経験値工場見学
いやね、返済がなかなかどうしてキツかったですけど、思ったよりもずっとレベルが残りましたね。
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★デイリーミッション★
毎日コツコツ頑張ろうっ!
『返済』
経験値を納品する 66兆3,000億/66兆3,000億
★本日のデイリーミッション達成っ!★
報酬 なし
継続日数:108日目
コツコツランク:プラチナ 倍率10.0倍
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嘘だろ……報酬無しなんてありかよ。
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★デイリーミッション★
毎日コツコツ頑張ろうっ!
『返済』
借りたもの返しただけ
甘ったれるな
★本日のデイリーミッション達成っ!★
報酬 なし
継続日数:108日目
コツコツランク:プラチナ 倍率10.0倍
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相変わらずデイリー君は厳しいです。
「指男よ、そろそろこの黒いやつについて聞かせてくれんかのう」
ドクターが『経験値生産設備』のコンテナをつついて物欲しそうな顔しております。そういえば経験値工場に逃げ込んでからドクターをわりとほったらかしだった。
もともと、ドクターに大量のクリスタルと『ムゲンハイール ver5.0』を使った進化・変化・合成を見てもらって、生のデータを取らせてあげようと言う話だったんだよね。悶着があったせいですっかり忘れてたぜ。
「それの名前は『経験値生産設備 ver2.0』ですよ」
「おお! これはやはり異常物質か! って、え? 経験値、生産設備……? 経験値をつくりだすだと……?!」
興奮しだした毒たあー。
おい、こら、じじい勝手に中に入るんじゃねえ。
そしてペタペタいじくるんじゃあねぇ。経験値にするぞ?(脅迫)
「ちーちーちー」
「ぎぃ」
「ほら、ドクター見てください、経験値には厳しいふたりを。あんまりその機械に近づくと危ないですよ」
「ちーちーちー!!」
「特にシマエナガさんが厳しいので。他人の経験値獲得には」
「ぢー!」
シマエナガさんがくちばしでドクターの頭皮を攻撃します。
「わ、わかった、離れる、離れるから許しとくれい!」
「ちー(訳:経験値にされたくなかったら二度と近寄るんじゃないちー)」
「しかし、この『経験値生産設備』……」
「なんですか、なんか文句ありますか」
「おぬしも大概、経験値の話になると口調がきつくなるのう……まあいい、とにかくこの機械じゃが、かなりのオーバーテクノロジーに思えるのぅ」
「オーバーテクノロジー?」
「そうじゃ。経験値をつくりだす試みはダンジョン財団でも積極的に研究されているんじゃが、いまだに成功しておらんのじゃ。わしは専門家じゃないからよくはわからないのじゃが、人工ダンジョンを使ってそこに宝箱を設置するとかでしか経験値を意図的に生産することはできないらしい」
そういえば、修羅道さんがそんなこと言ってましたね。
ダンジョンで見つけた宝箱は研究や開発に流用されるって。
「ちなみにじゃが、ちいさな宝箱で生産可能な経験値は10年ダンジョン内に放置して10,000ほどなんじゃが、この機械はどれくらい生産できるのじゃ」
「『黄金の経験値』が毎時間2枚できます。ブーストしてますから」
「ほう、毎時間、経験値獲得できるのか。凄まじいのぅ」
「んでこの金色の板みたいなのが一個で100,000経験値です」
「……え?」
「こっちの『経験値強化設備』のオーブンレンジで焼くと『黄金の経験値 Lv2』となって200,000経験値に進化します」
「……」
「それをプラチナ会員で10.0倍なので現状では2,000,000(200万)ですね」
ドクターは険しい顔をしたあと、こめかみを指で揉み解しはじめました。
「わしの聞き間違いかのう、200万経験値と聞こえたんじゃが……」
「ええ、それがなにか?」
「正気か、おぬし……?!」
え、いきなり、俺の肩をがしっと掴んで来ましたよ。
「に、200万経験値を、毎時間生産しているのか……?!」
「それは違いますね」
「ホっ、わしの聞き間違いか」
「1日の総生産が3億7,200万経験値なので、1時間に直したら……1,500万程度じゃないですかね?(経験値の事になるとIQがあがる)」
「ッ、1,500万……?! ……なんということじゃ、なんという異常物質を見つけてしまったのじゃ……この異空間といい、設備と言い……常軌を逸しておるわい」
ドクターは目をガン開きにして、ふるふると力なく顔を横に振っている。
目の前の老人の仰天ぶりを見るに、どうにも経験値の生産は一般的じゃないみたいですね。
「この異常物質の存在が世界にしれれば、蘇生系異常物質にも匹敵する混乱の理由になりえるぞ」
「そんなですか?」
「そんなじゃ。経験値が生産可能とわかれば、全人類の根本的な強化が可能なのじゃからな。探索者モドキがうじゃうじゃ増えるぞ」
「探索者の才能って1,000人に1人しかいないって話じゃありませんでしたっけ」
「そうじゃが、経験値を取り込んで強くなることは誰にでもできるのじゃ。ダンジョンに入れないと実質的にそこ機会がないから、経験値によるレベルアップ=探索者と紐づけられておるが」
なるほど。まあ、その通りですな。
「指男よ、おぬし戦争でもはじめるつもりじゃなかろうな」
「まさか。戦争で経験値が得られるんですか」
「いいや、普通の人間を倒しても意味はないじゃろう。……なんだか道徳の破綻した理屈じゃが、まあ、いいおぬしにその気がないのならよかったわい」
「まったく人のことなんだと思ってるんですかね」
「市街地の中心に戦術核弾頭並みの破壊を引き起こした男じゃ」
「またまた大げさな。ちょっと力加減間違えただけですって」
市民会館が吹っ飛ぶとは思わなかったんだって、もう。
あれもこれも全部、デイリーミッションのせいです。
いや、もっと言うならシタ・チチガスキー博士が悪いことしてるのが原因。
つまり、俺は悪くない!! ……そういうことになってるんだ。
「して、この空間、なんといったか」
「経験値工場ですね」
「この空間を見ていると、おぬしの異常性がよくわかるのう」
ドクターは設備をコンコンって叩いてりしては舌を巻いております。
「ふむ、この設備を納めるサイズの『ムゲンハイール』があればあるいは進化させられるかもしれんのう……さらに生産量を増やせるのか? ふむ、やってみてもいいかもしれんのう」
「ドクター、こっち来てください」
「なんじゃ、まだなにかあるのかのう」
「はい、実はここでモンスターを10,000匹ほど消し炭に変えましてね」
「うん、なにを言っているのかまるでわからんのじゃが」
「だから、10,000匹をしまっちゃうおじさんして、消し炭おじさんしたってことですよ。なんでわからないんすか」
「いや、普通はそれで通じないじゃろ」
はあ、まったく。これだから経験値意識の低い素人は。
モンスターを倒す場所といえば、魔法陣のうえが常識でしょうが。
「な、なんじゃ……こ、この、クリスタルの山は……!」
「だから、ここで10,000匹ほど消し炭にしたんですって。1階層~21階層のモンスターをこちらの魔法陣で経験値に変えました」
「……おぬし、頭イカれてると言われたことはないか?」
「ないですね」
「そうか。なら、わしがはじめてじゃな。おぬしは頭がイカれておる」
そうかな?
別におかしくないと思うけどな。
「ドクターにはこのクリスタルを使って強化しまくるところを見せてあげようと思って来てもらったんですよ。途中でシタ・チチガスキーとかいう外道見つけたんでしばきましたけど」
「なるほど、だから市民会館に来てくれたのか。見せてくれるのはありがたいのう。データは多ければ多いほどいいからのう」
俺は『ムゲンハイール ver5.0』の残骸を山の裾野に置いて、腰をおろす。
ドクターも隣に座ってくる。
「え、なにこれ……」
「ぶっ壊れました。シロッコに撃たれた時に銃弾の雨に当たっちゃって」
「ひええ……また盛大にぶっ壊したのぅ」
「直せますか?」
「直すより、新しいのを使った方がいいじゃろうな」
「困りますよそれじゃあ」
「なんでじゃ。おぬしも新しい方がいいじゃろうて」
「これ『ムゲンハイール ver5.0』ですよ。ドクターはver4.0までしか作れないでしょう?」
「いや、なんか勝手にバージョンアップしとる……?! わしの知らんところでなにが?!」
「絶対に直してください」
「……が、頑張ってみるかのう」
というわけで、『ムゲンハイール ver5.0』を直すためにダンジョンキャンプへ戻ることにしました。
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