同じ轍を踏まず
数百段ある長い階層間階段を抜けました。
22階層。ついに来てしまいましたね。
10階層から続いていた黒い要塞の廊下みたいなところから、白い煉瓦みたいなので建造された廊下に移り変わりました。こっちは神聖な感じなしますね。ゲームとかだったら間違いなく光のダンジョンです。そして、羽の生えた聖属性の敵がでてくることでしょう。
おや、さっそくモンスターを発見しましたよっと。
羽の生えた天使系のエネミーではなく、相変わらずのダンジョンダックスフンドです。
流石にデカいですね。
でもね、俺だって強くなったんだぜ。
「ATK10,000、これで消し飛びな、カリバー」
どんくらい強いのか確かめるべく指を鳴らします。
──パチン
大爆発が起こり、ダンジョンダックスフンドさんが昇天──
「がうがう!!」
「っ、してない?!」
ダックス憤怒。
胴長短足をめいいっぱい動かして爆破に怯まないスーパーアーマーで突っ込んできて、俺の頭を食いちぎろうとしてきます。
はい、いつものごとく準レギュラースキルのヤクザキックで鼻頭を吹っ飛ばして、距離をとります。もうそろそろ、このキックもスキル化したりしないかな。
「カリバー」
はーい、もうATK10,000どーん。
消し炭完了~。
「がうがうっ!」
って、生きてる!!?
嘘だろ、21階層HP7,400くらいだったのに!
もう一度、突っ込まれそうになったのを拳でぶん殴って撃退し、さらにATK10,000を追加オーダーする。今度は目の前なので自分が爆発に巻き込まれないように、斬撃のように前方へ破壊のエネルギーを飛ばした。するとようやくダンジョンダックスフンドは消し炭になってくれた。
つよ。
「ちーちーちー」
「ぎぃ」
「そうですね、これは油断できない強さ。なるほど、ダンジョンの感じが白く変わったのと同じく、モンスターのレベルも一気に繰り上がった感じですね」
ただ、まあ、30,000で固定した攻撃で一撃吹っ飛ばせば終わる話なので、そこまで焦ってなかったりします。
命中率も100%だしね……うん、100%だし。
「ちー?」
「ぎぃ……」
シロッコに避けられたことがちょっと棘になってる。
俺は正直言ってもう最強だと思ってたところがある。
だけど実際にはまったく違った。俺は最強などではなかった。
シロッコの圧倒的な強さ。
もしシマエナガさんが可愛くなくて、デイリーミッションが報復の機会を与えてくれなかったら俺はそこで終わっていただろう。俺は生かされたのだ。
「ちーちーちー」
「ぎぃ」
「大丈夫ですよ、俺が守ってあげますから」
大事な物を守るため、もっと強くならねばならない。
まずは指パッチンの命中力を鍛えることからだ。
感覚を研ぎ澄まして、狙いを定め、確実に当てる。
さっそくモンスター発見。
「カリバー」
ATK30,000の爆炎が燃え上がらせました。
けれども、ダックスフンドは生きております。
残りのHPをもう一回カリバーして消し飛ばして戦闘は終了です。
わかったことがふたつ。
ひとつは、手動で狙おうとすればオートエイムといいますか、自動照準といいますか(※ほとんど同じ)、そんな感じのカッテニアタール機能OFFにすることができるみたいです。
もうひとつが、これまでATKを指定したら命中して、計算通りのダメージが出てくれていたけど、クリーンヒットしないと理想値DMGが算出されないということ。
「俺ってかなりスキル頼りな戦いしてたんだな……」
学ぶことは多いですね。
シロッコはこういう細かい技量も積み上げているから、あれだけ強かったんでしょう。俺もちゃんと履修していかないと、次に危機的な状況に陥った時、同じ轍を踏むことになる。それはなんというか……すごく嫌だ。
──1時間後
「ちーちーちー!」
「ん、シマエナガさんどうしたんですか?」
エイム練習がてらにくぁいいダックスたちを消し炭にしていると、突如としてシマエナガさんが先へ飛んで行ってしまいました。
なにか発見したのかな?
走ってついていって見て──俺は足を止めました。
「なにこれ……」
それまで文明的な石造の通路だったのに、巨人が大鉈でぶったぎったみたいに通路は突然の終わりを告げて、ひたすらの闇を称えているのです。端的言って、通路が途切れて、巨大な空洞ができていました。
底は見えません。
どんだけ高いんだろう……。
これ落ちたら死ぬ気がする。
「ぎぃ」
「ぎぃさん、それは……」
ぎぃさんが崩壊した通路の端に赤いなにかで書かれた文を発見しました。
思わず顔を背けたくなりますが、俺はそれを直視します(鋼の精神)
「ぎぃ(訳:これは人間の血ですね)」
恐ろしい血文字で書かれたメッセージ、それは──『降リルナ。メタルガイル』
「降りるな……メタルがいる……?」
「ちー……」
「ぎぃ……」
速攻で穴に飛び降りた。
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