ。


「ちーちーちー」


 ん、どうやら、シマエナガさんひとつ挟んだ向こう側に誰かいるらしいです。

 おや、本当に人がいましたね。シマエナガさんを見つめて「なにこの豆大福……」みたいな表情してます。というか、めっちゃ美少女。あれ、かあいい……。


「第一村人発見(イケボ)」


 ちょっとした冗談をよく言う飄々としたイケメン風に言いました。はい。

 

 むむ、片腕が無いですねえ(鋼の精神)

 どこかで怪我してきちゃったのでしょうか。


「こんにちは、災難な目にあったようですね(イケボ)」

「……」


 おや、あまりにもイケボ過ぎて声がだせないのかな。あっちゃーやりすぎたかあ。


「なにその鼻につく声。すごく不愉快です」

「げふんげふん! ……えっと、怪我してますけど(話題転換)」


 すごく痛そうですね。大丈夫? 豆大福モフる? たくさんモフっていいよ?

 

「怪我のことは気にしないでいいです……それより、一秒でもはやく向こうから離れたほうがいいよ」


 女の子はそう言って、自分が来た道をふりかえりました。向こうに何かいるのかな? 

 彼女は視線を俺に戻して一瞥すると、シマエナガさんと俺の横を通りぬけて、向こうへ行こうとします。

 ふと振り返って「なにしてるの、はやく」と、それだけ言ってまた歩き始めました。


 ついて来いってことでしょうね。

 とりあえず、あんな美少女を放っておけないので……じゃなくて、怪我人を放置できないのでついていきます。横に並びました。

 ちらっと鋭い目が俺をとらえます。


「あなた、ランクは」

 

 お、それ聞いちゃいますか?

 聞いちゃうんですか?


「ふっふっふ、実はこう見えてAランクなんですよ」

「順位は」

「……61」

「そう、なりたてだと思った(訳:こいつじゃあんまり期待できないな……)」


 俺の胸のルビーブローチをあまり興味なさそうに見て言いました。


「私のことはハッピーって呼んで。『ハッピートリガー』Aの8位」


 やばっ。ガチガチのトップだった。

 うわぁ、俺より若いのに……年下なのに……すごいなぁ。


「私はあなたよりずっと先輩。あなたよ私りスマートな判断をくだせる。だから、このイカれたダンジョンでは私の指揮下に入って。協力しないとあんたのペットごと死ぬことになるよ」


 すっごい決められてる……。


「返事は? イライラしてるんだよ。のろまなら置いていく。ここはとてつもなく危険な場所なんだ、足手まといはいらない」


 そんなに危険なのか……。

 俺が思ってるよりやばい?

 でも、8位のハッピーさんが言ってるなら違いないか。

 なにより、美少女をイライラさせると胃が痛む。


 なので──


「はい、ついてきます。ハッピーさん。行きますよ、シマエナガさん」

「ちー(訳:英雄が言うなら仕方ないちー。でも、なーんか、嫌なメスちー)」


「うん、よろしい。ところであなた名前は」

「指男です。よろしくお願いします」

「……へえ、あなたがあの指男……。よろしく」


 

 

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